九州大、新しい解析手法によって、南海トラフの断層の様子を明らかに

2014年5月5日 20:26

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これまで考えられていた断層構造(上図)と、本研究で明らかとなった断層構造(下図)。今回の結果(下図)から津波発生域が海側へ延びる可能性が示唆された。赤線は断層を示す。

これまで考えられていた断層構造(上図)と、本研究で明らかとなった断層構造(下図)。今回の結果(下図)から津波発生域が海側へ延びる可能性が示唆された。赤線は断層を示す。 [写真拡大]

  • (a)調査海域と探査測線 (b)波形トモグラフィによって推定した弾性波速度(P 波速度) 
(c)本研究で推定した間隙水圧分布と新たに解釈された断層分布。赤色は間隙水圧が高い状態(地
震が発生しやすい領域)、青色は間隙水圧が低い状態(地震が発生しにくい領域)を示す。

 九州大学の辻健准教授らは、波形トモグラフィという解析手法を用いることで、南海トラフで津波を発生させる可能性がある断層の間隙水圧分布を推定し、分岐断層がこれまで予想されていた位置とは異なることを明らかにした。

 断層の亀裂にある水の圧力(間隙水圧)が大きくなると、断層の摩擦が小さくなり地震が発生しやすくなる。東日本大震災も、これが地震発生原因の一つであると考えられており、間隙水圧を正確に測定することは地震の起きやすさを把握する上で、重要な意味を持つ。しかし、これまで南海トラフの巨大分岐断層周辺の間隙水圧は明らかになっていなかった。

 今回の研究では、波形トモグラフィと呼ばれる、波の移動時間と波形を使った解析手法を用いることで、間隙水圧を推定するために必要な弾性波速度を精密に測定した。また、その結果と採掘データなどを合わせることで、初めて地震断層周辺の間隙水圧を連続的にマッピングすることに成功した。

 この研究成果によって、間隙水圧の大きさだけでなく、巨大分岐断層がこれまで考えられていた位置よりもさらに30km程日本列島から離れていることも明らかになった。これによって、津波発生域の評価が変わり、津波の発生域が広くなる可能性がある。

 この研究成果は、津波の大きさの予測、断層の動きの解明などに役立てられる。

 なお、研究成果の詳細は、4月25日に国際学術誌『Earth and Planetary Science Letters』オンライン版に掲載されている。

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