米「公共負担」規則に22州と主要都市が提訴 公的給付の利用を広く審査へ

2026年9月16日 19:12

米国で、移民当局が永住権などの申請を審査する際、公的給付の利用を従来より幅広く考慮できるようにする「公共負担」規則を巡り、22州と首都ワシントン、主要都市などが連邦政府を相手取って相次いで提訴した。規則は2026年9月18日に発効する予定で、原告側は給付の利用資格を持つ移民世帯にも広範な萎縮効果が及ぶとして、規則の無効化と差し止めを求めている。

■公的給付の利用を広く考慮する新規則

「公共負担」は、将来、政府の支援に依存する可能性が高いと判断された外国人について、米国への入国や合法的永住者への在留資格変更を認めない根拠となる制度である。米国の移民法では、担当官が申請者の年齢、健康状態、家族状況、資産や経済状態、教育、技能などを考慮することが定められている。

国土安全保障省(DHS)は2026年7月、バイデン政権が2022年に導入した公共負担規則を撤廃する最終規則を公表した。2022年の規則では、審査対象となる公的給付を主に所得維持のための現金扶助と政府負担による長期施設入所に限定し、メディケイドや食料支援など多くの非現金給付を対象外としていた。

新たな枠組みでは、米市民権・移民局(USCIS)の担当官が、申請者本人による所得要件付き公的給付の利用を「状況全体」の一要素として考慮できる。対象には、所得維持を目的とする現金扶助のほか、住宅支援、補足的栄養支援プログラム(SNAP)、大学向け学資援助、これらに類する給付が含まれる。

2026年9月18日より前に受給した給付については、2022年規則と同様、所得維持のための現金扶助と政府負担による長期施設入所に限って考慮される。一方、同日以降に受給する所得要件付き給付は、より広く審査材料となり得る。

給付の利用だけで申請が自動的に不許可になるわけではない。担当官は法定要素や収入、資産、扶養宣誓書などの証拠を総合し、申請者が将来公共負担になる可能性を個別に判断する。どの給付をどの期間、どの程度利用すれば不許可になるという一律の基準は設けられていない。

公共負担の判断は、該当する在留資格で永住権への変更を申請する人などが対象となる。難民や亡命者、人身取引の被害者、特定の犯罪被害者、女性に対する暴力防止法に基づく自己申請者、特別移民少年など、法律で定められたカテゴリーは対象外となる。

■給付を控える萎縮効果をDHSも想定

新規則は、公的給付そのものの受給資格を変更するものではない。一方、DHSは最終規則の規制影響分析で、移民本人に加え、米国市民を含む複在留資格世帯の構成員が、将来の移民審査への影響を懸念して給付から離脱したり、新たな申請を見送ったりする可能性を認めている。

DHSは、こうした給付離脱や未申請によって、連邦政府と州政府から個人への給付移転が年間約130億5000万ドル減少する可能性があると試算した。内訳は連邦分が約77億1000万ドル、州分が約53億4000万ドルである。10年間の非割引ベースでは、減少額を合計約1304億5000万ドルと見積もっている。

これらは給付をやめる人数を直接示す推計ではなく、対象世帯や給付額、離脱率など複数の仮定に基づく金額ベースの試算である。DHSも、メディケイドやSNAPを巡る別の制度変更など、規則以外の要因によって実際の加入状況や金額が変わる可能性があるとしている。

DHSはまた、申請者本人ではなく家族が受け取る給付は、限られた場合を除いて本人の公共負担審査では考慮しないとの方針を示している。それでも原告側は、制度の複雑さや担当官に与えられる裁量の広さによって、規則の対象ではない家族まで必要な医療、食料、住宅支援を避ける可能性があると主張している。

