【コラム 山口亮】民主党が救いようのない理由(1):「百六十人の議員が政府に」の約束はそもそもどうなった?

2014年12月27日 12:32

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【12月27日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■野党が議席数を伸ばせない理由

 自民党と公明党の連立与党が圧勝し、民主党が微増、維新の党がほぼ現状維持の議席数に終わった先の総選挙。民主党や維新の会の票が伸びなかった理由について、冷静に考えてみたい。

 まず、日本では自民党以外に政権担当実績をもった政党がほとんどなく、例外が2009年からの民主党政権と、93年からの細川・羽田政権であった。特に記憶に新しい2009年の民主党政権では、政権担当能力という点において、有権者心理として、大いに疑問を持たれている。

 自公政権の方は、個々の政策に不満があったとしても、ダウンサイドリスクが少なく、野党に政権を取らせるとどうなるか分からないという、有権者心理が、今回の選挙では働いたのだと考えられる。民主党政権時代の問題点は、いろいろあるが、政権運営をどのように行っていくかについての失望という点は、禁じ得なかった。

 この点、小沢一郎氏の持論であった、「与党と内閣の一体化」について、もう一度再検討する価値がある。

■小沢一郎氏が示していた「与党と内閣の一体化」を再検討するべき

 鳩山内閣時代に民主党幹事長でもあった小沢一郎氏は、1993年に発表された、著書『日本改造計画』(講談社)の中で、「与党と内閣の一体化」(55ページ)という項目を立て、

 「これまでは政府(行政府)と与党が二本立てで、それぞれ政策の調整を行ってきた。そのため、調整過程が複雑であるだけでなく、時間がかかりすぎる。内閣の責任もぼやけてしまう。」

 「党で政策立案に関係している議員は固定したスタッフを持たない。特定の政策に責任を負うこともない。政策知識を身につける機会も限られている。そういう人たちが非公式に政府に働きかけ、政策に影響を与えているのでは、密室の中で取引がなされているようなイメージを国民に与えてしまう。」

 として、

 「まず党の重要な役職者を内閣に取り込んでしまう。そして、党の政策担当機能を内閣のもとに編成しなおし、正式な機関として位置付ける。党の中枢イコール内閣という体制にするのである。」

 「省庁ごとに二〜三人の政務次官と四〜六人の政務審議官ポストをつくり、与党議員を割り振るのがよい。その結果、閣僚を含めて与党議員のうち百五十〜百六十人程度が政府に入る。」

 として、政府のポストにつかなかった与党議員のうち、四十から五十人が国会関係の仕事に、あとは、選挙は党によって運営されるようになるので、

 「政党の運営、すなわち選挙を戦うための態勢づくりや広報の仕事が、現状とは比較にならないぐらい重要になる。」

 と論じていた。

 実際に、2009年の民主党マニフェスト「民主党の政権政策Minifesto2009」にも、2ページ目に、「5原則」の「原則2」として「政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ」、「5策」の「第1策」として「政府に大臣、副大臣、政務官(以上、政務三役)、大臣補佐官などの国会議員約100人を配置し、政務三役を中心に政治主導で政策を立案、調整、決定する」とあり、小沢氏が『日本改造計画』で示していた、与党と内閣の一体化や、国会議員の内閣ポストの増員については、事実上公約されていた。

 実際に、2009年の総選挙直後の臨時国会で、内閣法や国会法を改正する法案を提出していれば、社民党や国民新党が反対していたとも思えないので、普通に成立していたのではないだろうか。

■代表選立候補者は「与党と内閣の一体化」について意見を示すべき

 今回の民主党代表選では、複数の候補者の名前が挙がっているが、彼らは、2009年のマニフェスト2ページで示されていた、内閣への国会議員の増加について、どのように考えているのであろうか? 率直に言って、意見を示してほしい。

 実際に、自民党の議員は、年功序列や当選回数主義等の問題はあるものの、当選回数を重ねるにつれて、部会で政策に接し、順番とはいえ、政務三役に就任する過程などを通じて、一定の政策への理解をする経験を得られる仕組みができているが、民主党や維新の党は、個々の議員が政策を理解していく仕組みという意味で、疑問がもたれているし、内閣のポストを持たない政務三役以外の国会議員が、どのように政策形成に関与していくかという、民主党政権当時でも問題になっていた課題について、いまだまともな解決案が提示されているとは言い難い。

 いすれにしても、民主党の新代表は、兎にも角にも、150人から160人程度が政府に入るという、『日本改造計画』で示されていた改革の方向性について、仮にいつになるか分からないが、また、政権を取ることがあれば、速やかに、内閣法や国会法の改正案を、臨時国会に提出して、可決して実現するつもりであることを公約するべきではないか?

 いまからでも、議員立法を準備するべきであろう。【了】

 やまぐち・りょう/経済コラムニスト
 1976年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、現在、某投資会社でファンドマネージャー兼起業家として活躍中。さくらフィナンシャルニュースのコラムニスト。年間100万円以上を書籍代に消費するほど、読書が趣味。

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