三菱重工や今治造船など5社、ブラジル造船大手に資本参加

2013年10月22日 13:07

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 三菱重工業、今治造船、名村造船所、大島造船所および三菱商事の5社は22日、ブラジルの大手造船会社エコビックス-エンジェビックス社に資本参加することで合意し、株式購入契約を締結したと発表した。ブラジルの海底油田開発のさらなる発展を目指す国内産業育成策に沿い、先進的な技術や運営ノウハウを提供することで日・ブラジル造船業の相互振興をはかっていくのが狙い。なお、今回の案件は、同国の造船事業に日本の造船会社と商社が連合して出資する初めての案件となる。

 日本連合は、三菱重工をコンソーシアムリーダーとして、5社が現地に設立する特別目的会社(SPC)を通じてエコビックス社株式のうち30%の出資参画を果たし、エコビックス社の経営に参画する。日本連合のSPC内における出資比率は、三菱重工が約半分で残りが他の4社による出資となり、ブラジルの独占禁止法管理当局からの許可が下り次第出資を完了する予定。

 エコビックス社は、エンジニアリングや発電などを幅広く手掛けるジャクソン(JACKSON)グループの傘下にある。同グループはエコビックス社のほか、ブラジルの大手エンジニアリング会社であるエンジェビックス社、クリーンエネルギー発電会社のデセンビックス社、インフラ関連の運営を手掛けるインフラビックス社を統括する持株会社。エコビックス社は2010年、ブラジル国営石油公社ペトロブラス社向けに、沖合のプレソルト層油田から石油を採掘する同国のプログラムをサポートするFPSO(洋上浮体式生産・貯蔵・積出施設)船体8隻を建造するために設立された。2012年8月にはブラジル政府からドリル船3隻を受注している。

 エコビックス社は、ラテンアメリカで3番目に大きな年金基金のFUNCEFと共同で、南部のリオグランデ・ド・スル州にある造船所を運営している。同造船所は従業員5,000人強で、2,000トンのガントリー・クレーンを備えた国内最大のドライドックを持っている。

 ブラジルでは、同国沖合のプレソルト層に埋蔵されている石油が発見されて以降、ペトロブラス社などにより油田開発が進められている。ブラジルは、数年後にはこの石油を国内消費するだけでなく輸出することを計画しており、埋蔵量探査とその後の石油生産は今後20年にわたる国家計画の重要な部分を占めている。こうした背景から、ブラジルでは新技術の導入および造船業を含めた地場産業の育成が進められる一方、沖合のプレソルト層の油田を開発・掘削するためのドリル船やFPSOをはじめとする各種船舶・海洋構造物の需要が増大している。

 日本連合5社は今回の資本参加を通じて、沖合での安全な石油生産に不可欠な各種設備の品質向上や納期短縮などの技術でエコビックス社に協力することにより、ブラジルの国家戦略にも貢献することを目指す。併せて、日本の優れた造船所経営手法や、船舶・海洋構造物に関する先進技術を幅広く提供することで、ブラジル第一位の造船会社を目指す同社を強力に支援していく。

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