先端技術を導入した町ぐるみの防災訓練

2014年10月25日 21:16

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記事提供元:エコノミックニュース

 2011年に発生した東日本大震災以降も、毎年のように発生する異常気象、大型の台風や集中豪雨が頻発することによる土砂災害や高潮など、地震によるもの以外も含め、自然災害による被害は年々多くなってきているように感じる。もはや日本のどの地域においても災害と無関係なところはないのではないだろうか。

 そんな中、全国でも珍しい災害対策本部を民間企業の工場に設置した防災訓練が、10月19日に「河童のふるさと」で知られる宮城県北西部加美郡色麻町で行われた。この訓練は色麻町と積水ハウスが合同で実施したもので、県警や消防、通信会社など、関係19団体や住民ら約400人が参加。他のエリアとも通信網で連絡を取り合い、町内全体では2000人を超える参加者となった。

避難先として提供されたのは地元にある積水ハウスの東北工場で、参加した住民たちは実際に避難所として工場内の大規模な体験型施設「住まいの夢工場」に避難。また、工場の管理棟内には色麻町災害対策本部も設置され、消防署と地元消防団、積水ハウス自衛消防隊による放水訓練や、宮城県防災航空隊のヘリコプターによる負傷者の救出訓練、倒壊建物救出訓練等などの中で、行政と企業とのより具体的な連携の試みが試される場となった。

 色麻町では、全国でも初となる試みとして独自に各世帯にも端末を配布し、構築する町内全域をカバーする無線災害情報ネットワーク受信システムを整備。積水ハウスとは昨年9月に防災協定を結び、行政だけでは賄いきれない人員や避難場所の確保へ、地域の企業と連携することで災害に強いまちづくりに向けて取り組んでいる。同社においても今年5月に「防災未来工場化計画」への取り組みを発表。今回、町の災害対策本部が同社の工場内に設置されたのは、太陽光発電や大型の蓄電池、ガスエンジン発電機などを設置しスマートエネルギーシステムを構築することで、災害時にも電気、水、ガスの供給が可能となることから、避難所の機能とともに一番重要な対策本部の運営に最も適しているとの判断からだ。同社では今後も自治体との連携を深め、災害時に地域社会をサポートする体制を全国に広げていくという。

 個人や家庭単位の防災もさることながら、色麻町の訓練のように、今まで踏み込みづらかった行政から企業への機能移転、ITを含めた先進技術・環境配慮技術の活用、またそのための企業からの人員や設備、備蓄物資の提供といった、お互いの領域を超える一歩進んだ取り組み無くしては、今後の地域の防災機能を高めることは難しい。その意味で今回の試みは先進的なモデルとして注目に値すると言えるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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