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【コラム 山口利昭】株主総会バトルは理屈と実務と胆力の総合力です
【9月13日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
この1カ月、アコーディアゴルフ社、メディネット社に続き、ソーシャルエコロジープロジェクト社でも、少数株主による臨時株主総会の招集許可申立事件が勃発しています。支配権争いの起きた会社において、株主側から臨時株主総会の開催許可が裁判所に申し立てられるわけですが、上場会社において申立がされることは意外と珍しく、まさに会社の経営権を巡って関係者間のガチンコ勝負が展開される予兆となります。
社長解任事件や敵対的買収事件などのお手伝いをしていると、ときどき対応しなければならないわけですが(検査役に選任される、ということもありますね)、実は上場会社の場合、商事非訟事件として招集許可が下りて、株主主導の臨時株主総会が開催される、というのはレアなケースなのです。
あまり詳しくは述べませんが、通常は会社側の担当者が仕切ってくれる総会実務を株主がやらなければならなかったり、株主招集の臨時株主総会の審議範囲が限定されていたり(動議も出せないとか)、大株主の意向をまとめるために、空気を読んで経営上の妥協案を考えたりといったことで、株主側はたいへん苦労するわけです。株主の確定やら委任状集めなど検討しているうちに、会社側がころ合いを見計らって臨時株主総会の開催を(取締役会で)決定するということで、落ち着いてしまうことが多いですね。
また、株主総会バトルといえば、どうしても株主総会のほうに目を奪われがちですが、敵対的買収のような「一枚岩」になれるときは別として、経営権争いが株主総会バトルとして表面化するケース(たとえばメディネットさんやソーエコさんの例)では、臨時取締役会を開催しなければならないことが多く、取締役会の手続き上の瑕疵がバトルの成否を分けるケースもあります。
今回のメディネットさんの一連のバトルでも、取締役会の招集手続きに瑕疵がある、と一方からクレームがつき、監査役2名が取締役会の続行を勧告した(その勧告どおりに延期されたところ、形勢が変わった)・・・という事件もありました。
こういった株主総会バトルには、弁護士による支援も不可欠ですが、上場会社の場合には広報コンサルタントの方々の支援も不可欠ですね。株主や従業員の方々に、いま起きている事件をどう見てもらうのか・・・、一緒にお仕事してみると、シナリオ作りの大切さがよくわかります。最終的には株主の過半数の支持を得ることで決着するわけですが、そこに至るバトルには理屈と実務とKY(空気を読む力)、そしてなによりも「マスコミを敵に回しても絶対に勝つ」という関係者の胆力ではないか・・・と思う次第です。【了】
山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。
※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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