東大、海綿動物の毒性物質を作り出している共生バクテリアを特定

2014年7月1日 22:50

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海綿D. calyxと伊勢エビ(東京大学の発表資料より)

海綿D. calyxと伊勢エビ(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

  • Calyculin Aを生産するバクテリアEntotheonella sp.(東京大学の発表資料より)
  • 海綿Discodermia calyxの化学防御機構を示した図(東京大学の発表資料より)

 東京大学の脇本敏幸准教授らによる研究グループは、海綿動物内の細胞毒性物質を作り出しているバクテリアを特定することに成功した(発表資料)。

 海綿動物は最も原始的な多細胞動物であり、岩などに付着して海水から有機物を摂取している。海綿動物は防御機能として、共生する微生物が作り出した抗菌活性物質や細胞毒性物質を持つことが知られているが、それらが合成されるメカニズムや生産者については明らかになっていなかった。

 今回の研究では、相模湾に生息する海綿動物を起源とする細胞毒性物質「calyculin A」を採取し、その遺伝子情報を解析して生産者がEntotheonella sp.というバクテリアであることを突き止めた。さらに、宿主の海綿動物への毒性を回避するためにまずは毒性の低い物質を作り出し、海綿動物が外的に攻撃されると細胞毒性物質が生じる巧妙な機構が存在することが明らかとなった。

 今後はEntotheonellaの培養化などを確立することで、Entotheonellaが生産する多様な生理活性物質の有効利用が期待できる。また、calyculin Aを利用した化学防御機構の詳細が明らかになれば、その毒性を制御する技術開発が可能となり、がん細胞などの目的の細胞や組織だけに毒性を発揮するプロドラッグ治療の開発も期待できるという。

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