『クワイエット・プレイス』第3作でエメットの兄弟役が判明 聴覚と脳科学から読むシリーズ

2026年10月22日 23:47

『クワイエット・プレイス』の本編第3作『A Quiet Place Part III』で、ジャック・オコンネルがキリアン・マーフィー演じるエメットの兄弟を演じることが明らかになった。2026年10月22日時点の全米公開予定日は2027年7月30日だ。家族の物語が広がる新作を前に、シリーズの音と沈黙の表現には、現実の感覚研究から読み解ける興味深い共通点がある。

■オコンネルが明かした兄弟役

オコンネルはニューポートビーチ映画祭でColliderの取材に応じ、「キリアンと僕は兄弟を演じている」と語った。10月21日付のDread Centralもこの発言を報じ、オコンネルが撮影現場の雰囲気を家族のようだったと振り返ったことを紹介している。

エメットは『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2021年)に登場した、アボット家の知人だ。妻子を失い、他人との関わりを避けて暮らしていたが、リーガンとの行動を通じて再び誰かを守る役割を引き受けていく。兄弟という関係は、この人物の過去と家族観に新たな奥行きを与える。

映画.comによると、オコンネルの参加は2026年3月、ジェイソン・クラーク、ケイティ・オブライアンらとともに発表された。映画情報サイトComicBookMovieは5月、撮影現場の写真に写るオコンネルの衣装について、米州兵のように見えると紹介している。

監督、脚本、製作を務めるのはジョン・クラシンスキーだ。Bloody Disgustingは5月10日、本人の投稿を受けて撮影開始を報じた。その後、THE RIVERが8月28日に掲載した独自インタビューで、エミリー・ブラントは撮影を終えたと明かしている。

■続投するアボット家と新たな出演者

新作は、前日譚『クワイエット・プレイス:DAY 1』(2024年)を含めるとシリーズ4本目に当たる。『DAY 1』ではマイケル・サルノスキが監督を務めており、クラシンスキーは本編の続編で再びメガホンを取る。

Bloody Disgustingが報じた出演者には、エヴリン・アボット役のブラント、リーガン役のミリセント・シモンズ、マーカス役のノア・ジュープ、エメット役のマーフィーが名を連ねる。聴覚障害のあるシモンズが演じるリーガンと、その人工内耳に関連する装置は、これまでの物語でも重要な役割を果たしてきた。

新たに加わるクラークは『オッペンハイマー』にもマーフィーと出演している。オブライアンは『愛はステロイド』『ランニング・マン』などで知られる。また、Bloody Disgustingの作品データベースには、『DAY 1』でホスピスの看護師ルーベンを演じたアレックス・ウルフも出演者として掲載されている。

オコンネルとマーフィーは、ニア・ダコスタ監督の『28年後... 白骨の神殿』(2026年)にも出演した。異なる終末世界を描くシリーズに参加してきた2人が、今回は兄弟という関係を担うことになる。

■音を頼りに世界を捉える生物たち

シリーズの怪物は、視覚ではなく鋭い聴覚を頼りに人間を襲う。Inverseが紹介したEmpireのポッドキャストで、クラシンスキーは、光のない惑星で進化し、音で狩りをする生物という発想を説明していた。環境に応じて特定の感覚が発達するという点は、地球の動物を考える手掛かりにもなる。

メンフクロウ(Tyto alba)は、暗闇でも獲物が立てる音を利用して位置を探る。研究では約1度という精度の音源定位も報告されている。左右の耳に届く音の時間差や強さの差、顔を囲む羽毛の働きが、水平方向と垂直方向の位置の把握を支える。

コウモリやイルカは、自ら発した音の反響を利用する反響定位を発達させた。東京大学の解説でも、系統的に離れた動物が似た能力を独立に獲得する収斂進化の例として紹介されている。怪物が獲物の音を聞き取る描写と合わせて考えると、音から周囲の構造を読み取る方法の多様さが見えてくる。

