【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは高値更新の展開

2014年7月30日 09:34

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

  ワイヤレスブロードバンドサービスを展開するワイヤレスゲート <9419> (東マ)の株価は高値更新の展開だ。7月3日に5080円を付けて14年1月の上場来高値5070円を突破し、7月8日には6560円まで上値を伸ばした。その後一旦は利益確定売りが優勢になったが、7月29日に6380円まで上伸して再動意の構えを見せている。目先的には過熱感で乱高下の可能性もあるが、中期成長力を評価する流れに変化はなく上値追いの展開だろう。なお8月1日にLTE領域の新商品発表会、8月5日に第2四半期累計(1月~6月)の業績発表を予定している。

  通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレスブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供している。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、前期(13年12月期)末時点の会員数は約42万人となった。少ない社員数で高収益構造であることも特徴だ。

  ワイヤレスブロードバンドサービス事業の重点戦略として、サービス提供エリアの拡大、販売チャネル数の拡大、サービスラインナップの拡充を掲げている。

  販売チャネル数拡大では、ヨドバシカメラでの販売、住友商事 <8053> との業務提携による最大手携帯販売会社ティーガイア <3738> での販売に加えて、取扱携帯販売会社数を増やす方針だ。サービスラインナップ拡充では、13年6月にオプションサービス第1号として月額料金480円の「電話リモートサービス」の提供を開始した。ARPU(顧客1人当たり売上高)向上や顧客基盤拡大につなげるため、追加のオプションサービスも検討している。

  新規事業としては14年1月に、法人をターゲットとしたWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。自治体が公衆無線LANを災害時の通信インフラとして活用する動き、観光地などが公衆無線LANを活用して外国人旅行客を誘致する動き、商店街などが公衆無線LANを活用して集客力向上を目指す動きなど、各地で公衆無線LAN環境を整備・活用する動きが強まっている。

  こうした状況を背景に、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなどソリューションサービスの提供を開始した。事業の一環として、銀座通りと晴海通りで実施している「銀座フリーWi-Fi」に続いて、5月にはJR秋葉原駅西口の屋外広告媒体「アキバWi-Fiシリンダー」を開発し、6月には産官民協働「Fujisan Free Wi-Fiプロジェクト」に参画している。

  また5月8日には、LTE領域のSIM関連サービスおよびソリューション事業を開始することを発表している。当社のLTEは12年12月からMVNO(仮想移動体通信事業者)としてデータ通信中心にサービスを提供してきたが、より自由度の高いLTEネットワークを構築すべく、通信事業者との接続方法などの変更を予定している。これによって従来のLTEサービスのラインナップを顧客ニーズに合わせて一新するとともに、LTEネットワークを活用したソリューション領域をさらに拡充する方針だ。

  7月1日には、LTE通信対応のSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」のサービス提供開始を発表した。ヨドバシカメラで先行予約受付を開始し、9月1日から販売開始する。さらに8月1日にはLTE領域の法人向けM2M/IoTソリューションの新商品発表会を開催する。

  また7月1日には、世界最大のコミュニティーWi-Fiを展開するFON社との提携に関する検討を開始したと発表している。FON社は06年の設立(ドイツテレコム、ブリティッシュテレコム、グーグルなどが出資)で、世界1000以上の主要都市でサービスを展開している。

  今期(14年12月期)の連結業績見通し(2月13日公表)は売上高が前期比20.6%増の85億09百万円、営業利益が同14.6%増の9億円、経常利益が同14.6%増の8億98百万円、純利益が同12.5%増の5億43百万円で、配当予想は14年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期と同額の年間25円(期末一括)としている。

  販売チャネル数の拡大やサービスラインナップの拡充などの効果で会員数が順調に増加し、販売手数料や人件費の増加を吸収する。第1四半期(1月~3月)は前年同期比26.5%増収、18.2%営業増益、17.9%経常増益、16.8%最終増益と順調だった。ストック型の収益構造であることも考慮すれば通期上振れの可能性があり、中期的にも収益拡大基調だろう。

  なお5月8日には、東京証券取引所本則市場への変更申請準備および自己株式取得を発表している。12年7月の東証マザーズ上場から2年経過し、既存事業の規模拡大や新規事業の展開加速に向けて、社会的な認知度や信用力を一段と向上させるため、東証1部市場または東証2部市場への変更申請に向けた準備を開始した。自己株式取得は株主還元策の一環として実施し、5月22日~7月2日の期間に累計2万株(取得価額総額6448万4900円)を取得して終了した。

  株価の動きを見ると、4月~5月の安値圏2000円近辺で下値固めが完了して強基調に転換し、6月末以降は上げ足を速める展開となった。LTE通信対応SIMカードの提供開始やFONとの提携検討開始も好感し、7月3日に5080円を付けて14年1月の上場来高値5070円を突破した。さらに7月8日には6560円まで上値を伸ばした。その後一旦は利益確定売りが優勢になったが、7月29日には6380円まで上伸して再動意の構えを見せている。

  7月29日の終値6300円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円28銭で算出)は116倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は0.4%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS206円18銭で算出)は31倍近辺である。日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が拡大して目先的な過熱感を残しているが、週足チャートや月足チャートで見ると上場来高値を更新して強基調の形だ。目先的には過熱感で乱高下の可能性もあるが、中期成長力を評価する流れに変化はなく上値追いの展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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