川崎重工、非食用の稲わらから低コストなバイオエタノールを製造する技術確立

2013年5月30日 13:45

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 川崎重工業は30日、農林水産省の「ソフトセルロース利活用プロジェクト」において取り組んできた、稲わらを原料とするバイオエタノール製造実証試験を完了し、非食用バイオマスである稲わらから低コストなバイオエタノールを製造する技術を確立したと発表した。

 同プロジェクトは農林水産省の公募事業で、非食用の未利用資源である稲わら等のソフトセルロースからバイオ燃料を製造する技術の確立を目的としたもの。川崎重工は2008年度から2012年度の5年間にわたり、秋田県の全面的な支援のもとで、秋田県農業公社とともに同プロジェクトに取り組んできた。

 今回の実証試験では、稲わらの糖化工程において川崎重工の新技術である「熱水式バイオエタノール製造技術」を採用している。従来の技術では、糖化工程に硫酸や酵素を使用する必要があり高コストとなる問題があったが、川崎重工の技術は熱水のみで糖化処理を行うことができるため、環境性・経済性に優れている。また、熱水の条件を変更することによって、稲わら以外のソフトセルロースの糖化処理も可能。

 川崎重工は2009年11月、秋田県潟上市に日産200リットルの生産能力を持つ製造実証プラントを設計・建設し、2010年10月には秋田県の大潟村ソーラースポーツラインで、同プラントで製造したバイオエタノールを使用した自動車の走行実証試験に成功した。その後も、稲わらの前処理、糖化、発酵、蒸留および無水化まで一貫した実証プラントを連続稼動させ、JISに適合したバイオエタノールを安定して製造可能であることを確認し、商業規模で1リットルあたり40円の製造コストを実現するバイオエタノールの製造技術を確立した。

 化石燃料を代替するクリーンエネルギーとして注目されるバイオエタノールは、穀物やでんぷんなど食用バイオマスから製造する技術が先行して普及しているが、世界的な食糧不足が懸念される現在、稲わらなどの非食用バイオマスからバイオエタノールを製造する技術の確立が喫緊の課題となっている。

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