直近IPO2銘柄は「小さく産んで大きく育てる」IPO投資の理想形=浅妻昭治

2011年11月1日 12:56

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

マネーはファッショナブルである。変わり身が速く、志操堅固などとは無縁である。「リスク・オフ(回避)」が突然、「リスク・オン(取得)」に変わることなど日常茶飯事だ。この10月も、月末ギリギリになって超弱気が超強気に180度転換した。

マネーはファッショナブルである。変わり身が速く、志操堅固などとは無縁である。「リスク・オフ(回避)」が突然、「リスク・オン(取得)」に変わることなど日常茶飯事だ。この10月も、月末ギリギリになって超弱気が超強気に180度転換した。[写真拡大]

【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】

  マネーはファッショナブルである。変わり身が速く、志操堅固などとは無縁である。「リスク・オフ(回避)」が突然、「リスク・オン(取得)」に変わることなど日常茶飯事だ。この10月も、月末ギリギリになって超弱気が超強気に180度転換した。キッカケは、27日の欧州連合(EU)ユーロ圏17カ国首脳会議での包括戦略の合意で、欧州の債務問題は一件落着として株価が急反発に転じた。

  マーケット関係者のコメントでも、投資テーマとして、欧州の金融システム不安は、もうシーズン・オフだという。11月3~4日開催のG20(主要20カ国・地域)首脳会議のテーマも、欧州大手銀行の資本増強ではなく、景気回復策となるからだというのである。その証拠に、欧米各国の株価は、NYダウを筆頭に7月高値から10月安値まで急落した下落幅の半値戻しを達成している。相場格言通りに「半値戻しは全値戻し」というわけだ。スタンダード・バラードの“世界は日の出を待っている”ではないが、“世界は株高を待っている”ことになる。

  独り取り残されたのが、日本である。為替介入のチャンスをみすみす取り逃がして円高は収まらず、日経平均株価の反発も、この夏の急落幅の3分の1戻しにとどまっている。G20では、消費税10%への引き上げを国際公約すると巷間伝えられているが、そんなことをしたら、世界のファッションとなっている「景気回復」にまたまた周回遅れになるのではないかと心配になる。

  日本の投資家だって“株高を待っている”のである。その明確な証拠が、やはりこの10月末のIPO(新規株式公開)に如実に現れた。10月20日IPOのシンバイオ製薬 <4582> と24日のスリー・ディー・マトリックス <7777> である。

  シンバイオ薬は、公開価格560円に対して20%安の初値をつけ、ストップ安の370円と売られ、上場2日目は、312円まで続急落したが、3日目には410円まで急反発した。一方、3Dマトリックスも、公開価格2100円に対して43%の1200円で初値をつけ1180円まで売られたが、前週末は2091円まで急反発し、公開価格目前となった。

  両社株ともバイオ・ベンチャーで業績は連続赤字、それなのに上場時の資金吸収額は32~43億円と大きく、そのうえロックアップ条項付きだが、ベンチャー・キャピタルの保有株も多い。公開価格割れの初値形成は、当然、事前予想されたことである。

  それがなぜ、上場安値から急反発したこといえば、シンバイオ薬は、主力薬が台湾で新薬承認を取得したと発表したことがキッカケで、3Dマトリックスは、強気の中期経営計画の開示を引き金とした。投資家は、“株高を待っている”とばかりに買い材料に飛び付いたのである。

  実は、この2銘柄の急反発には、「小さく産んで大きく育てる」IPO投資の理想形となる前段の銘柄があった。今年6月24日に新規上場されたイートアンド <2882> である。初値を公開価格2860円を下回る2631円でつけ、2250円まで売られたが、その後は、8月の今3月期第2半期累計決算の上方修正をキッカケに底上げ、前週27日には上場来高値3080円まで買い直された。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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