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[書籍紹介]考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか? |著者:イビチャ・オシム - 財経新聞

[書籍紹介]考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?

考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?

 本書は6-7月に開催された南アフリカW杯を前に、06年に日本代表監督に就任し、07年に脳梗塞に倒れるまで日本代表チームを指揮したイビチャ・オシム前サッカー日本代表監督が「少しでも力になればという処方箋」として書かれたもの。

 同大会では、日本が自国開催以外で初の決勝トーナメント進出を果たしたことで国内の大きな関心を集めたことが記憶に新しいが、本書では同大会での戦績予想を超えた優れた戦術論、組織論、日本人論が展開される。

 例えばオシム氏は、日本代表チームの傾向として「たぶんにリスペクトを払いすぎる」ことを指摘する。リスペクトとは相手の力がノーマルだと考えること。

 どのチームにも長所と短所があり、また個人でも見れば誰も「完全無欠なスーパーマン」は存在しないが、08年に日本で開催されたクラブW杯選手権では「サポーターもメディアも、ロナウドをまるで怪獣のように思っていた。」しかし、マンチェスター・ユナイテッド対ガンバ大阪の準決勝で、ロナウドは「安田理大を相手に何もできなかった」。

 オシム氏は、安田がロナウドのDVDを擦り切れるほど見て、ドリブルの種類、癖や特徴を徹底して研究したのだろうと推測し、『自分たちに「何ができて、何ができないか」。もしくは「相手が何ができて、何ができないか」。それらを冷静に客観的に分析することが必要』だと説く。

 このような視点は、競合との熾烈な競争を日々重ねるビジネスマンや経営者にとっても有益なものだろう。特に、これから市場を切り開いていこうとする中小やベンチャー企業の経営者にとって、単純な能力の比較では勝る相手をどのように攻略していくかという点で、優れた洞察が得られる。

 また、オシム氏の冷静かつ客観的な目から語られる日本人やひいては日本社会の特徴も興味深い。グローバル化が進み、企業活動も海外を対象にすることが今後ますます増えていくだろうが、日本人自身には気付きにくい短所と長所を偏りのない視点から把握し、改善していくために役立つのではないか。(財経新聞編集部)

この書籍の情報

書名 考えよ! ――なぜ日本人はリスクを冒さないのか?
著者 イビチャ・オシム
出版社 角川書店(角川グループパブリッシング)
価格 760円
発売日 2010-04-10
ISBN 978-4047102385