実験室では、コウモリが標的の構造の1ミリ未満の違いを識別した研究がある。イルカでも、金属製の筒の壁の厚さについて0.3ミリ未満の違いを聞き分けた実験が紹介されている。反響音には、対象までの距離に加え、形状や材質についての情報も含まれる。

触覚に目を向けると、ホシバナモグラ(Condylura cristata)にも特徴的な感覚の使い方がある。ヴァンダービルト大学の研究室によると、鼻先には約2万5000個の触覚器官があり、詳しく物を調べる部位には、その大きさに比べて広い大脳皮質の領域が割り当てられている。こうした例は、怪物の耳や頭部の造形に、感覚への特化という生物学的なイメージを重ねる補助線になる。

■人工内耳とフィードバックを読み解く

『クワイエット・プレイス』(2018年)の終盤では、リーガンの人工内耳に関連する装置が発する高い音に怪物が反応し、頭部の装甲が開いて弱点が露出する。『破られた沈黙』では、その音をラジオ放送で届ける作戦へと発展する。身近な機器の予期せぬ出力を発見し、共有可能な手段へ変える展開だ。

現実の補聴器に生じるハウリングは、増幅した音がマイクに戻り、再び増幅される循環によって起きる。音響フィードバックを扱った研究では、2000~5000ヘルツ付近が典型的な発生帯域として挙げられている。発振の条件は、機器の増幅設定や音の漏れ方などによって変わる。

人工内耳は、マイクで受けた音を処理し、埋め込んだ電極を通じて聴神経を電気的に刺激する。米国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)は、音を増幅する補聴器と、損傷した耳の部分を迂回して刺激を届ける人工内耳の仕組みを、それぞれ説明している。

人工内耳の信号処理にも、周波数ごとに情報を分ける工程がある。2024年の学術論文では、標準的なシステムについて、およそ200~8000ヘルツの入力を12~22の周波数チャンネルで分析すると説明している。音を受け取り、分析し、別の出力へ変換するという情報処理の流れは、リーガンが装置の働きを理解し、使い道を見いだす場面を考える手掛かりになる。

強い音が聴覚に影響することも、現実の研究で知られている。NIDCDによると、大きな音は内耳の感覚細胞などを傷つけ、一時的または永続的な難聴を招くことがあり、影響には音の強さや曝露時間、音源との距離が関わる。音を遠くへ方向を定めて届ける技術にはLRADもあり、開発企業Genasysは、音声メッセージや警告音を伝達する装置として紹介している。

■リーガンの感覚と異種感覚間可塑性

リーガンを中心に置くことで、シリーズは登場人物によって世界の捉え方が変わることを描いてきた。彼女の視点で音が消える演出や、視線と手話で家族が意思を交わす場面は、観客にも視覚情報への注意を促す。ここには、感覚の使われ方に応じて脳の働きが変わる研究と通じる発想がある。

その一つが「異種感覚間可塑性」だ。科学技術振興機構の日本語解説でも用いられる用語で、ある感覚からの入力を失った脳領域が、別の感覚情報の処理に関わるようになる現象を指す。英語ではcross-modal plasticityと呼ばれる。

スティーブン・ロンバー、M・アレックス・メレディス、アンドレイ・クラルが2010年に発表した研究は、先天性の聴覚障害があるネコを対象とした。当時のロンバーの所属はカナダのウェスタンオンタリオ大学だった。聴覚皮質の特定領域を一時的に冷却して働きを抑えることで、優れた周辺視野での位置判断と視覚的な動きの検出に、それぞれ異なる領域が関わることを示した。

人を対象にしたダフネ・バヴェリアらの研究でも、先天性の聴覚障害がある参加者で、周辺視野へ注意を向ける課題の成績や脳活動の特徴が報告されている。こうした研究は、視覚の中でも特定の処理や注意の配分が経験によって変わることを示す。リーガンが周囲を見渡し、視覚情報を頼りに行動する描写には、この観点から注目できる。

