マックスリニア、AIデータセンター向け光製品の通期予想を3度目の上方修正 売上高72%増

2026年10月25日 13:49

ファブレス半導体メーカーの米マックスリニア(MaxLinear)は米国時間10月22日、2026年の光データセンター製品の通期売上高予想を2億5000万〜2億7000万ドル(約393億~424億円)へ引き上げた。同年に入って3度目の上方修正となる。同時に発表した第3四半期決算では、AIデータセンター向け製品の伸びを背景に、全社売上高が前年同期比72%増となった。

■光製品の見通しを3度目に上方修正

カリフォルニア州カールスバッドに本社を置くMaxLinear(NASDAQ:MXL)の2026年第3四半期売上高は2億1810万ドル(約342億円)だった。前年同期比72%増、前四半期比29%増となり、インフラ製品の拡大が成長をけん引した。

光データセンター製品の年間売上高について、同社は1月の決算説明会で、Keystoneによる1億〜1億3000万ドル(約157億~204億円)の売上高を見込んでいた。その後、4月に1億5000万〜1億7000万ドル(約236億~267億円)、7月に2億1000万〜2億3000万ドル(約330億~361億円)へ引き上げ、今回さらに増額した。最新予想は、1月の予想に比べ下限で1億5000万ドル(約236億円)、上限で1億4000万ドル(約220億円)高い。

AIデータセンター向け光製品を含むインフラ分野の売上高は、第3四半期に前年同期比210%増となった。第1四半期の136%増、第2四半期の145%増に続き、3四半期連続の3桁成長である。インフラは第1四半期に同社最大の売上カテゴリーとなり、第3四半期には売上高の過半を占めた。

Kishore Seendripu最高経営責任者(CEO)は、Keystone PAM4 DSPプラットフォームの量産拡大に加え、1.6T対応の光・電気接続製品であるRushmoreとAnnapurnaを巡る顧客活動が、事業の勢いを支えていると説明した。同社は、光接続を中心にデータセンター内で提供する製品の範囲を広げている。

S&P Global傘下のVisible Alphaが9月1日に公表した市場予想の集計では、2026年のインフラ分野の売上高は前年比169%増の3億9800万ドル(約625億円)と見込まれていた。このカテゴリーには、光データセンター製品に加え、通信・無線インフラや企業向けネットワーク関連製品も含まれる。

■売上拡大と費用抑制で営業利益率が改善

第3四半期は収益性も改善した。株式報酬などを調整した非GAAP営業利益率は29.5%で、第2四半期の22.3%、2025年第3四半期の12.1%から上昇した。前年同期からの改善幅は17.4ポイントだった。

米国会計基準(GAAP)による営業利益は3020万ドル(約47億4000万円)となり、前年同期の4130万ドル(約64億8000万円)の営業損失から黒字に転換した。GAAP営業利益率は前年同期のマイナス32.7%から13.9%へ上昇し、改善幅は46.6ポイントとなった。

売上高が前四半期比29%増える一方、GAAP営業費用は同4%減の9780万ドル(約154億円)だった。売上高の伸びに対して営業費用を抑えたことで、利益率が高まった。GAAP希薄化後1株利益は0.30ドルで、第2四半期の0.02ドル、前年同期の0.52ドルの損失から改善した。

非GAAP希薄化後1株利益は0.62ドルとなり、第2四半期の0.35ドル、前年同期の0.14ドルを上回った。2026年1〜9月の累計売上高は5億2410万ドル(約823億円)で、2025年通年の4億6760万ドル(約734億円)を超えた。

■Keystoneの5nm設計と省電力化

成長の中核を担うKeystoneは、400G・800Gの光接続などに用いるDSP(デジタル信号処理プロセッサー)の製品群だ。TSMCの5nm CMOSプロセスを採用し、SerDesと呼ばれる高速信号の直列化・並列化回路や、信号品質を補正する処理機能を備える。

通信方式にはPAM4(4値パルス振幅変調)を採用する。従来のNRZが2段階の信号レベルで1シンボル当たり1ビットを表すのに対し、PAM4は4段階で2ビットを表す。同じシンボル速度で2倍の情報を伝送できる仕組みだ。

MaxLinearの製品資料によると、Keystoneはホスト側の電気インターフェースと光回線側の双方で、1レーン当たり106.25Gbpsの信号速度に対応する。PAM4は信号レベル間の間隔が狭くなるため、雑音や波形のひずみに対する対策が重要となる。Keystoneは送信側の波形補正や受信側の等化処理を組み合わせ、信号品質を確保する。

省電力性能について、Seendripu氏は7月の決算説明会で、Keystoneの消費電力は競合製品より約40%低いと説明した。また、同社が2023年に発表したJPC Connectivityとの提携では、Keystoneを採用する800Gアクティブ電気ケーブル(AEC)について、競合ソリューション比で最大40%の省電力効果を見込んでいた。通信部品の省電力化は、データセンターの給電・冷却負荷を抑える設計上の利点になる。

同社によると、Keystoneは米国とアジアの主要なハイパースケール顧客向けに、400G・800G用途で量産が拡大している。製品資料には、QSFP-DDやOSFPなどの着脱式光モジュールに加え、AECへの対応も示されている。Seendripu氏は、Keystoneで築いた顧客関係を、次世代の1.6T・3.2T接続製品へつなげる方針を示した。

