日経平均が史上初の7万2000円突破、米市場を凌駕する日本のAIインフラ投資の波

2026年6月22日 19:06

日経平均株価が史上初めて7万2000円の大台を突破した。米国株が下落する中で日本株が上昇するこの「デカップリング」の背景には、グローバル投資家による日本のAIインフラへの積極的な資金シフトがあるとみられる。ゴールドマン・サックスのデータによると、2025年4月以降、海外投資家は約16兆円(原文では約1000億ドル、1ドル=162円換算で約988億ドル)もの資金を日本株に投入している。

■日銀利上げを跳ね除け、2週間で3000ポイント超の上昇

2026年6月22日の東京株式市場で、日経平均株価は史上初めて7万2000円の大台を突破し、76年の歴史の中で最高値を更新した。同日に米国株式市場が下落したことからも、この上昇は一時的なものではなく、構造的な資金移動を反映しているとみられる。グローバル投資家は、日本のAIインフラ構築を現在のAI投資サイクルにおいて最も直接的な恩恵を受ける投資機会と捉え、資金を移動させている模様だ。

市場の急上昇は6月中旬から本格化した。6月14日に発表された米国・イラン間の和平合意枠組みをきっかけに、翌15日の日経平均は4.99%急騰。その後、6月16日に7万円、18日に7万1000円を突破し、22日には7万2000円に迫る勢いを見せた。わずか2週間足らずで3000ポイント以上上昇したことになる。特筆すべきは、日銀が6月16日に政策金利を1995年以来の最高水準となる1.00%に引き上げたにもかかわらず、株価の上昇基調が揺るがなかった点である。

■日経平均の「株価平均型」という構造がAI投資を増幅する理由

日経平均がAI関連の設備投資にこれほど敏感に反応するのは、その指数算出方法に理由がある。時価総額加重平均を採用する米国のS&P 500とは異なり、日経平均は構成銘柄の株価そのものを基準とする「株価平均型(プライス・ウエート)」の指数である。そのため、株価の高い特定の銘柄(値がさ株)が指数全体に与える影響が極めて大きい。

2026年6月中旬時点で、半導体製造装置大手の東京エレクトロン(TYO: 8035)は、日経平均の構成比率の約10%を占めている。同社は、最先端半導体製造に不可欠なコータ・デベロッパー(塗布現像装置)分野で世界シェア90%を誇る。Microsoftが日本への100億ドル(約1兆6200億円、1ドル=162円換算)のAIデータセンター投資を発表したり、世界各地で新たな半導体工場(ファブ)が着工されたりすると、その需要は直接同社の受注残高に反映される。この構造こそが、グローバルなAIインフラ投資が日経平均を大きく押し上げる要因となっている。

東京エレクトロンに加え、ファクトリーオートメーション(FA)大手のキーエンスや、ロボット・工作機械大手のファナックなど、AI関連の重量級銘柄が日経平均を牽引している。これらの企業は、大規模なデータセンターや半導体工場の建設に伴う、AI統合型生産ラインの拡張から直接的な恩恵を受ける立場にある。

■数字で見る日本のAIインフラ投資の急拡大

日本国内への資金流入は、市場のトレンドを単独で変えるほどの規模に達している。調査会社IDCの分析によると、日本の国内AIインフラ支出は2026年だけで55億ドル(約8910億円、1ドル=162円換算)を超え、2022年比で7倍に急増する見通しである。さらに2028年までには、AIインフラ支出が非AIインフラ支出を初めて上回ると予測されている。

米IT大手の投資も活発だ。Microsoftは2026年から2029年にかけて日本に100億ドル(約1兆6200億円、1ドル=162円換算)を投じることを確約し、ソフトバンクやさくらインターネットと提携して、データを国内に留める「ソブリンAI」インフラの構築を進めている。これは高市早苗政権の優先事項でもある。また、Amazon Web Services(AWS)は2027年までに2.3兆円(約142億ドル、1ドル=162円換算、原文では約152億ドル)の投資を確約しており、Google Cloudも日本国内のデータセンターインフラを拡大し続けている。

この巨額の資金流入は、サプライチェーン全体に波及効果をもたらす。データセンターには冷却システム、ネットワーク機器、電力インフラ、専門的な建設、そしてサーバー内のチップを製造するための装置が必要であり、日経平均の構成銘柄にはこれらの各レイヤーを代表する企業が揃っている。日経平均を買うことは、AIインフラのバリューチェーン全体に投資することと同義と言える。

■国策半導体「ラピダス」の2nm挑戦が示すもの

日本の構造的な投資価値を支えているのが、2027年までに2ナノメートル(nm)ロジック半導体の量産化を目指す国策会社「ラピダス(Rapidus)」である。経済産業省によると、政府によるラピダスへの累計支援額は2027年度末までに3兆円(約185億ドル、1ドル=162円換算、原文では約19億ドル)を超える見通しだ。政府は2026年2月に2676億円、4月に6315億円の追加支援を承認し、6月5日にはさらに1500億円の出資を行った。

