1兆円流出のバイナンス、出金再開後に7400億円の純流出―補填は95%に

2026年11月3日 09:52

 世界最大の暗号資産(仮想通貨)交換業者バイナンスで約1兆円にのぼる過去最大規模のハッキング被害があったことを受け、顧客が差し引き47億ドル(約7430億円)を引き揚げた。同社はサービスの復旧を進めるとともに、顧客資産は保護されていると利用者に説明している。

 資金流出は、10月29日に発生した推定63億ドル(約1兆円)規模のサイバー攻撃を受けて約45時間にわたり停止していた出金が再開された後に起きた。

 多額の引き出しが続いたものの、流出額は同社の保有資産全体からみれば比較的小さい。バイナンスの広報担当者によると、純流出額はプラットフォーム上の資産の約3%に相当する。同社は、出金の動きは当初の急増の後に落ち着き始めており、一部の顧客が暗号資産を他へ移す一方で、入金も続いていると説明した。

■出金再開後9時間半で36億ドル超が純流出

 バイナンスが公表した取引データは、日曜日(11月1日)の出金再開直後の状況を示している。協定世界時(UTC)午前6時から午後3時30分までの間に、顧客は約46億5000万ドル(約7350億円)を引き出し、10億1000万ドル(約1600億円)を入金した。差し引きの純流出額は36億4000万ドル(約5750億円)となった。同社によると、これは10月28日時点の準備金証明(プルーフ・オブ・リザーブ)に基づく資産総額1710億ドル(約27兆円)の2.1%に当たる。

 冒頭の47億ドルは、より長い期間を対象とした集計である。いずれの数字も、攻撃後に顧客がバイナンスから移した資金の額であり、ハッカーによる追加の盗難額ではない。

 同社は日曜日の朝から段階的に出金を再開し、まずビットコイン、イーサ、BNB、ソラナ、XRPなど主要な暗号資産の取引を認めた。

 第1段階の対象となった15のネットワークと資産は、UTC午後0時36分までにすべて利用可能となった。その他の暗号資産については、追加のセキュリティー確認が続いている。

 バイナンスは、顧客が残りの資産を移動できるようにする前に、影響を受けたシステムが安全に稼働していることを確認する必要があったとして、段階的な再開の理由を説明した。

■自己資金で95%を補填

 同社は攻撃で失った暗号資産を自己資金で買い戻して補填している。復旧状況に関する最新の報告では、影響を受けた資産の約95%を補填したと明らかにした。前回報告時点の90%から上昇した。

 残る5%は主に流動性の低い暗号資産で、必要な数量の購入に時間がかかっているという。ビットコイン、イーサ、BNB、ソラナ、XRP、主要なステーブルコインなど主要資産に関する残高は、全額の裏付けがあるとしている。

 バイナンスは、自社資金や緊急時に備えた利用者保護基金を活用し、損失を顧客に転嫁せず自社で負担すると約束している。

■FBIは北朝鮮の犯行と断定

 今回の攻撃は、記録が残る中で最大級の暗号資産盗難事件となった。2025年2月に同業のバイビット(Bybit)から盗まれた15億ドル(約2370億円)を上回る。米当局はすでに、攻撃に関与したとみられるグループを特定している。

 米連邦捜査局(FBI)は声明で、今回の盗難を北朝鮮のハッカー集団による「トレーダートレイター(TraderTraitor)」と呼ばれる攻撃活動によるものと断定した。同集団はこれまでも暗号資産関連企業を標的にしてきた。

 FBIによると、攻撃者は盗んだ資産を主にイーサに交換しており、分散型金融(DeFi)プラットフォームや、暗号資産を即時に交換できるインスタントスワップ・サービスを使って、さらに資金を移転する可能性がある。

 FBIは米シークレットサービス、米内国歳入庁(IRS)犯罪捜査部門と連携し、暗号資産事業者やブロックチェーン関連のサービス事業者に対して、盗難資産を保有するウォレットとして特定されたアドレスに関連する取引を遮断するよう求めた。

 バイナンスは、業界パートナーの協力を得て、影響を受けた暗号資産のうち約30億ドル(約4740億円)相当を凍結したと明らかにした。凍結によって資産の移転は阻止されるが、必ずしも資金が回収されたことを意味するわけではない。

■侵入経路の調査は継続

 攻撃者がどのようにバイナンスのシステムに侵入したかについての調査は続いている。同社は当初、侵入経路の一つとして、システムの運用を担うDevOpsエンジニアの不正侵入を受けたノートパソコンを挙げていたが、その後の調査で他にも問題のある箇所が見つかった。暗号資産取引の承認に使われるウォレットの秘密鍵が流出した証拠は見つかっていないという。

 同社は調査完了後に詳細な技術報告書を公表するとしている。一方、ブロックチェーンのデータ分析会社は、主要な取引プラットフォーム全体で暗号資産の動きを監視している。

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