生理学研究所、“掻くと気持ちいい”仕組み解明 アトピー悪化防止に期待

2014年1月9日 17:07

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痒いところを掻いて快感が生じているときに報酬系と呼ばれる脳部位(中脳や線条体)が活動していることを示す写真(自然科学研究機構生理学研究所のプレスリリースより)

痒いところを掻いて快感が生じているときに報酬系と呼ばれる脳部位(中脳や線条体)が活動していることを示す写真(自然科学研究機構生理学研究所のプレスリリースより)[写真拡大]

 自然科学研究機構生理学研究所の望月秀紀特任助教授、柿木隆介教授は9日、掻くこと(搔破)によって生じる快感に報酬系と呼ばれる脳部位が関係することを明らかにしたと発表した。過剰に掻くことで皮膚を傷つけることを防ぐ治療法の開発につながることが期待されるという。

 発表によると、研究グループは、実験的に痒みを誘発させた手首の近辺を掻くことで快感を生じさせた。そのときの脳の活動を、磁気共鳴断層画像装置(fMRI)を使って調べた結果、中脳や線条体といった報酬系と呼ばれる脳部位が強く反応することが明らかになった。この報酬系の活性化が掻破による快感を引き起こす原因と考えられる。

 望月氏によると、過剰に掻くことで皮膚を傷つけ、それが原因で痒みがさらに悪化してしまうため、アトピー性皮膚炎患者など痒みで苦しむ人々にとっては、掻くことによる快感は深刻な問題となる。

 望月氏は、「今回の発見により、快感に関係する脳部位が特定できた。この部位の活動を上手にコントロールできれば、過剰掻破を抑えることができる。そのような掻破の制御を目的とした新たな痒みの治療法開発につながることが期待される」とコメントしている。

 今回の研究成果は米国の学術専門誌Journal of Neurophysiology(神経生理学雑誌)の1月号に掲載予定。

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