【話題】中国偏重のリスク高まる

2012年9月21日 10:56

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【日中関係悪化、日本企業の海外展開に変化の可能性】

  日本政府による尖閣諸島国有化に端を発した日中関係の緊張の高まりは、日中両国にとって経済への悪影響が懸念されることはもちろんだが、日本企業にとって中国市場進出、あるいは中国市場偏重に伴うリスクがあらためて認識されただけに、今後の日本企業の海外展開動向に変化をもたらす可能性がありそうだ。

  19日に北京市公安当局がデモ禁止を通告したことなどを受けて、中国・北京の日本大使館前で続いていた反日デモがほぼ収まり、大規模な反日デモが暴徒化していた各地の状況も、概ね落ち着きを取り戻す方向のようだ。従業員の安全確保のために休業していた日系メーカーの工場や日系の小売店も、被害を受けた施設を除いて順次再開されている。

  反日デモは中国政府の抑制策で一旦は沈静化に向かう模様となったが、一方では経済、文化、スポーツなどの分野で日中間の交流を中止あるいは規模縮小する動きが相次いでいる。日中双方で観光客のキャンセルも相次いでいるようだ。中国の税関での日中貿易に関する通関業務の遅延も指摘され、2010年の対日レアアース輸出規制のような経済的報復措置が警戒されている。今回の緊張の高まりは、日本政府による尖閣諸島国有化に中国が強く反発したものである。一旦は沈静化しても領有権問題が解決することはなく、今後も中国は事あるごとに反日デモや経済報復措置をちらつかせることになるだろう。

■領有権解決困難。経済報復、賃上げ要求、資産没収などのリスクも

  中国という潜在的に巨大な消費市場に向かって、中国での生産拠点拡充を積極的に進めてきた日系メーカー、中国での店舗展開を本格化し始めた日系小売企業にとって、もちろん巨大な中国市場から簡単に撤退するわけにはいかないが、あらためて中国リスクを認識されられた形である。

  中国に限らず新興国市場に進出する場合は、外資に対する現地住民の反発、労働者の賃上げ要求、そして最悪の場合には資産没収・国有化などのリスクが常に付きまとう。欧米先進国に進出する場合以上にリスク管理が重要になることはもちろんだが、今後はリスク分散の観点からも中国に偏重した海外展開は見直さざるを得ないだろう。

■リスクの少ないベトナムに対し日本企業の進出加速の可能性

  中国での人件費上昇に加えて、日本以上のスピードで高齢化が進むことなども考慮すれば、やはり成長著しく今後も人口増加が予想されるタイ、インドネシア、ベトナムなどの東南アジア市場への展開が有力になりそうだ。そしてタイでは洪水リスク、インドネシアではイスラム圏の宗教的リスクなどを考慮すれば、比較的リスクの少ないベトナムに対して日本企業の進出が加速する可能性もあるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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