1998年に設立され、わずか2年後の2000年には東証マザーズに上場したサイバーエージェント。ネット系広告代理店の最大手として現在は売上高966億円、営業利益93億円(2010年9月期)の規模にまで成長し、またアメーバブログ(アメブロ)などで知られるメディア事業も拡大させている。
本書では、自身と社員1人、アルバイト1人の3人で同社を立ち上げた藤田普社長が会社設立に至った経緯から、上場後に初の通期での黒字決算となった2004年9月期の決算発表までの半生を振り返る内容となっている。
本書の魅力の一つといえるのは、ベンチャー企業が成長していく過程とそれをなしえた藤田氏の仕事に向かう姿勢が垣間見られることだ。
後の藤田氏のスタイルに通じるものとして、創業前にバイトとしてフリーペーパーの広告の営業をしたオックスプランニングセンター(現オックスプランニング)社でのエピソードが興味深い。
同社で藤田氏が担当したのは、これから創刊するフリーペーパーの広告を飛び込みで売り込むという難しい仕事。バイト仲間は次々と辞めていったが、藤田氏は、毎日100件近くの飛び込みをがむしゃらにこなし、仕事にのめりこんでいったという。朝早い時間も土日でも仕事が無ければ探してでもハードに働くというスタイルを藤田氏はその後も貫いている。
藤田氏はまた同社で、創業メンバーの一人である同社専務から多くを学び「経営的な視点を持って仕事をし、会社に接していた」という。ある時同専務は、「おれたちみたいな新しい会社はすぐに実績を見せろといわれるが、そのような時にはハッタリでもいいから実績を口に出してしまって、次に会うときまでに本当に実績を作ればいいんだ」と藤田氏に諭す。藤田氏は、「苦しい内情のベンチャー企業がゼロから何かを生み出すことができる理由を知った瞬間でした」と記している。
独立後のサイバーエージェントも資本金の半分以上を費やして「実力以上の立派な」オフィスからスタートし、技術に詳しい人材は無く、営業が得意といえるのも藤田氏だけながら、「インターネット専門の営業に強い会社」として攻勢をかけていく。
また、サイバーエージェントの設立や上場をめぐる人間ドラマも魅力的だ。同社の設立をめぐって藤田氏は、上述の専務を「2度裏切った」と表現する決断を選択している。独立前に在籍した当時インテリジェンス社長、現USEN社長の宇野氏、広告商品のシステム開発を委託したライブドアの堀江元社長、楽天の三木谷社長、GMOインターネットの熊谷社長など、ネット業界のキーパーソンといえる人物たちとの交流についても伺い知ることができる。(財経新聞編集部)
[書籍紹介]渋谷ではたらく社長の告白
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- 2010-11-26 16:47:44
この書籍の情報
書名 | 渋谷ではたらく社長の告白 |
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著者 | 藤田普 |
出版社 | 幻冬舎文庫 |
価格 | 560円 |
発売日 | 2005-03-31 |
ISBN | 978-4-344-40999-6 |