■22州と主要都市が並行して提訴

ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズが率いる22州と首都ワシントンは9月14日、ニューヨーク南部地区連邦地裁に訴訟を起こした。原告にはカリフォルニア、コロラド、コネティカット、デラウェア、ハワイ、イリノイ、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ネバダ、オレゴン、ペンシルベニア、ロードアイランド、バーモント、バージニア、ワシントン、ウィスコンシンの各州が加わった。

これとは別に、ニューヨーク市はシカゴ、サンフランシスコ、シアトル、サンタクララ郡、キング郡、公益訴訟団体のパブリック・ライツ・プロジェクトとともに、同じ連邦地裁へ訴訟を起こした。

原告側は、新規則が公共負担の範囲を不当に広げ、どの公的給付がどの程度審査に影響するかについて十分な基準を示さないまま、担当官へ過度に広い裁量を与えていると主張する。また、給付からの離脱によって州や自治体が連邦資金を失うほか、医療や食料支援を避ける住民が増え、地域の公衆衛生や財政にも負担が生じるとしている。

訴訟では、DHSが行政手続法に違反したことも争点となる。原告側は、DHSが規則による予見可能な影響を十分に考慮せず、規則案に寄せられた反対意見に適切に対応しなかったと主張している。DHSによると、規則案と関連する情報収集には合計8846件の意見が寄せられ、その大半が反対だった。

一方、DHSは最終規則で、寄せられた意見を検討し、2022年の枠組みが移民法の趣旨に比べて過度に制限的だったと説明した。同省は、公共負担の判断は本来、個々の申請者の事情に即して行うべきであり、担当官が関連する事実を幅広く評価できるようにする必要があるとしている。

USCISも、新規則は移民法が求める自立の原則に沿うものだと説明する。担当官は、公的給付の利用だけで結論を出すのではなく、法定要素を含む関連証拠を総合して、申請者ごとに判断するとしている。

■2019年規則を巡っても法廷闘争

第一次トランプ政権は2019年、SNAPや一定のメディケイド、住宅支援などの非現金給付も公共負担の審査対象に含める規則を導入した。この規則には複数の連邦地裁が仮差し止めを命じたが、連邦最高裁は2020年1月、訴訟が続く間の差し止めを解除し、規則の施行を認めた。

第7巡回区連邦控訴裁判所はその後、2019年規則について、DHSの説明や制度設計に問題があり、行政手続法が禁じる恣意的または専断的な行政行為に当たるとの判断を示した。ただし、最高裁は2019年規則の適法性について最終的な実体判断を示していない。

バイデン政権は2021年、2019年規則の防御を取りやめ、同規則は失効した。2022年には、審査対象となる給付を限定した新たな規則が導入されたが、今回の最終規則によって撤廃される。

2026年規則は、2019年規則の数値基準をそのまま復活させるものではない。特定の給付を一定期間利用すれば不利になるという固定的な基準を設けず、担当官による個別判断を重視している。この裁量の広さを移民法に沿った仕組みとみるか、判断基準を不明確にするものとみるかが、今回の訴訟の中心的な争点となる。

■9月18日の発効を前に差し止め求める

原告の州と自治体は、規則の無効化と執行の差し止めを求めている。9月15日時点で規則は9月18日に発効する予定であり、裁判所が発効前に一時的な差し止めを命じるかが当面の焦点となる。

規則は、9月18日以降に行われる入国申請と、同日以降に郵送または電子提出される該当の在留資格変更申請に適用される。USCISは、給付の利用だけでは公共負担との判断は決まらず、申請者の年齢、健康、家族状況、資産、経済状態、教育、技能などを含む事情全体を審査するとしている。

新規則の対象となる可能性がある人にとっては、本人が受けている給付の種類や時期、申請する移民カテゴリーによって扱いが異なる。訴訟によって発効日や適用内容が変わる可能性もあるため、個別の給付利用や申請への影響は、最新の公的情報と専門的な法律相談に基づいて確認する必要がある。

元記事: DHS Projects 950,000 Will Drop Benefits in Fear Before Public Charge Rule Denies One Green Card

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