家族が使うアメリカ手話(ASL)も、生存を支える共有された技能だ。NIDCDはASLを独自の文法を備えた自然言語と説明し、ギャローデット大学の資料は、空間上の位置や動きで人物と行為の関係を表す仕組みを紹介している。発声を避ける必要がある世界で、家族が以前から育んできた意思疎通の方法が力を発揮する点に、このシリーズの人物描写の豊かさがある。

■家族の絆を考える愛着理論の視点

シリーズの生存戦略は、家族や仲間の関係と結び付いている。アボット家は互いを守るために生活を組み替え、エメットはリーガンを助ける過程で他者とのつながりを取り戻していく。兄弟役の登場は、彼が築いてきた関係に、過去から続く家族の関係を重ねることになる。

この人物像を読む補助線の一つが、ジョン・ボウルビィの愛着理論だ。1969年に始まる著作『Attachment and Loss』などで展開された理論では、身近な他者との関係が安心の拠点となり、自己や他者への期待を形作る「内的作業モデル」が重視される。

シンディ・ヘイザンとフィリップ・シェーバーは1987年、愛着の枠組みを成人の恋愛関係に応用した論文を発表した。親密な関係についての経験や期待が、その後の関係の築き方にも関わるという視点は、他者を避けていたエメットが、リーガンのために行動する変化を考える手掛かりになる。

エメットの物語では、喪失と、新たに誰かを信頼することが重なっている。そこへ兄弟との関係が加わることで、家族を守る責任や、過去を共有する相手との距離がどう描かれるのかが注目点になる。音を抑える生活の中で、表情や身振りがこうした関係を伝えてきたことも、シリーズの特徴だ。

■侵入生態学と、沈黙の後に残るもの

未知の捕食者によって生活環境が一変する設定は、侵入生態学とも接点を持つ。新たな捕食者の定着が、在来種の個体数や食物網に影響する例は現実にもある。シリーズの恐怖は、人間が慣れ親しんだ発声や足音が、突然危険の手掛かりへ変わるところに生まれる。

米地質調査所(USGS)によると、フロリダ州エバーグレーズでは、外来のビルマニシキヘビの定着と哺乳類の大幅な減少が関連付けられている。2012年の研究では、1996~1997年の調査と比べ、2003~2011年の道路調査での遭遇率がアライグマで99.3%、オポッサムで98.9%、ボブキャットで87.5%低下した。

ビクトリア湖でも、導入されたナイルパーチの増加や富栄養化などに伴い、シクリッド類の多様性と個体数が大きく損なわれた。フランス・ヴィッテらの研究者による総説は、固有のハプロクロミス類約200種が絶滅した可能性があるという推計を紹介するとともに、その後に一部の種が回復した経緯も説明している。こうした事例は、新たな捕食者の出現によって従来の暮らし方が通用しなくなるという物語の構造を連想させる。

シリーズは、その環境変化を異なる場所と時点から描いてきた。第1作は静かな田舎での家族生活、第2作は外の世界への移動と島の生存者たち、『DAY 1』は襲来初日のニューヨークを舞台とする。第2作では怪物が泳げないことが島の安全につながり、ラジオがリーガンの発見を離れた場所へ伝える手段となった。

さらに、沈黙を守り続けた人々が、安全や日常をどう取り戻すかという問いも、この世界を考える余地を広げる。米退役軍人省の国立PTSDセンターは、心的外傷の後には音や景色への強い反応や、過度の警戒が生じる場合があると説明している。音が脅威の合図となった登場人物たちを、このような経験と記憶の観点から見ることもできる。

新作で明らかになった兄弟という関係は、そうした世界を生きるエメットの人物像に新たな焦点を加える。家族のつながり、感覚の使い方、発見を他者へ伝える工夫というシリーズの要素が、次の物語でどう組み合わされるかが見どころとなる。

元記事: A Quiet Place Part 3 Biology Audit: Cochlear Feedback & Cross-Modal Plasticity Both Hold Up

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