日本株暴落の原因が「外国人が大幅に売り越しに転じたため」というのは嘘/Miniトピック

2013年6月3日 10:40

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記事提供元:フィスコ

[Miniトピック]

 5月23日に日経平均株価が歴代11位の暴落を演じたため、5月第4週の投資部門別売買状況が大変な注目を集めた。巷では、「日本株暴落の原因は昨年からずっと買い越しを続けていた外国人がついに大幅に売り越しに転じた(アンワインド)ため」という解説が数多く流布されていたことから、外国人の動向が特に注目された。しかし、蓋を開けてみると外国人の売り越しはたった44億円であった。最も大きく売り越したのは、信託銀行(つまりは年金基金)で4,659億円だった。

 この状況と23日までのNT倍率(日経平均/Topix)の異常ともいえる上昇から推察されるのは、今回の「日経平均の暴落」はやはり、最近「日経平均先物と日経平均の寄与度の高い一部の構成銘柄」を買い上がっていた短期筋が、それらについて一気に利益確定に走った可能性が高いということだ。今回の暴落の原因を正確に言い直すと、「日経平均という指数と一部の銘柄を買い上がっていた短期筋が一気に利益確定したことによる行って来い」といえるだろう。

 それに年金基金のリバランスによる4000億円超もの売りが値下がり幅の大きさにある程度つながったようだ。年金はポートフォリオの管理上、特定の資産が規定を超えて増えると自動的に売りを出す。最近の日経平均の上昇で自動的に売りを出していたが、日経平均16000円接近で売りが増えるタイミングであった。

 さらに興味深いのは、5月30日に突然、日本最大の年金運用機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資産の基本ポートフォリオの運用手法を弾力化する方向にある、という報道が出たことだ。運用を弾力化できれば上記のように無理に売りを出す必要がなくなる。「今後日本株が上昇した時に年金の大きな売りにより冷水をかけることはしませんよ」というメッセージが「どこからともなく発せられた」ということができよう。

 ともあれ、今後の最大の注目点は、アベノミクスの第三の矢である成長戦略の発表をみて、外国人が本格的に売り越しに転じるのかであろう(現時点の売買状況では本格的な売り越しに転じたとは到底言えない)。外国人の期待をつなぐことができれば、来月に迫る参議院選挙での自民党の過半数獲得・衆参ねじれ解消によるアベノミクス・成長戦略のいっそうの推進を見込んで、さらに資金流入が続くというシナリオが期待できる。

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