マイクロン、2030年にHBM6量産を目標 AIメモリの年次計画を公開

2026年10月25日 16:47

米半導体大手マイクロン・テクノロジーは10月21日、AI向けの広帯域メモリ(HBM)について、2030年まで毎年の世代更新を目指すロードマップを公開した。HBM4Eを2027年、HBM5を2028年、HBM5Eを2029年、HBM6を2030年に量産する目標を掲げた。

DRAMの製造技術では、既存の6F²型メモリセルの改良と3D DRAMの開発を進め、4F²型は複雑性とコストを理由に採用しない方針を示した。中国の長鑫存儲技術(CXMT)が4F²を用いたサーバー用メモリの年内投入を目指すなか、各社の技術選択の違いが鮮明になっている。

■AIの長文処理で増すメモリの役割

ウェビナーには、マイクロンのスコット・デボア社長兼最高技術・製品責任者が登壇した。同社は、AIの学習に加え、推論や複数の作業を実行するAIエージェントの普及により、メモリの容量、帯域幅、電力効率への要求が高まっていると説明した。

同社資料は、AIが一度に扱う情報量を示すコンテキスト長の伸びを年30倍、サーバー1台当たりのメモリ搭載量を3年間で2倍とした。GPU当たりのHBM容量はNVIDIAのH100からB300で3.6倍、レベル4以上のロボタクシーのDRAM搭載量は現在のレベル2+車両の10倍超とする比較も示した。いずれも同社が需要拡大の背景として挙げた数値だ。

大規模言語モデルは、文章を生成する際、先に処理した入力に関する計算結果を「KVキャッシュ」として保存し、後続の処理に再利用する。同じモデル構成や保存方式であれば、扱う文脈が長くなるほど、このキャッシュに必要な容量も増える。

回答を順次生成する処理では、モデルの重みやKVキャッシュを繰り返し読み出すため、メモリ帯域幅が処理速度を左右する場合がある。マイクロンは、HBMに加え、低消費電力DRAMやDDRメモリ、SSDを組み合わせ、データの利用頻度や必要な速度に応じて配置する構成を示した。

■HBM4からHBM6へ、年ごとの量産目標

ロードマップには、2026年のHBM4から2030年のHBM6まで、年ごとに異なる製品世代が並ぶ。資料上の日程は量産開始の目標を表しており、時期や性能は変更される可能性があるとしている。

HBM4では、36GBの12段積層品を量産している。同社によると、ピン当たりの転送速度は毎秒11Gb超、1スタック当たりの帯域幅は毎秒2.8TB超で、HBM3Eの2倍以上となる。電力効率は、同程度の動作速度で比較した場合に20%超改善したという。48GBの16段積層品も顧客向けにサンプル提供している。

HBM4Eは10月21日の資料ですでに主要顧客向けのサンプル提供段階に位置付けられており、次の節目は2027年の量産となる。HBMの製品更新には、メモリ自体の開発とともに、組み合わせるAIアクセラレーターの設計や顧客による評価が関わる。

将来世代の想定時期には、研究機関とメーカーで違いもある。コリア・タイムズが2025年6月に報じた韓国科学技術院(KAIST)TERA研究室の構想では、HBM5は2029年、HBM6は2032年が想定されていた。同研究室は、HBM6で複数のメモリスタックを並べて容量を拡張する構造などを検討している。マイクロンが今回示したのは、自社製品の量産目標だ。

■顧客との共同設計と、演算チップ上への積層

マイクロンは、HBM4E以降について「JEDEC規格+カスタム」という方向を示した。共通規格を基盤としながら、顧客の用途に合わせてベースダイの回路や接続方式、パッケージを最適化する。

さらに、演算チップの上にメモリを積む「vHBM(vertical HBM)」と、エッジでの推論に向けた「vEIM(vertical edge inference memory)」をロードマップに加えた。演算回路とメモリの距離を縮め、データ転送に必要な電力を抑えながら帯域幅を高める狙いだ。

現在のHBMは、複数のDRAMダイを積層し、シリコン貫通電極(TSV)で接続する。一般的な構成では、そのスタックをGPUなどの近くに配置し、インターポーザーと呼ぶ配線基板を介して接続する。HBM4では1スタック当たり2048ビットの広いインターフェースを使い、大量のデータを並列に転送する。

こうした構造の進化には、接続端子の微細化や銅同士を接合するハイブリッドボンディング、放熱技術の改良が必要になる。マイクロンは、メモリと演算回路、パッケージ、処理する用途を一体で設計する方針を示した。

■性能向上の試算にはGPU側の条件も

マイクロンは6月のCOMPUTEX 2026で、HBM4を使う構成について、帯域幅が2倍となる条件で大規模言語モデルの推論処理量が2.6倍になるという試算を公表した。

この数値は、同社の社内シミュレーションによる予測だ。比較では、HBM3Eを288GB搭載したシステムに対し、HBM4を同じ288GB搭載し、GPUの浮動小数点演算性能を1.5倍としたシステムを用いている。

AIシステムの性能を引き出すには、メモリ帯域幅や容量に加え、GPUの演算能力との組み合わせが重要になる。長い文脈を保持する用途では容量が、保存した情報を繰り返し読み出す用途では帯域幅が、それぞれ設計上の要素となる。

■HBM増産が汎用DRAMの供給にも影響

HBMの増産は、一般的なサーバーやパソコンが使うDRAMの供給とも関係する。マイクロンは、同じ記憶容量を生産する場合、HBMにはDDR5のおよそ3倍のウエハー生産能力が必要になると説明している。限られた設備をHBM向けに振り向けると、汎用DRAM向けに使える能力が圧迫される。

