[仕事術]働く時間を減らすと生産性が上がる

2012年7月11日 21:36

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 「遅れを取らないように週末も働くべきか、それともワーク・ライフ・バランスを維持するために休みを取るべきか」これは誰もが感じるジレンマです。

 これに対する答えでよく聞くのは、「働くべきだ」というものです。米国人材マネジメント協会(SHRM: Society for Human Resource Management)の調査では、労働者の70%が所定の労働時間を超えて働き、週末に仕事を持ちこしていることがわかりました。

 そして、調査対象の50%は、いつも会社が長時間働くよう求めるからというわけではなく、自らそうするよう課していることもあったのです。

 しかし、2009年10月にハーバード・ビジネス・レビューに掲載された4年にわたる調査の結果では、生産性を上げる手段として休みを取る必要性が裏付けられています。

 この調査では、ボストン・コンサルティング・グループの12のチームを対象に、ある試験が行われました。各グループとも、週に一度、前もって決めた日に休みを取り、また週に一度は定時に退社するというものです。しかし、週に一度、夕方に休みを取ることさえ難しかったり、実験当初には、協力者から抵抗が示されたことを鑑みると、協力者たちの心理状態がわかるのではないでしょうか。

実験の結果、下記のことがわかりました。
・社内でもっとコミュニケーションが図れるようになった。
・よりきちんと事前に計画するようになった。
・優先順位をつけることをいっそう重視するようになった。
・以前より私的な活動を共有するようになった。
・さらに結束の固いチームになった。

 調査の主眼は職場の「緊張感」を取り除くことでした。この場合の「緊張感」とは、ハーバードのパーロー博士が定義したもので、仕事から完全に離れる時間がなく、仕事をコントロールしていると感じることができない心持ちを指します。

 5カ月間、定期的に一定の休みを取り続けた結果、実験に参加したコンサルタントたちは自分たちの仕事と生活全般にいっそう満足感を覚えたそうです。そして会社の従業員定着率は、調査に参加していない他の会社にくらべてずいぶんと高くなったのです。

 拙稿『生産性を抑圧する7つの落とし穴』では、避けた方がいい事柄のひとつに、夜遅くまで仕事をしている人を含め、「忙しくしている」社員を褒めることを挙げました。

 忙しいことは生産性が上がることと同意ではありません。さらに、遅くまで居残るのはその日のうちに仕事を終えられなかったからだとも言えます。定時に退社する生産性の高い社員を褒めたほうがいいでしょう。

 筆者が主催するタイムマネジメント・セミナーでは、次の手法に焦点を当てています。
・邪魔されない一定の時間を確保する。
・するべきことをグループ分けすることで、集中度を上げ、複数のことを同時するのを制限する。
・案件に優先順位をつける。

 上記の方法を含め、効果的なタイムマネジメントの手段をすでに用いているのなら、個人的な事柄にも気後れせずに一定の時間を割くべきです。そうすると、リフレッシュしていっそう前向きな態度で仕事に戻ることができ、仕事と生活の両方で物事の見方を改善できるはずです。

※この記事はKey Organization Systems提供の記事を財経新聞が日本向けに翻訳・編集したものです。

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