Alibaba、2027年にTaobao・Tmallの加盟店業務へAI拡大 Qwen WorkのEC版をテスト

2026年10月20日 12:20

Alibabaは、Taobao(淘宝)とTmall(天猫)の加盟店向けに、2027年から社内業務へのAI活用を大きく広げる計画だ。その一翼を担う業務用AIエージェント「Qwen Work」は、複数のECプラットフォームで販売する事業者に向けたEC版の招待テストを中国で始めた。

在庫や広告費の集約、販促素材の生成などを一つの作業環境で進める構想である。中国市場で販売する海外ブランドにとっても、既存システムとの接続方法や、AIに扱わせる業務データの範囲が導入時の検討事項になる。

■2027年に加盟店の社内業務へAI活用を拡大

香港紙South China Morning Post(南華早報)によると、Tmallの劉博総裁は2026年10月15日の「独身の日」商戦に関する説明会で、「来年から、AIは加盟店の企業内の業務プロセスに全面的に入っていく」と述べた。過去1年のAI展開が期待を上回り、加盟店では商品投入、広告、顧客対応などのツールがすでに使われていると説明した。

劉氏は、今後の取り組みを支える重要な製品としてQwen Workを挙げた。同紙は2016年にAlibaba傘下に入った香港の英字新聞である。

Qwen Workの公式更新情報によると、EC版は10月14日に招待テストを開始した。個人版から利用する方式で、EC版の企業版への提供は今後の展開となる。複数のプラットフォームや店舗を運営する販売事業者を対象としている。

Alibaba Cloudの説明では、EC版の経営ダッシュボードは売上、在庫、広告費を集約し、店舗ごとの状況を把握する機能を備える。事業者の目標と直近の実績に基づき、商品、広告、ライブ配信の計画を作成し、進捗や実績の変化を知らせるという。

販促面では、SNS上の話題と商品の訴求点を組み合わせた企画提案や、商品画像、説明用画像、広告文の一括生成を支援する。公式資料には、業務分析ツールのBusiness Advisor、店舗運営ツールのQianniu、広告関連のAlimama Wanxiang Labに加え、Youzan、FastMoss、LinkFoxなどとの連携が記載されている。

■独身の日商戦と並行して進むAI導入

KrASIAによると、Tmallは2026年の独身の日商戦に、過去最多の世界の100万ブランドと7000万点超の商品が参加する見通しを示した。初参加の加盟店は約6万社に上るという。大規模な商戦を控え、AIによる店舗運営支援の拡充が進む。

事前販売は10月15日に始まった。本販売は中国時間10月20日午後8時、日本時間では同日午後9時に開始する予定だ。

Alibabaによると、2025年の独身の日には、TaobaoとTmallのAI顧客対応ツール「Dianxiaomi」が3億件の問い合わせを処理した。2026年3月のTmall TopTalkでは、店舗分析、広告配信、顧客対応、販売後の処理までを支える、24時間稼働のAIエージェントチームを加盟店に提供する構想も示していた。

消費者向けのAI連携も広がっている。Alibabaは2026年5月11日、QwenアプリをTaobaoとTmallの40億点超の商品カタログに接続し、Taobaoアプリ内にも買い物支援機能を導入した。商品探しから比較、注文、配送管理までを会話で進め、注文管理、物流、アフターサービスに対応する機能を組み合わせる。

Alibabaが8月に公表した2026年4~6月期の決算資料では、Qwenアプリの提供開始以来、エージェント機能を通じて初めてAIを使った買い物を体験した利用者は2億5000万人に達したという。消費者の購買支援と、販売事業者の社内業務の効率化を、並行して進める形だ。

■Qwen Workの構成とモデルの仕組み

新華網によると、Qwen Workは2026年8月3日に公開テストを開始した。QoderWork、MuleRun、Wukongの3製品を統合し、デスクトップ上の作業、クラウドでのタスク実行、企業内の共同作業を一つの製品で扱う。

Alibabaは、Qwen WorkをAlibaba Cloudや業務用コラボレーション基盤DingTalkと深く統合した製品と説明している。DingTalk側の2026年3月の公表では、同基盤を利用する企業・組織は2000万を超える。Qwen Workは、こうした既存の業務環境を通じて企業利用者へ届けられる。

Qwen Workで利用できる基盤モデルの一つが、8月3日に発表された「Qwen3.8-Max」だ。Alibaba Cloudによると、総パラメータ数は2兆4000億で、処理時に有効になるパラメータは約950億となる。

採用するのは、複数の専門化されたネットワークの一部を入力に応じて選ぶ「混合専門家モデル(MoE)」という方式である。モデル全体を毎回動かす構成に比べ、処理に必要な計算量を抑える設計だ。Alibaba Cloudは、同規模の通常の密なモデルと比較して計算コストと遅延を削減すると説明している。

Alibabaの広報サイトAlizilaによると、米投資銀行Jefferiesは8月17日の調査で、8種類のAIエージェントを五つの実務的なオフィス作業で評価した。Qwen Workは総合95点で首位だったという。加盟店への導入効果を測る際は、こうした評価に加え、在庫データの照合精度、広告運用に要する時間、顧客対応の品質など、実際の業務に沿った指標が役立つ。

