ロッキード・マーティン、無人戦闘機「Vectis」を自己資金で5機に拡大 2027年初飛行へ

2026年9月15日 18:03

米ロッキード・マーティンの先進開発部門スカンクワークスは、自律型無人航空機「Vectis」の開発機を計5機に増やす。最初の試作機に加えて4機を追加し、試験の拡大と生産工程の検証を進める。米空軍からVectisの機体開発・生産契約を獲得したわけではなく、開発費は同社が自己資金で負担する。

同社は9月14日、メリーランド州ナショナルハーバーで開催されたAir, Space & Cyber Conferenceに合わせて計画の拡大を発表し、Vectisの実物大模型を初公開した。最初の試作機は2027年末までの初飛行を予定しており、追加する4機の開発作業もすでに始まっている。

■有人戦闘機と連携する自律型無人航空機

Vectisは、有人戦闘機と連携して任務を遂行するCollaborative Combat Aircraft(CCA、協働戦闘機)市場を想定した自律型無人航空機である。単独での運用に加え、F-35などの有人機と連携し、空対空、空対地、情報・監視・偵察といった複数の任務に対応する構想だ。

ロッキード・マーティンはVectisを、最大離陸重量が1,320ポンド(約599kg)を超え、高度1万8,000フィート(約5,486m)以上で運用される米国の「グループ5」に分類している。今回公表された機体は全長約34フィート(10.4m)、翼幅約38フィート(11.6m)で、無尾翼の構成を採る。

詳細な航続距離、搭載量、レーダー反射断面積などは公表されていない。同社は、生存性、任務の柔軟性、相互運用性、取得可能な価格の両立を設計目標としている。

■無尾翼と上面吸気口を採用

Vectisの外形は、2025年9月の初公表時に示された画像から変化している。今回の実物大模型では、垂直尾翼を持たない機体形状と、胴体上面に埋め込まれた吸気口が明確になった。

無尾翼構成は、レーダー波を反射しやすい垂直面を減らす設計に通じる。ただし、実際の被探知性は機体形状だけで決まるものではなく、素材、接合部、吸気系、排気系、搭載物などを含む機体全体の設計に左右される。ロッキード・マーティンはVectisの具体的なステルス性能を明らかにしていない。

スカンクワークスの責任者であるRon Fehlenは、上面吸気口について、機体前方の抗力を抑えて性能と航続距離の向上につなげる狙いがあると説明した。滑走路から巻き上がる異物や水分を吸い込む危険を減らし、設備の限られた拠点で運用しやすくする効果も見込んでいる。

公開された模型と映像からは機内兵器庫の存在も確認できる。兵器やセンサーを機内に収める構成は、外部搭載物によるレーダー反射の増加を抑える設計と整合する。一方、具体的な兵装や搭載量について同社は公表していない。

■試作機にはFJ44-4ターボファン

最初のVectis試作機には、Williams InternationalのFJ44-4ターボファンエンジンを搭載する。ロッキード・マーティンによると、同エンジンは3,600重量ポンドを超える推力を発生する。

FJ44系列は小型ビジネスジェットなどで使用実績のあるエンジンである。スカンクワークスは、新規エンジンを同時開発するのではなく、成熟した動力系を採用することで、試作機の開発リスクを抑え、初飛行までの期間を短縮する方針だ。

同社はVectisを2027年に初飛行させる計画を示しているが、量産型のエンジンを確定したとは発表していない。韓国のHanwhaが開発するHAF4500も将来の換装候補として報じられているものの、採用決定には至っていない。

■追加4機で試験と生産工程を加速

ロッキード・マーティンによると、追加する4機は飛行試験の規模を広げるとともに、生産工程を実機で検証するために使用する。同社は初号機で得た知見を反映し、後続機をより短期間で製造・飛行させる考えだ。

開発では、デジタル設計や生産技術を活用している。同社発表では、最初の構想図から2カ月未満で風洞試験に進み、6カ月で最初のデジタル機体を構築し、8カ月で最初の実部品を製造工程へ移したという。これらは同社が公表した開発実績であり、追加機の完成時期や飛行日程はまだ示されていない。

5機への拡大は、特定の契約に基づく増産ではない。市場投入前の段階で複数の機体を自社資金により製造し、設計だけでなく試験能力や生産性も示そうとする先行投資である。

■米空軍はFQ-42とFQ-44を量産へ

米空軍のCCA Increment 1では、General AtomicsのFQ-42とAnduril IndustriesのFQ-44が選ばれている。米空軍は2026年6月、両社に技術・製造開発および生産契約を授与した。試作段階で使われていたYFQ-42AとYFQ-44Aの呼称から「Y」が外れ、量産段階のFQ-42、FQ-44となった。

米空軍は9月14日、FQ-42の正式名称を「Vengeance」、FQ-44を「Fury」と発表した。2030年末までに両機種を合わせて150機を超える戦闘対応CCAを調達し、2032年までに500機を保有する方針も示している。長期的には約1,000機のCCAを導入する構想だ。

このため、Vectisは現在進行中のIncrement 1量産機を争う立場にはない。ロッキード・マーティンは、将来の米軍需要に加えて、米海軍やF-35を運用する同盟国なども潜在市場として見込んでいる。ただし、今回の発表時点で顧客や具体的な調達計画は公表されていない。

■生存性を重視した設計で将来需要を探る

CCAを巡っては、低価格な機体を多数配備する考え方と、より高いステルス性や生存性を持たせる考え方のどちらを重視するかが論点になっている。ロッキード・マーティンは、安価な機体であっても高い損失率を前提にすれば、継続的な補充によって全体の費用が膨らむと主張してきた。

Vectisは、低被探知性や任務からの帰還可能性を重視する同社の考え方を反映した機体である。ただし、価格、ステルス性能、航続距離、搭載量など、他機種と客観的に比較するために必要な数値はまだ公表されていない。

米空軍はIncrement 1でFQ-42とFQ-44の双方を量産する決定を下したが、将来のCCAがどのような性能と価格の組み合わせを求めるかは、今後の要求や運用評価によって変わり得る。Vectisが米軍の将来調達に加わることができるかも、現時点では確定していない。

ロッキード・マーティンは正式な機体契約を待たず、Vectisを計5機に増やすことで、2027年の初飛行後に複数機を使った試験と生産工程の成熟を速めようとしている。今回の投資は、ステルス性と生存性を重視したCCAに将来の需要が生まれると見込む、同社の長期的な判断を示すものとなる。

元記事: Lockheed Martin Vectis Drone: Skunk Works Self-Funds 5 Stealth Aircraft

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