パナやヤマダ電機の強敵に 「ハイアール+ホームセンター連合」

2012年6月18日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 白物家電世界首位が日本市場に大攻勢 ハイアール(海爾)というと、日本では「中国でトップの家電メーカー」というイメージを持つ人が多いが、冷蔵庫、洗濯機など白物家電の生産シェアはすでに日本勢や韓国勢を追い抜き、「Haier」は世界のトップブランドになっている。イギリスの調査会社ユーロモニターによると、2011年のハイアールの白物家電世界シェアは7.8%で3年連続首位。洗濯機では12.3%、冷蔵庫では16.5%ものシェアを取っている。

 そのハイアールが今年に入って日本市場への攻勢を強めている。パナソニックから三洋電機の白物家電ブランド「AQUA」を譲り受け、「Haier」とのダブルブランドで商品ラインナップを強化。小泉今日子さんをイメージキャラクターに広告宣伝活動も活発に行っている。「AQUA」の初年度の売上目標は350億円、シェアの目標は10%で、2015年には冷蔵庫も洗濯機も15%の国内シェアを奪取したいと強気だ。ハイアールはアジア地域の統括本部を大阪に設置し、国内販売会社はブランド別に二本立てとした。開発拠点「R&Dセンター」を東京と京都に設けるなど、家電メーカーとして日本に根付かせる体制を固めている。果たしてハイアールは、日本市場で成功するだろうか?

 ホームセンターという新しい販路を開拓

 ハイアールについて、家電の業界を少し知っている人なら、こう言うかもしれない。「日本のメーカーと家電販売店の密接な関係に、割って入るのは至難の業だ」。いわゆる販売奨励金(リベート)の話だけではない。メーカーは家電量販店に店頭販売員を派遣しているし、販売促進のためなら流通に対して陰に陽に、さまざまなサポートを行う。家電量販店トップのヤマダ電機がメーカーに販売員の派遣を強要したと、独占禁止法違反で公正取引委員会から排除措置命令を受けたのは2008年のことである。

 そんなベタベタな関係がある世界に、家電量販店が「どうせ数が出ないから置くだけムダ」「うちへのサービスが悪い」と言いそうな新参メーカーはなかなか入りづらい。だがハイアールは、そのルートにはこだわらない。旧三洋電機のよしみもあり、コジマやケーズデンキ、ビックカメラ、ヨドバシカメラのような家電量販店ルートや、イオンやイトーヨーカ堂、西友のような大手流通ルートでも製品を販売しているが、それらと全く別のルートも独自に開拓し成果をあげている。「ホームセンター」である。

 ホームセンターと言っても大手の大型店舗なら、生鮮食料品を除けば大手スーパー顔負けの品揃えがある。海外から直輸入するプライベートブランド商品にも力を入れていて、安いと評判だ。家電の取り扱いも白物家電を中心に広がっており、たとえばキッチンまわりなら、茶碗1個から冷蔵庫まで「ワン・ストップ・ショッピング」で揃う強みがある。

 ハイアールは、そこに目をつけた。現在、「コメリ」「カインズホーム」「コーナン」「ジョイフル本田」「ケーヨーD2」「ホーマック」などで製品を扱っており、全国にまんべんなく広がって、大都市圏よりも地方で強いのが特徴だ。この春のヒット商品になった40リットルの小型冷蔵庫は、ホームセンター方面から売れ行きに火がついたという。コメリなどはハイアールだけの専門コーナーまで設け、「AQUA」だけでなく「Haier」ブランドの白物家電も並べている。家電量販店では「AQUA」以上に冷遇される「Haier」だが、ここに来れば消費者はズラリと並んだ製品を触って、値札と見比べて「自分にとってお値打ちか?」を確かめて選べる。たいていは日本メーカー製よりも機能を絞り込んだ分、価格が安い。コメリによると予想外の売れ行きで、ハイアール・コーナーの企画は当たっているという。

 今後、価格志向が強まる日本だから有望

 「中国メーカー製」というと「火が出るのではないか」といった偏見がまだ根強いが、「必要最低限の機能だけあれば十分。それで安ければお買い得」と考える消費者もいる。それが決してニッチなマーケットではないことは、今年1月から4月までの日本市場の売上が前年比約4割増というハイアールの業績が証明している。この秋には容量400リットル強の大型冷蔵庫を8万円で発売する予定で、また話題を呼びそうだ。

 日本の消費者を大きく、「現役世代」「正社員」「都市部」「大都市圏」というキーワードでくくった場合と、「高齢者」「非正規労働」「郊外」「地方」というキーワードでくくった場合、今後、高齢化が進み、所得水準が低下し、税金や社会保険料の負担が増え、「社会の二極分化」がより進んでいくなら、後者の比率がますます大きくなっていくと予想できる。ホームセンターという小売業態は客層も立地も商品もかなりの程度、後者寄りである。品質志向よりは価格志向のほうが強く、ナショナルブランドよりもプライベートブランドのほうが好まれる。だとしたら、支持する消費者層が拡大するホームセンターは有望で、その商品としてピタリとはまるハイアール製品もまた、有望と言えないだろうか。

 日本人の多くが行きつけのホームセンターで、財布の中身と相談しながら機能がシンプルで安価なハイアール製家電を求めるようになったら、「ハイアール+ホームセンター連合」は、パナソニックのような家電メーカーにとっても、ヤマダ電機のような家電量販店にとっても、侮りがたい強敵になるだろう。

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

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