Alibabaの2026年年次報告書が引用するFrost & Sullivanの調査では、2025年後半の中国の企業向け大規模モデル呼び出しにおけるQwenのシェアは32%で、首位だった。これはモデル群の利用状況を示す市場指標であり、導入効果は事業者ごとの業務や接続先に応じて評価することになる。

■中国の情報・データ関連法と業務データの管理

中国での利用を検討する事業者には、サービスの契約条件とともに、現地の法制度を把握する必要がある。国家情報法は、企業を含む組織や個人に、法に基づく国家情報活動への協力を求めている。

2017年制定の国家情報法第7条は、組織と国民に対し、法に従って国家情報活動を支持、支援し、協力する義務と、知り得た国家情報活動の秘密を守る義務を定める。第14条は、国家情報機関が法に基づいて活動する際、必要な支援や協力を関係する組織などに求められると規定している。

同法第8条は、情報活動を法に基づいて行い、人権と個人・組織の適法な権益を尊重、保護すると定める。第19条には、情報機関と職員が、知り得た営業秘密や個人情報を漏らしてはならないとの規定もある。事業者のデータ管理では、こうした法的枠組みと、サービスが取得・保存する情報の範囲を併せて確認することが重要になる。

2021年制定のデータセキュリティ法第36条は、中国国内の組織や個人が、中国国内に保存されたデータを外国の司法・法執行機関へ提供する場合、中国の主管機関の承認を必要としている。保存場所やデータの提供先は、適用される手続きを確認するうえで重要な要素となる。

2026年1月1日に施行された改正サイバーセキュリティ法も、AIに関する規定を加えた。第20条は、基礎研究や計算基盤の整備を支援するとともに、AI倫理規範の整備、リスクの監視・評価、安全監督を進める方針を定めている。

■海外ブランドが確認したい接続先と利用条件

Tmall Globalなどを通じて中国市場へ販売する海外ブランドでは、EC店舗の情報と、本社や地域拠点が管理する業務データをどのようにつなぐかが課題になる。Shopify、SAP、Salesforce CRMなどを使う事業者にとっては、接続できる機能、許可する操作、データの受け渡し方法が比較の要点だ。

Qwen Workは中国語の公式ヘルプを公開し、国際版にも英語の説明資料を用意している。国際版のプライバシー・セキュリティ資料では、利用者または組織管理者の承認に基づくデータへのアクセス、暗号化、アクセス制御、操作ログなどを説明する。中国向けEC版の利用では、その版に適用される契約や権限設定を確認する必要がある。

Alibabaは、消費者向けQwenの買い物機能について、20年以上の取引データや加盟店業務を基にモデルを調整してきたと説明している。店舗運営に固有の情報や既存ツールとの接続は、AIを業務へ組み込む際の強みになり得る。

中国の他社も、AIと商取引の接点を広げている。36Kr掲載のAIX財経の報道では、ByteDanceのDoubao経由でDouyinの生活関連サービスを購入する取引に、専用の手数料体系が導入された。TencentはWeixin内の商品推薦への基盤モデル活用を公表し、JD.comはAIやデータ分析を物流・配送基盤へ組み込んでいる。

企業向けAIの比較対象には、Microsoft 365 Copilot、Google WorkspaceのGemini、SalesforceのEinsteinなどもある。各社の日本語公式資料では、アクセス制御、監査ログ、データ保護などの仕組みが説明されている。導入先の業務環境、接続できるEC機能、保存先、契約主体、データ利用条件を組み合わせて選ぶことになる。

■AI基盤への投資と運用の切り替えコスト

Alibabaの決算発表によると、2026年4~6月期の設備投資額は676億7800万元(約1兆6000億円)で、前年同期比75%増だった。同社はAI基盤への投資を続けており、調達時期の変動、AIエージェントの利用増を見込んだCPU計算能力の拡充、各種チップ部品の値上がりなどを増加要因に挙げた。

複数の業務をAIエージェントに結び付けるほど、権限設定や処理手順、データ形式の整備が重要になる。後に別のサービスへ移る場合には、連携設定や業務手順の作り直し、従業員の習熟に費用がかかり得る。

販売事業者は、在庫、広告費、顧客対応履歴、価格戦略などの情報ごとに、AIへ渡す範囲と社内システムで処理する範囲を整理できる。導入効果を測りながら権限とデータ連携を調整することが、利便性と管理負担の釣り合いを取る手掛かりになる。

■米国防関連の取引には別途調達規制も

米国防当局は2026年6月8日、2021会計年度国防権限法第1260H条に基づく「中国軍事企業」リストへAlibabaを追加した。Reutersによると、Alibabaは6月23日に連邦裁判所へ提訴し、指定には事実上・法律上の根拠がないとして解除を求めた。

2024会計年度国防権限法第805条は、2026年6月30日から、国防当局によるリスト掲載企業などとの直接の調達契約を制限する。2027年6月30日からは、掲載企業などが製造・開発した商品やサービスを含む商品・サービスの調達にも制限を広げる予定だ。

聯合早報が伝えたBloombergの報道によると、連邦裁判所は7月5日、Alibabaに対するロビー活動関連の制限について暫定的な救済を認めた。米国防関連の契約に関わるブランドや供給業者には、契約で使う商品・サービスと適用される調達規則を照合し、個別の取引に応じて対応を検討する必要がある。

元記事: Alibaba Mandates Qwen Work for Taobao Merchants; China’s Intelligence Law Claims All Business Data

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