グリーン政策大綱(骨子)を発表、さらなる具体化を望む

2012年12月3日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 11月27日、政府の国家戦略室が発表した「グリーン政策大綱(骨子)」。この骨子には、原発依存度の低下や化石燃料依存度の抑制と共に、第四次環境基本計画にて設定された「2050年までに温室効果ガス80%排出削減」という目標に向け、再生可能エネルギーの最大活用や省エネの深化など、先進的5分野が重点施策に掲げられ、さらに施策ごとの様々な目標が提示されている。

 例えば、新しい再生可能エネルギーや電気自動車の航続距離を約2倍向上させることなどが掲げられているが、我々の日常に関連する分野として最も注目すべきは、住宅やビルの省エネに関するものであろう。今、総選挙に向けて原発の是非ばかりが議論されているものの、日本のエネルギー政策の大部分は民生部門のエネルギー効率化をいかに進めるかにある。我が国のエネルギー消費(CO2換算)では、約40%も増加しているのが民生部門であり、ここをいかに減らすかが非常に大きな議題なのである。

 この分野では、2030年までにHEMSを全世帯に普及させることや、家庭用燃料電池を2016年までに自立化させ、2020年時点で140万台、2030年までに530万台を導入することを目標としている。また、住宅で消費されるエネルギー(排出されるCO2)を省エネ化により削減し、再生可能エネルギーにより創出したエネルギー量(削減したCO2)と相殺することで、エネルギー消費量ゼロを目指す「ゼロエネルギー住宅(ZEH)」を2020年までに標準的な新築住宅とすることも掲げられているが、この取り組みに関しては、民間においてすでに先取りされている。

 住宅業界では、昨年はスマートハウス元年、今年はスマートタウン元年と呼ばれるように、省エネ・創エネ住宅、とりわけZEHの普及が急ピッチで進んでいる。第9回エコプロダクツ大賞において、スマートコモンシティが「エコプロダクツ大賞推進協議会特別賞(節電優秀賞)」を受賞した積水ハウスを例にとると、今年4月にまちびらきをした「スマートコモンシティ明石台」において、一年間に街全体で発電する電力量がその消費電力量を1.7倍上回るなど、ゼロとする以上の成果を上げている。そもそも太陽電池と燃料電池(W発電)を搭載すると、「使用エネルギーと創エネルギーの差引ゼロが実現する」(同社コメント)という、ZEHレベルが普通に実現しているのだ。また同社は、新築物件に関して、太陽光発電システム搭載戸建住宅1万2000棟契約(2011年度実績は1万1222棟)、燃料電池6000台契約(昨年は3500台の目標に対し、5356台の契約)といった具体的な数値目標を掲げており、積極的にZEHの普及に取り組んでいる。

 さらに一般家庭においても、すでにコストパフォーマンスの高い省エネ対策は広がり、市場も拡大している。その最たる例が住宅の断熱リフォーム、中でも、調温された室内の空気が外に漏れるのを防ぐ「内窓」の設置である。1窓辺り1時間も可能だという施工の容易さや費用の安さもあり、2012年度10月末時点での住宅エコポイント発行件数のうち過半数がこのリフォームを実施している。この広がりを受け、ヨドバシカメラなどの大手家電量販店も市場に参入しており、パナソニックも、内窓を含めた一部屋単位で断熱する商品の発売を発表している。住宅エコポイントが7月に終了となったことから市場の縮小も懸念されているが、LIXILグループが11月から独自のポイント制度を開始するなど各社がこの分野に注力しており、矢野経済研究所の調査によると、環境・省エネ関連窓材市場は2013年度も前年比115.4%と堅調に推移すると予測されている。

 今回発表された骨子の内容は、いずれも政府としてなすべき不可欠な要素と言えるであろう。しかし、民間の施策をなぞっただけと思えるものもあり、政府が先導若しくは下支えすると言うには心もとなさも感じられる。これから10年の単位で普及を促すべき具体的な政策誘導が補助金や税制優遇において充実されることが本筋であるが、次期政権にその具体的イニシアティブが取れるのか、期待と注目が集まるところであろう。

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