富士フイルム、皮膚に貼るだけで薬剤を体内に届ける手段を開発

2012年11月14日 17:26

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「マイクロニードルアレイ」の例(画像:富士フイルム)

「マイクロニードルアレイ」の例(画像:富士フイルム)[写真拡大]

 富士フイルムは14日、新しいドラッグデリバリー手段として注目されている、皮膚に貼るだけで薬剤を体内に届けることができる「マイクロニードルアレイ」を開発したと発表した。

 「マイクロニードルアレイ」は、100~2000ミクロンの長さの微細な突起をシート上に配した薬剤送達部材で、皮膚表面に貼ることで突起部分から薬剤を皮膚に浸透させ、体内に届けることができるというもの。「マイクロニードルアレイ」の突起部分は皮膚に貼っても注射のような痛みを感じることはないという。また、患部に薬剤を効率よく届けることもできるため、薬剤投与の新しい手段として期待されている。

 今回開発した「マイクロニードルアレイ」は、突起部分に注射剤成分として使用実績のある多糖類などを使用しており、突起そのものが数分以内に皮膚下で溶解し、突起中に充填された薬剤を体内に届けることができる自己溶解タイプ。突起部分が体内で溶解しないタイプは突起部分が折れて体内に残る危険性があるのに対し、「マイクロニードルアレイ」は突起そのものが消失するため高い安全性を実現している。

 また、「マイクロニードルアレイ」は、富士フイルムが写真フィルムの製造で培った精密加工技術などを応用しており、突起の長さや形状を自由に設計することができるとともに、大量生産も可能という特徴を持つ。

 現在、富士フイルムでは、ワクチンやホルモンを充填した「マイクロニードルアレイ」の動物実験を実施している。すでにワクチン投与の実験では注射と比べて同等量以上の抗体が生成されることを確認しており、今後ヒトでの臨床研究の実施に向けて準備を進めていく方針。また、来年後半の稼働を目指してGMP(Good Manufacturing Practice)準拠の治験薬製造設備も整備していく。

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