東工大、カゴ状タンパク質にCOを運ばせることで癌を抑制する方法を開発

2014年11月24日 18:24

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ルテニウムカルボニル錯体の化学構造(a)とフェリチンのX線結晶構造(b)。東京工業大学の発表資料より

ルテニウムカルボニル錯体の化学構造(a)とフェリチンのX線結晶構造(b)。東京工業大学の発表資料より[写真拡大]

 東京工業大学の上野隆史教授・藤田健太大学院生らによる研究グループは、カゴ状のタンパク質に一酸化炭素(CO)を閉じ込め、細胞内に送り込むことで癌の原因となる転写因子タンパク質を制御することに成功した。

 COは体内のタンパク質と強く結合して悪影響をもたらすことが知られているが、一方で炎症や癌化を抑制することも近年明らかになってきた。しかし、微量のCOを体内に送り込む技術は確立されていなかった。

 今回の研究では、カゴ状のタンパク質「フェリチン」とCO輸送化合物「ルテニウムカルボニル錯体分子」を混和させることで、COを体内に運ばせる複合体を作成した。実際に複合体をHEK293細胞へ導入し、NF-κBの活性化を評価したところ、従来のCO放出ルテニウムカルボニル錯体よりも2.5倍活性化すること、さらにCO放出量の多い複合体では4倍活性化することが明らかになった。

 今後は、COの細胞内の機能解明、タンパク質工学を利用した新しい薬物輸送法の確立、癌などの重篤疾患を標的とした医薬品開発への貢献などによって、ガス分子によるテーラーメイド型医療の実現に繋がると期待されている。

 なお、この内容は11月19日に「Journal of the American Chemical Society」オンライン版に掲載された。

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