HBMでは、DRAMダイの製造に加え、薄化や積層、接続、検査などの工程も必要になる。メモリの前工程と先端パッケージングの双方で能力を確保することが、供給拡大の課題となる。

マイクロンの2026年分のHBM供給は、ウェビナー以前に販売契約で埋まっていた。同社は9月30日の決算説明資料で、2027年と2028年のメモリ・ストレージの需給が2026年より一段と逼迫するとの見通しを示した。

調査会社TrendForceも8月4日、2027年のHBMのビット出荷量が前年比50~60%増えても、需要増に追いつかないと予測した。AIチップメーカーにとっては、必要な容量の確保と調達コストの上昇が課題になるとしている。

Wccftechが伝えたGF Securitiesの分析では、NVIDIAのVera Rubin VR200システムは、構成調整を行わない場合、約210万ドルの部材費のうちメモリが約29%を占める可能性があるという。AIサーバーを調達する企業にとって、メモリの仕様や供給条件は、システム全体の価格と納期を左右する要素になっている。

マイクロンは6月24日の決算説明資料で、HBM4の累積出荷売上高が10億ドルを超えたと発表した。供給面では、シンガポールのHBM先端パッケージング施設で2027年初めの生産開始を見込んでおり、能力を段階的に増やす計画だ。

■4F²を追求するCXMT、6F²と3D化を選ぶマイクロン

中国の経済メディア、第一財経によると、CXMTの曹堪宇総裁は10月10日の会議で、4F²型のDRAMを採用する次世代DDR5 RDIMMを2026年末までに投入する計画を示した。RDIMMは、サーバーなどで使うメモリモジュールだ。

DRAMは、基本的にトランジスタとコンデンサーを組み合わせたセルに情報を保存する。Fは最小加工寸法を表し、6F²や4F²はセル面積を示す。同じFで比較すれば、4F²のセル面積は6F²より約3分の1小さく、セル部分だけの理論比較では、同じ面積に配置できる数が1.5倍になる。

第一財経によると、CXMTは独自のVSG(Vertical Surrounded Gate)トランジスタを採用する。チャネルを縦方向に配置し、その周囲をゲートで囲むことで、電流を制御しやすくし、リーク電流や微細化に伴う短チャネル効果を抑えるとしている。

マイクロンは対照的に、6F²の改良を続けながら3D DRAMを開発する。デボア氏はウェビナーで、同社は20年以上にわたり4F²を検討してきたものの、製造の複雑性やコスト、将来の微細化経路を考慮して採用を見送っていると説明した。

同氏が重視するのは、電荷を蓄えるコンデンサーの大きさと配置間隔だ。DRAMの記憶密度を高めるには、トランジスタの構造とともに、コンデンサーや周辺回路を含む全体の設計を最適化する必要がある。マイクロンは、こうした条件を踏まえて6F²と3D DRAMを選択している。

■競争力を左右する歩留まりと顧客評価

4F²の開発には韓国勢も取り組む。サムスン電子は2026年2月の国際固体素子回路会議(ISSCC)で、4F²とハイブリッドボンディングを組み合わせた試作技術を披露した。SK hynixも2025年の公式発表で、4F²の垂直ゲート技術と3D DRAMを将来の技術基盤に位置付けている。

TrendForceによると、CXMTの2026年4~6月期の世界DRAM売上高シェアは9.5%で、前四半期の7.6%から上昇した。サムスン電子、SK hynix、マイクロンに次ぐ4位であり、サーバー向け製品の拡充は競争領域を広げる動きとなる。

ブルームバーグによると、モーニングスターのアナリスト、Jing Jie Yu氏は、4F²を早期に量産へ導入できればCXMTの競争力は大きく改善する一方、製品の披露から採算の取れる歩留まりでの商用化までには相応の時間差を見込んでいる。

米投資情報会社FundstratのKent Fung氏も、CXMTの新構造が従来型サーバーDRAMに競争をもたらす可能性と、AIサーバー向けHBMへの影響を分けて評価している。HBMの供給には、DRAMセルの製造に加えて、積層や接続、パッケージング、顧客による評価への対応が必要になる。

韓国のヘラルド経済は、CXMTの発表を製品投入の予告として捉え、安定した量産と区別する専門家の見方を伝えた。ソウル大学校名誉教授のKim Hyung-jun氏は、EUVを使えず、DUV露光で複数回のパターン形成が必要になることが、歩留まりや競争力の課題になると指摘している。

■製造装置へのアクセスと技術選択

製造装置を利用できる条件も各社で異なる。ロイターによると、オランダのASMLは、中国にEUV露光装置を出荷したことはないとしている。一方、マイクロンはASMLとの複数年のEUV供給契約を公表し、今後のDRAM製造工程で利用を拡大する計画だ。

微細化する寸法を示すFと、セルの配置を示す4F²・6F²は、記憶密度を高める際の異なる要素となる。セル構造の変更は、同じ加工寸法でより多くのセルを配置するための手段となり、露光技術や材料、接合技術の改善と組み合わせて使われる。

ヘラルド経済によると、成均館大学工学部副学部長のKwon Seok-jun氏はSNSで、CXMTの進展が、米国の対中半導体規制によって確保された時間が縮まりつつあることを示すと論じた。装置への制約が続くなか、中国企業がセル構造の変更を量産につなげられるかが焦点となる。

マイクロンは、HBMでは世代更新と顧客との共同設計を進め、DRAMの製造技術では6F²の改良と3D化を並行して追求する。AIシステムの開発・調達では、GPUの演算性能とともに、必要なメモリ容量、帯域幅、電力、供給時期を組み合わせて計画する重要性が高まっている。

元記事: Micron Maps Annual HBM Advances to 2030, Rejects Chinese Density Workaround

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