東大、昆虫がフェロモンの匂い情報を処理する脳内経路を特定

2014年12月26日 17:37

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カイゴガの脳内における匂い情報の経路を示す図。カイコガの触角で検出された匂い情報は、まず感覚中枢に送られ、いくつかの経路を経て最終的に脳の前運動中枢で行動司令信号に変換される(東京大学の発表資料より)

カイゴガの脳内における匂い情報の経路を示す図。カイコガの触角で検出された匂い情報は、まず感覚中枢に送られ、いくつかの経路を経て最終的に脳の前運動中枢で行動司令信号に変換される(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

  • カイコガの脳の構造を示す図。脳の中央付近に側副葉が位置する(赤)(東京大学の発表資料より)
  • カイコガの側副葉の構造を示す図。側副葉の上部は、脳のさまざまな領域と接続されており、前大脳のハブとなっている。フリップフロップ信号を生成し、胸部運動系へ伝えるニューロン群は、主に下部に存在して信号を発する(東京大学の発表資料より)

 東京大学の神崎亮平教授・並木重宏特任助教らによる研究グループは、昆虫の脳内においてフェロモンの匂い情報を処理する経路を特定し、匂い情報が脳内に入り行動を起こす情報に変換されるまでの全過程を初めて明らかにした。

 オスのカイコガは、メスの放出するごく微量の性フェロモンを頼りにメスを探し当てるが、その際に特徴的なジグザグの移動パターンを示すことが知られている。このジグザグの移動パターンにはフリップフロップ応答が関係しているが、その詳細については明らかになっていなかった。

 今回の研究では、脳の特定の領域にガラス電極を用いて蛍光色素を注入することで脳内の地図を作成し、どの領域のニューロンがフェロモンに応答するか否かを調べたところ、4つの脳領域で匂い情報が処理されていることが分かった。さらに、側副葉の上部において脳内で処理された様々な感覚の情報が統合され、下部で持続発火を伴う行動司令信号に変換され、胸部運動系に情報が伝達されることが明らかになった。

 今後は、明らかになったカイコガの神経回路機構をスーパーコンピュータ「京」による全脳シミュレーションに反映することが予定されている他、農業害虫の行動制御の研究や匂い源定位のアルゴリズムや匂い源探索のための人工知能開発への応用が期待されている。

 なお、この内容は12月23日に「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

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