ラピダスは、TSMCやサムスンが2025年末に量産を開始した世代と同じ「GAA(ゲート・オール・アラウンド)」ナノシートトランジスタ技術を採用している。GAAは従来のFinFET構造に比べ、優れた静電制御を可能にし、最先端AIプロセッサーのリーク電流を低減する。IBMのプロトタイプでは、2nmチップは7nmチップと比較して性能が45%向上、または消費電力を75%削減できることが実証されている。

ラピダスはTSMCと生産量で競うのではなく、地政学的に独立した最先端ロジック半導体の供給源としての地位確立を目指している。北海道千歳市の「IIM-1」工場の目標生産能力は月産2万5000枚(ウェーハ換算)と小規模だが、台湾一極集中を避けたい半導体設計企業にとって重要な選択肢となる。同社は2025年4月からパイロットラインを稼働させ、同年7月には2nm GAAトランジスタの動作確認に成功している。

商業的な成功にはまだ数年を要し、TSMCやサムスンに対する2年の遅れは大きな課題である。ブルームバーグが「成功の可能性が低いプロジェクト」と評するように、顧客獲得が最大の懸念材料だが、市場にとってラピダスは、日本が単なる装置サプライヤーではなく、最先端半導体の製造国としての信頼性を示す象徴として機能している。

■利上げでも止まらない株高と地政学的プレミアム

日銀が6月16日に政策金利を1.00%に引き上げた際、通常の金融理論では円高を招き、輸出企業の業績を圧迫して株価を下押しすると予測された。しかし、日経平均は利上げ当日に史上初めて7万円を突破した。その理由は、利上げ後も1ドル=160円前後という歴史的な円安水準が維持されており、トヨタやソニー、ファナックなどの輸出企業の円建て換算業績を押し上げ続けているためである。さらに、かつて円キャリートレードで米国資産に向かっていた海外資金が、日本のAIインフラ成長のファンダメンタルズを評価し、日本株へ直接投資する構造変化が起きているとみられる。

米国の大手テック株がすでに数年分のAIプレミアムを株価に織り込んでいるのに対し、日本市場は設備投資が本格化する初期段階にあり、今後の安定的な収益拡大が期待されている。また、地政学的な観点からも、半導体製造装置(東京エレクトロン、信越化学工業)、ロボット技術(ファナック、キーエンス)、そして最先端ロジック半導体の製造(ラピダス)という複数のレイヤーを国内に有する日本は、台湾や韓国以外で唯一無二の存在感を放っており、その地政学的プレミアムが株価をさらに押し上げている。

■注目ポイントQ&A

●2026年6月に日経平均が史上最高値を更新している理由は?

主に3つの要因が重なっています。第一に、6月14日に発表された米国・イラン間の和平合意枠組みにより、原油価格下落への期待からアジア市場全体で買い安心感が広がったこと。第二に、MicrosoftやAWSなどによる巨額のAIデータセンター投資により、日本がグローバルなAIインフラのハブとなり、日経平均への影響力が大きい半導体製造装置メーカーなどの業績期待が高まったこと。第三に、日銀が6月16日に利上げを行ったものの、1ドル=160円前後の歴史的な円安水準が維持され、輸出企業の業績を支えていることです。

●AIインフラ投資はなぜ日経平均株価を特に押し上げるのですか?

日経平均が「株価平均型(プライス・ウエート)」の指数だからです。株価の高い銘柄の影響力が大きくなる仕組みになっており、コータ・デベロッパー分野で世界シェア90%を誇る東京エレクトロン1社で、指数全体の約10%のウェイトを占めています。国内外でのAI半導体工場やデータセンターへの投資は、同社の製造装置への需要に直結するため、日経平均は他の主要指数と比べてAIインフラ投資の恩恵を非常に強く受けやすい構造になっています。

●ラピダスとはどのような企業で、なぜ注目されているのですか?

北海道千歳市に工場を構え、2027年までに2ナノメートル(nm)の最先端ロジック半導体の量産化を目指す、日本政府支援の半導体企業です。政府は累計で3兆円規模の支援を計画しています。TSMCやサムスンに生産量で対抗するのではなく、地政学的なリスクを回避したい半導体設計企業向けに、多品種少量・短納期で最先端チップを供給するビジネスモデルを目指しています。顧客獲得などの課題は指摘されていますが、日本の半導体製造業復活の象徴として投資家から注目されています。

●日銀の利上げは日本株にどのような影響を与えていますか?

通常、利上げは円高を誘発し株価にマイナスに働くとされますが、6月16日の1.00%への利上げ当日も日経平均は上昇し、初めて7万円を突破しました。これは、利上げ後も1ドル=160円前後の円安が維持されていることに加え、単なる低金利(円キャリートレード)頼みではなく、AIインフラ投資という実需に基づいた海外からの直接投資が日本株に流入しているためと分析されています。ただし、今後のさらなる利上げが市場に与える影響は、2026年後半の主要なリスク要因として注視されています。

元記事: Nikkei 225 Crosses 72,000 as Japan’s AI Infrastructure Wave Outpaces US Markets

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