■1.6T光接続と銅線接続へ製品を拡大

次世代の光接続を担うRushmoreは、1レーン当たり200Gbps級のPAM4 DSPで、1.6Tbpsの光モジュールを対象とする。Keystoneの100Gbps級からレーン当たりの速度を高める製品だ。同社は2027年の売上寄与を見込み、10月の決算説明会では、一部採用案件の出荷が同年前半に始まるとの見通しを示した。

MaxLinearは3月の光通信技術展示会「OFC 2026」で、Rushmoreと200Gbps級のトランスインピーダンスアンプ(TIA)「Washington」を組み合わせたデモを披露した。TIAは、光受信素子が出力する電流信号を電圧信号へ変換する回路で、Washingtonは光受信側のアナログ処理を担う。

4月に提供開始を発表したWashingtonについて、同社はDSPを用いる光モジュールに加え、LRO、LPO、NPO、CPOなどの構成を支える製品群へ展開する方針を示している。これらは、信号処理機能の配置や、光部品とスイッチなどとの実装位置が異なる方式である。DSP、TIA、ドライバーなどをそろえることで、顧客の構成に応じた部品を提供する狙いだ。

Annapurnaは、1レーン当たり224Gbps、合計で最大1.6Tbpsの電気接続に対応する銅線リタイマーである。AECや基板上のリタイマー用途を対象とし、AIシステムの短距離接続で光製品を補完する。光と銅線の双方に製品を展開することで、同社はデータセンター内の異なる距離や実装条件に対応しようとしている。

同社はまた、データセンターの制御用ネットワークにXGS-PONを採用する初の案件を獲得したと説明している。10月の決算説明会では、複数のデータセンターを結ぶ制御用接続について認定を完了し、2027年の立ち上げを見込むとした。事業の拡大先は、光DSPからデータセンターの管理・制御向け接続にも及ぶ。

■Broadcom、Marvellとの競争が次世代へ

光DSP市場では、MaxLinearはBroadcomやMarvell Technologyと競争する。未来アセット証券の2026年6月16日付調査では、Marvellの既存800G DSP市場でのシェアは約80%と推計されている。

Broadcomは3月11日、3nmプロセスを採用する光PAM4 DSP「Taurus BCM83640」を発表した。光回線側で1レーン当たり400Gbpsに対応し、1.6Tトランシーバーを対象とする。発表時点では、先行顧客や提携先へのサンプル提供を開始していた。

Marvellも3月12日、3nmの1.6T光DSP「Ara」などの製品群の拡充を発表した。同社によると、Araは世界の顧客向けに大量出荷されている。MaxLinearにとっては、Keystoneでの省電力性能や顧客との技術連携を、Rushmoreなど次世代製品の採用につなげることが競争上の焦点となる。

市場全体でも高速化が進む。調査会社LightCountingによると、800G PAM4チップセットの出荷量は2025年にほぼ3倍となった。同社は2026年の800G光トランシーバー出荷量がさらに2倍超となり、1.6Tも2025年の小規模な出荷から数千万ポートへ拡大すると予測している。

関連する接続製品の供給企業には、Credo Technology Group、Astera Labs、Coherentもある。各社の2026年の決算発表では、AI向け接続製品やデータセンター関連製品の需要拡大が報告されている。MaxLinearの事業拡大も、高速接続への投資が続く市場の中で進んでいる。

■生産拡大に備えた前払いと資金確保

第3四半期末の売掛金は前四半期比44%増の7340万ドル(約115億円)、前払費用・その他流動資産は同60%増の1億2160万ドル(約191億円)だった。在庫は前四半期末の1億550万ドル(約166億円)から1億1370万ドル(約179億円)に増加した。販売の拡大とともに、運転資本への資金投入も増えている。

キャッシュフロー計算書では、第3四半期の前払費用・その他資産の増加による資金流出は4570万ドル(約71億7000万円)だった。Steven Litchfield最高財務責任者(CFO)は、データセンター製品の需要増に対応するウエハーの多額の前払いを行ったと説明し、2027年を通じた確定受注残にも言及した。第3四半期の営業キャッシュフローは1360万ドル(約21億4000万円)の流出となった。

四半期末の現金・現金同等物は8110万ドル(約127億円)で、前四半期末の6480万ドル(約102億円)から増加した。長期債務は1億6410万ドル(約258億円)だった。同社はWells Fargoなどとの融資契約を変更し、リボルビング融資枠を7000万ドル(約110億円)増額して総額2億ドル(約314億円)とし、資金調達の余力を広げた。

第4四半期の全社売上高は2億4000万〜2億6000万ドル(約377億~408億円)を見込む。売上総利益率の予想はGAAPで58〜61%、非GAAPで59〜62%、営業費用はGAAPで9600万〜1億100万ドル(約151億~159億円)、非GAAPで6500万〜7000万ドル(約102億~110億円)とした。10月22日の決算説明会の録画・録音は、同社の投資家向けサイトで11月5日まで公開される予定だ。

元記事: MaxLinear Raises AI Data Center Outlook Third Time as Revenue Surges 72%

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