九大、躁うつ病の維持治療薬を全て比較しリチウムが第一選択薬であることを明らかに

2014年9月20日 22:55

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双極性障害の経過を示す図(九州大学の発表資料より)

双極性障害の経過を示す図(九州大学の発表資料より)[写真拡大]

 九州大学の三浦智史助教・神庭重信教授らによる研究グループは、躁うつ病の維持治療薬を全て比較し、リチウムが第一選択薬であることを明らかにした。

 躁うつ病(双極性障害)は、気分の落ち込む「うつ病エピソード」と、気分が高揚する「躁病エピソード」を繰り返し、その間にはエピソード間欠期がある。このエピソード間欠期に次の気分エピソードを予防する目的で使われる薬(維持治療薬)には多くの種類があるが、これまで全ての維持治療薬を比較する研究はおこなわれていなかった。

 今回の研究では、1970年から2012年までに行われた33の臨床試験(総参加者数6,846名)で使われた17種類の治療薬を比較した。その結果、リチウムは「すべての気分エピソード再発症例数」「躁病/軽躁病/混合エピソード再発症例数」「うつ病エピソード再発症例数」という3つの有効性評価項目で全てプラセボ(偽薬)より優れていることが分かった。リチウム以外の薬剤は、3つの評価項目もうちいずれか1つ以上がプラセボと差がない、もしくは信頼度が低いと評価された。

 リチウムは、双極性障害の維持薬物療法に古くから用いられている薬物であるが、依然として第一選択薬であることが明らかとなった。ただし、リチウムは、有害事象による治療中断については、プラセボよりも劣っていたため、使用する際には、注意事項をよく確認し安全性モニタリングを心がける必要があることも分かった。

 また、今回の研究で検討した治療薬の中には、有効性と安全性いずれも良い傾向が認められたにも関わらず、比較的小さな研究しか行われていなかったために、十分な精度で結果を得ることができなかった治療薬が認められた。これらは、双極性障害の維持治療薬として、将来有望な候補になりうる治療薬であり、今後のさらなる研究が期待される。

 なお、この内容は9月16日に「The Lancet Psychiatry」に掲載された。

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