カカクコム、飲食店の「食べログ」掲載削除依頼を拒否、口コミ情報サイトの営業形態を守りたい

2014年7月7日 16:35

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【7月7日、さくらフィナンシャルニュース=大阪】

「カカクコム、飲食店の「食べログ」掲載削除依頼を拒否し大阪で訴訟に」と題して報道していた案件の、その後の進展が明らかになったのでお伝えする。

事件番号は、平成25年(ワ)第13183号。

原告は、大阪市西区で飲食店を数店舗経営する有限会社アカウントプランニング(以下、アカウント社)で、グルメ情報サイト「食べログ」などを運営する株式会社カカクコム(東:2371)を相手どり、330万円の損害賠償請求を起こしていた。

アカウント社は、「隠れ家」としての営業を経営の戦略とする某飲食店(大阪市西区、以下「本件店舗」)に関する情報を、「食べログ」から削除すること、および賠償金330万円の支払いを求めている。
「食べログ」に本件店舗が掲載されると、「隠れ家」としての営業戦略が阻害されてしまうというのが訴えの理由である。

被告カカクコムは訴えを全面的に退けた。

事件の担当は、大阪地方裁判所第18民事部、裁判官は諸岡慎介氏(56期)。原告側の弁護士は川畑真治氏、被告側の弁護士は高橋元弘氏と田淵智久氏。

前回の報道では、第1回と第2回の口頭弁論の内容をお伝えした。5月に行われた第3回の口頭弁論では、被告カカクコムが自身の主張を一層明確にしている。
カカクコム側の主張では、「アカウント社は、本件店舗情報をSNS(ソーシャルネットワークサービス)などを通じてネット上に公開しており、「隠れ家」としての秘密性を演出するという原告の営業戦略は無効である」というもの。また、「いかなるメディアにも非公開の店舗であれば、削除依頼に応じる」と断言。

削除依頼に応じない理由は、アカウント社の営業戦略が不完全であるからだと明言した。

カカクコムがアカウント社の訴えを退けるのは、本件訴訟を超えたさらに原理的な理由があるだろう。仮にアカウント社の訴えを受け入れれば、飲食店が容易に削除依頼や損害賠償の請求を行えるような先例が生まれてしまう。

要するに、原告に譲歩すれば、「食べログ」という口コミ情報サイトの業務形態が脅かされる、とみなしているとも言える。カカクコム社に取材を申し入れると、

「訴訟係属中の案件となりますので、誠に申し訳ございませんがコメントは差し控えさせていただきたく存じます。弊社といたしましては、今後も引き続き訴訟の中で弊社の考え、これまでの取組みを正しくお伝えし、ご理解いただけるよう努めてまいります」

とした上で、以下のようなコメントがあった。

「食べログは、『みんなで作るレストランガイド』をコンセプトに、お店でお食事されたユーザー様ひとりひとりから寄せられる感想を紹介し、『レストラン選びの場』として信頼できるサービスを提供することを運営目的としております。

そして、食べログをよりよい『場』とするため、ユーザー様はもちろん飲食店様からのご意見も参考に運営しており、本件に限らずユーザー様、飲食店様からの全てのご意見、ご要望について慎重に検討した後に、弊社の考えをお伝えしております」

次回期日は7月14日で、原告の反論が展開される。
「SNSに公開」するという行為と、「ネット上で公開」するという行為との意味の違いなど、同じインターネットを通した表現の中でも、『様々な意味合いの違い』が争点となりそうだ。

なお、原告のアカウント社のコメントは、入り次第、お伝えする予定だ。【了】

 フリーライター 井上 聡/いのうえ・さとし。1983年生まれ、福岡県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程在学中。専攻は美学・国文学。趣味は加茂川沿いをランニング。

 「カカクコム、飲食店の「食べログ」掲載削除依頼を拒否し大阪で訴訟に」(http://www.sakurafinancialnews.com/news/2371/20140411_4)

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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。

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