清水建設、福島県広野町のセシウム汚染土壌実証浄化プラントが本格稼働開始

2012年8月10日 11:15

印刷

広野町に建設したセシウム汚染土壌の実証浄化プラント(プラントは現在大型のテントで覆われている)(写真:清水建設)

広野町に建設したセシウム汚染土壌の実証浄化プラント(プラントは現在大型のテントで覆われている)(写真:清水建設)[写真拡大]

 清水建設は9日、同社が福島県双葉郡広野町に建設したセシウム汚染土壌の実証浄化プラントが本格稼働を開始したと発表した。同実証浄化プラントは、高い浄化率と高い減容率を両立させた新開発のスクラビング(擦りもみ洗浄)機能が特徴。なお、同実証浄化プラントは、環境省の除染技術実証事業として建設したもので、事業を通じてプラントのスクラビング機能を実証するとともに、浄化プロセスの無人化、浄化コスト2万円/m3の実現を目指す。

 環境省では、中間貯蔵施設に保管するセシウム汚染土壌等は東京ドーム23杯分、2,800万m3に達すると試算しており、貯蔵施設の大規模化が懸念されるとともに、建設用地の確保が大きな課題になっている。このため清水建設は、施設に保管する高濃度汚染土の減容化がこうした課題解決につながると考え、今回の浄化プラントを開発した。再利用可能な土壌の基準濃度はまだ示されていないが、浄化処理により最大で汚染土壌の80%程度を再利用できるものと同社は考えているという。

 同プラントの浄化プロセスは、分級(フルイ分け)処理、スクラビング処理の順に進む。最初に汚染土壌をフルイに投入し、粒径2mm以上の再利用可能な土壌をフルイ分けて回収。続いて残りの土壌を遠心分離機(ハイドロサイクロン)にかけ、粒径63μm以下の高濃度汚染土と粒径63μm~2mmの土壌とに再分級する。次のスクラビング処理では、新開発の機能により、粒径63μm~2mmの土壌からセシウム付着部を効果的に剥がし取り回収する。

 新開発のスクラビング機能の特徴は、高い浄化率(汚染濃度を83~96%低減)を維持したまま、高濃度汚染土の減容化率を従来より10ポイント程度、例えば減容化率が70%なら80%にアップできること。これは、土粒子表層を効果的に薄く剥離させる薬剤とその使用量、スクラビング時間の組み合わせの最適化により可能になったもの。実験では、脂肪酸塩等のアニオン系薬剤を用いることにより、直径比率で汚染土壌表層部のわずか2%を剥ぎ取ることに成功している。従来は、土粒子を掻き混ぜ粒子表面を擦り合わせるだけの単なる機械的な処理であったため、剥離圧を調整できず土粒子の表面を必要以上の厚さで剥離させていたため、一層の減容化が求められていた。

 なお、同実証プラントでは、高濃度汚染土壌の減容化を進めるだけでなく、浄化の最終プロセスである高濃度汚染土の脱水作業、脱水した土壌の袋詰作業を自動化することで、作業者の被曝も最小限に留めている。また、プラントの要素技術は、清水建設が200万トンの浄化実績を持つ重金属等を対象にした土壌洗浄プラントを基に開発したものであり、処理能力が40~80t/時の実用レベルのプラントの建設が可能となっている。

関連記事