京大、物体の熱輻射を超高速で制御することに成功

2014年7月29日 15:26

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a)電圧により輻射パワーを変化させることができる熱輻射光源の模式図、(b)量子井戸内に電子が存在する場合(左)と存在しない場合(右)の熱輻射発生の模式図。量子井戸には、離散化された二つのエネルギー状態が存在し, 電子は加熱されるとこの二つのエネルギー状態間の遷移を繰り返す。(c)PNダイオードに電圧を印加した際の量子井戸内の電子密度の変化。電圧を印加すると、量子井戸に存在する電子数が減少する。(d)作製光源から生じる熱輻射パワーが印加電圧により変化する様子(京都大学の発表資料より)

a)電圧により輻射パワーを変化させることができる熱輻射光源の模式図、(b)量子井戸内に電子が存在する場合(左)と存在しない場合(右)の熱輻射発生の模式図。量子井戸には、離散化された二つのエネルギー状態が存在し, 電子は加熱されるとこの二つのエネルギー状態間の遷移を繰り返す。(c)PNダイオードに電圧を印加した際の量子井戸内の電子密度の変化。電圧を印加すると、量子井戸に存在する電子数が減少する。(d)作製光源から生じる熱輻射パワーが印加電圧により変化する様子(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の野田進教授らによる研究グループは、物体からの熱輻射スペクトルを選択でき、オン/オフを超高速で切り替えることができる技術を世界で初めて開発することに成功した。

 物体は加熱されると光を放射するという性質を持ち、様々な光源に利用されてきた。しかし、熱輻射によって得られる光には複数のスペクトル(波長成分)が混ざっており、オン/オフの切り替えにも時間がかかるという課題があった。

 今回の研究では、熱輻射を得るために物体の温度を変化させるのではなく、物体内部で起きている光と電子の相互作用を直接制御することを試みた。その結果、量子井戸とフォトニック結晶の効果によって特定の熱輻射スペクトルを抽出できることや、これまでの約6,000倍の速さでオン/オフを切り替えられることを明らかにした。

 研究メンバーは、「今回実証した狭帯域な熱輻射の高速変調動作は、赤外線を利用した環境・バイオ分野のセンシング、イメージング等の応用において、極めて有用な要素技術になることが期待され、超小型・安価・低消費パワーな分析が実現できると考えられます」とコメントしている。

 なお、この内容は7月28日に「Nature Materials」電子版に掲載された。

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