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カカクコム、飲食店からの「食べログ」削除依頼に、「食べログ掲載はSNSに公開するのと同じ」と応戦
【10月8日、さくらフィナンシャルニュース=大阪】
■クチコミ情報サイトの営業形態
さくらフィナンシャルニュース(SFN)が、「カカクコム、飲食店の「食べログ」掲載削除依頼を拒否、口コミ情報サイトの営業形態を守りたい」とのタイトルで報じていた訴訟案件について、その後の議論の中身が判明した。
原告は、大阪市西区で飲食店を数店舗経営する有限会社アカウントプランニング(以下、アカウント社)で、グルメ情報サイト「食べログ」を運営する株式会社カカクコム(東:2371)を相手どり、330万円の損害賠償請求を起こしていた。
事件番号は、平成25年(ワ)第13183号。
■アカウント社が訴えを提起したワケ
アカウント社が経営する某飲食店(、以下「本件店舗」)は、店先には看板を置かず、外観からは飲食店には見えないという「秘密性」の演出を営業上の柱にしている。顧客は常連客とその紹介者が大半であるという。ところが、被告の運営する「食べログ」に本件店舗の外観、内装などの情報が掲載されてしまった。アカウント社は掲載の削除を依頼するも、被告は拒否した。
もしこのまま「食べログ」掲載が続けば、営業戦略が阻害されるとして原告は訴訟を提起した。
被告・カカクコム社のこれまでの反論は主に2つである。
1つは、原告はFACEBOOKなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に店舗情報を公開しており、原告が言う「秘密性」は営業戦略と言い難い。2つめは、原告の削除依頼を受け入れれば、削除依頼が波及し、口コミサイトという営業形態がおびやかされるというものであった。
事件の担当は、大阪地方裁判所第18民事部、裁判長は諸岡慎介氏(第56期)。原告側の弁護士は川畑真治氏、被告側の弁護士は高橋元弘氏と田淵智久氏。
■新たなる論点―情報サイトとマスコミの違い、情報サイトとSNSの違い
今回は第4回(7月14日)と第5回(8月27日)の口頭弁論の論点をまとめて提示する。
〈原告の主張〉
1.被告は「無断」で他の企業の情報を公開し、経営戦略を阻害している。もしマスコミなら取材の申し込みをするはずで、取材される側には取材を拒否する権利もあるはず。同じように、原告には情報サイトへの掲載を拒否する権利がある。
2.FACEBOOKやツイッターは、知人に対する公開である。「不特定多数」が目にするTVCMや情報サイトとは異なる。「秘密性」と言っても、店舗を完全に非公開にすれば、営業は出来ない。どの程度の情報を公開していくか、を判断することが原告の言う「秘密性」の営業戦略である。
〈 被告の反論(番号1.2.は原告の主張に対応)〉
1.マスコミからの取材を拒否するのと情報サイトへの掲載を拒否することは別物だ。飲食店なら店舗情報は公開されて当たり前である。(被告は店舗からの削除依頼に応じないと明言している有名サイトを列挙した)
2.FACEBOOKの「いいね」やツイッターの「リツイート」の機能は、「不特定多数」に広まるものである。「食べログ」に掲載されるのも変わりはない。
■「不特定多数」と「特定多数」
双方の主張において、「不特定多数」という言葉の意味に食い違いがあるのではないかと筆者は感じた。
FACEBOOKやツイッターでも、情報サイトでも、Aに関する情報は、結果的にはAの知らない「多数」に広まる。Aの知らない人にまでその情報が届くという点では、その「行く先」は「不特定」である。ネットの世界では情報の「行く先」は分からない。情報の「行く先」は「不特定多数」である。
しかし、Aに関する情報の「出処」はどうだろうか。例えば、口コミ情報サイトの場合は、Aに関する情報の「出処」は匿名の誰かだ。その誰かは、Aには「不特定」である。ところが、SNSの内部では、その情報のそもそもの「出処」はAの「知り合い」なのだから、それなりにAにも「特定」される。
SNSの情報の「出処」は、Aにとっては「特定多数」と言ってもよいのではないか。
本事件は、「情報」とその「公開」について考えさせる最先端の事例の一つである。
「不特定多数」という言葉ひとつをとっても、その意味内容を文脈に応じて正確にとらえなければならない時代を、われわれは生きている。
9月29日に第6回口頭弁論が行われたが、この時の資料は現在、大阪地裁が使用中である。資料が公開され次第、報道する。【了】
フリーライター 井上 聡/いのうえ・さとし。1983年生まれ、福岡県出身。京都大学大学院在学中。専攻は美学・国文学。趣味は加茂川沿いをランニング。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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