太陽化学が商圏を病院・介護施設に拡げた背景

2018年11月1日 19:54

 太陽化学は一口で言うと「研究開発型食品素材メーカー」。事業部門は、以下の3つに分かれる。

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『ニュートリション事業』: 緑茶関連商品、水溶性食物繊維など機能性食品素材や多価不飽和脂肪酸(体内で合成できない必須脂肪酸)の製造・販売。
『インターフェイスソリューション事業』: 界面コントロール技術を駆使した乳化剤・乳化安定剤・乳化製剤や乳化食品。増粘安定剤などの製造販売。
『アグリフード事業』: 蛋白素材・加工食品用改質剤・即席食品用素材や卵白加工品・乾燥食品・フルーツ加工品・農産加工品などの製販。

 1946年(昭和21年)創立の同社はいわば、戦後とともに歩みながらその存在感を高めてきた。そんな太陽化学を取材し記事にしたいと思った契機は「病院や介護市場向け植物繊維商品の出荷量でNO1」という事実を知ったことだった。同社は30年前に植物繊維の研究を「素材として使いやすく加工できる」を主眼に開始した。そして現在、その商圏は世界30カ国以上に及んでいる。

 前記の件の商品名は「サンファイバー」。「下剤に頼らない、排便コントロール応援食品」「サッと溶けて、飲み物や料理の味を変えない」「不足しがちな水溶性食物繊維を5g補給できる」「一般的植物繊維より腸内フローラ状態のエサとなりやすい高発酵性微生物群(プレバイオティクス)」と説明されても、限りなく化学音痴の私には「?」。

 問い合わせにメディケア事業メディケアグループの担当者が、以下の様に噛み砕いてくれた。

「原料は、インドやパキスタンの乾燥地域に生息するグアー豆。グアー豆が体によい食材であることは知られていた。が、難点があった。水に溶かそうとすると、少量の水でも非常に高粘度になる。この問題を解決する必要があった。研究を進めた。至ったのが酵素(グアーガム酵素分解物)で分解する方法だった。これでサンファイバーの製品化が可能になった。研究の過程でグアー豆には腸の炎症(炎症性腸疾患)を抑制する効果があることが分かった。そこで商圏として病院や介護施設に照準をあてた。排便に困っている方々から効果を認めて頂いた。結果4500以上の施設に納品する状況になった」。

 ところで、周知の通りいまや「株主優待策」ブーム。だが同社は昨年「停止」策を打ち出した。その際のリリースからは「より利益水準に即した株主還元策に軸足を定める」という方向性が伝わってきた。ちなみに前3月期の配当は50円。基準普通配10円+利益還元配10円+創立70周年記念配30円、という次第。今後についても基本&利益還元配で「配当性向30%超」を、順公約としている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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