【コラム 山口利昭】コーポレート・ガバナンス改革と日本監査役協会会長の交代

2014年11月16日 17:09

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【11月16日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 規模の大小を問わず、最近の上場会社では、新しい機関設計の形態である「監査等委員会設置会社」への移行を真剣に検討されているところも増えているそうですね。議決権行使助言会社の賛同表明なども後押しとなり、社外取締役選任推奨のプレッシャーの中で(監査等委員会設置会社への移行に関する)定款変更に動く会社も出てくることが予想されます。ただ、「第1号」ということになると勇気が必要ですよね。とくに監査等委員たる取締役の方々は、監査等委員としての取締役の職務を誰から教わるのでしょうか?自社の管理担当役員や法務部員から教わっても大丈夫でしょうかね?それって監査の独立性からみておかしくないですかね?うーーん、ナゾです。

 そのような時代の流れの中、私も市場関係者の方からお聞きして初めて知ったのですが、40周年を迎える日本監査役協会の会長さんが、11月5日に交代されたそうです(監査役協会さんのHPでもリリースされています)。新日鉄住金の太田会長が退任され、日本証券取引所の広瀬会長(同社取締役監査委員)が就任されたことが公表されています。太田会長は3年半会長を務められたそうで、本当にお疲れ様でした。法制審議会会社法制部会の委員、金融庁のコーポレートガバナンス有識者会議のメンバーも務められ、このガバナンス改革の中心で活躍されたことが印象に残ります。「いつも出勤したら、まずあなたのブログを読むんだよ〜」とおっしゃっておられたましたが、ホントにお話しやすい会長さんでした。

 私も監査役協会とおつきあいをさせていただくようになって8年ほどしか経っておりませんので、歴代の会長さんをよく存じ上げている、というわけではありませんが、証券市場に関連する会社から会長さんが選出される、というのは初めてではないでしょうか。私の個人的な感覚では、監査役は会社法上の機関ですが、近時のガバナンス改革の流れとも合致しているように思います。

 会社の仕組みだけでなく、仕組みが機能するための「株主との対話」が求められる時代、とくに監査役制度が外からはわかりにくい、と言われています。そこで監査役が企業価値向上にどのように影響を及ぼすのか、社外取締役や会計監査人が監査役とどう連携をとっているのか、企業自身にとって説明をしなければならない場面が増えてくるはずです。とくに国内・国外機関投資家を問わず、直近業績に関連する話題だけでなく、長期保有を前提とした企業価値向上に関わる話題についても対話の対象となってくるはずですから、監査役の「期待価値」も評価されるものと思います。

 拙ブログでも何度も述べているように、監査役が株主代表訴訟や第三者損害賠償請求訴訟の被告に巻き込まれるリスクも確実に増えています。したがって、監査役が訴訟で敗訴しないための行為規範、訴訟に巻き込まれないための行為規範を勉強する必要性も高まっています。そのような時期に、市場関係者の中から会長さんが選出された、ということで、これからの日本監査役協会の活動や意見の発信に期待をしています。私もまた社外監査役に就任する日がくるかも(?)しれませんので、新たな気持ちで勉強させていたきたいと思っております(「そんなことより、このまえ体調を悪くしてキャンセルになった講演はどうするんだ?」とのお声も聞こえてきそうですが・・・・・)。【了】

 山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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