マイクロソフト、英Nscaleのロートン拠点契約を終了 電力供給は2030年代の見通し

2026年10月20日 11:43

Microsoftが、英AIインフラ企業Nscaleのロートン拠点で主要テナントとなる契約を終了した。Reutersが2026年10月19日に報じたところでは、エセックス州にある同計画地は電力供給が2030年代になる見通しで、Microsoftは今回の決定が1拠点に関するものだと説明している。

Nscaleはロートン計画を継続し、代替電源と英国での別の拡張候補地を検討している。米国で新規株式公開(IPO)を目指す同社にとって、電力、建物、GPUをそろえ、契約した計算能力を予定どおり提供する実行力が重要になっている。

■契約終了後もロートン計画は継続

Reutersによると、Microsoftの契約終了を最初に報じたのはThe Telegraphだった。Microsoftは10月19日、Nscaleとの提携を引き続き重視し、世界でデジタルインフラの構築やAIの成長を支援すると説明した。

Nscaleの広報担当者もReutersに対し、Microsoftとの関係は強固で長期的なものであり、ロンドン全域に及ぶ電力網の問題は他の契約に影響しないとしている。ロートンと英国への投資方針を維持し、同拠点の代替電源を探る考えだ。

CoinDeskの10月19日の報道では、地域の配電網を運営するUK Power Networks(UKPN)がNscaleに対し、十分な電力を供給できるのは2030年代前半から半ばになる可能性があると伝えた。計画していた2027年のサービス開始との間に、大きな隔たりが生じている。

主要テナントは、大規模施設の計算能力を長期にわたって購入し、設備投資を支える顧客となる。その契約を失ったロートンでは、電源の確保とともに、施設の稼働を支える需要を改めて組み立てることが課題になる。

■英国最大級のAI計算拠点を目指した計画

Nscaleは2025年1月13日、今後3年間で英国のデータセンター産業に20億ポンド(約4220億円)、当時の発表で25億ドル(約3950億円)を投資すると表明した。ロートンは同社初の英国データセンターとして発表され、AI・高性能計算向けに50MW、将来は90MWへの拡張を想定していた。

同年1月の発表では、2026年第4四半期の稼働と、最大4万5000基のNVIDIA GB200 GPUの収容能力を掲げていた。その後、9月16日のMicrosoftとの発表では、2027年第1四半期に2万3040基のNVIDIA GB300 GPUを導入し、英国のAzureサービスを支える計画を示した。

英国政府も2025年1月、AI政策の発表に合わせた広報資料でロートンを取り上げ、英国最大のソブリンAIデータセンターとなる計画として紹介した。国内に計算基盤を整備し、データの管理やAI利用を支えるという政策上の期待を担っていた。

City A.M.は2026年7月、Nscaleが計画許可と90MWの系統接続を確保した一方、開業予定に電力供給が間に合わず、独自の電源を探していると報じた。TechRadarも10月、90MWという規模を約31万5000世帯の電力消費に相当すると紹介している。

■配電網と送電網、双方の整備が接続時期を左右

大規模なデータセンターが電力系統に接続するには、地域の配電網運営事業者などが、必要な容量と接続条件を評価する。既存設備で追加需要を受け入れられるかを調べ、必要に応じて変電所や送配電設備の増強を計画する仕組みだ。

UKPNのデータセンターに関する資料では、接続に際して配電網と上位の送電網の双方で工事が必要となり、提示される接続時期が2030年代半ばに及ぶ場合があると説明されている。施設側の建設準備と、広域の電力網整備を並行して進める必要がある。

専門コンサルティング会社Roadnight Taylorの2025年の報告書では、大規模案件の系統接続は同社の経験上、通常少なくとも3年、長い場合は8年を要するとしている。調査対象となった開発事業者、投資家、運営事業者の半数は1~2年で接続できると考えており、想定と実務上の期間に開きがあった。

同報告書では、74%が英国の主要インフラ事業全般の遅延を、データセンター開発の制約として挙げた。また、Roadnight Taylorが2026年に公表した産業界の上級意思決定者200人への別の調査では、25%が新工場の海外立地を検討していた。電力網への接続やエネルギーコストが、立地判断に影響しているという。

接続を早める手法も検討されている。UKPNは、容量を段階的に増やす接続や、系統の混雑時に需要を制御する柔軟な接続などを提供している。必要な電力をいつ、どの条件で使えるかは、データセンターの設備計画や運用方法にも関わる。

■接続待ちの需要と制度改革

Ofgemが2026年夏に公表した協議資料では、接続待ちのデータセンターは約315件、申請容量の合計は約73GWに上る。同資料が比較対象として示す2025年のグレートブリテンの最大電力需要は約45GWで、計画段階の接続需要が大きく膨らんでいる。

Guardianは2026年5月、Ofgemのサイバー規制・AI担当ディレクター、Stuart Okin氏が、データセンターの接続待ちを100GW規模と説明したと報じた。Ofgemは制度改革に向け、実現性の低い案件が接続枠を占め、実行可能な案件や設備投資の計画に影響する問題を挙げている。

需要拡大への警戒は以前からあった。専門誌Data Centre Reviewによると、National GridのJohn Pettigrew CEOは2024年3月、データセンターの電力需要が2035年までに6倍になるとの見通しを示していた。

全国の電力系統運用を担うNational Energy System Operator(NESO)は、接続制度の改革に向け、2025年1月29日から新規申請の受け付けを一時停止する措置を導入した。需要家の直接接続などには例外が設けられ、対象や取り扱いは申請の種類によって異なっていた。

NESOは2026年2月、技術検討などを踏まえた接続提案の発行日程を更新した。2026年から2027年にかけて案件の区分や地域ごとに提案を出す計画で、接続枠の整理と設備面の検討が続いている。

■米上場を前に問われる契約の実行力

Nscaleは2026年9月18日、米証券取引委員会にIPO登録届出書を提出し、ニューヨーク証券取引所への上場を申請した。同日の会社発表では、募集株数と価格帯は未定だった。Financial Timesは9月、想定評価額を350億ドル(約5兆5300億円)と報じていた。

主幹事はGoldman Sachs、J.P. Morgan、Morgan Stanleyで、ほかに19の金融機関・引受グループが参加する。Nscaleが3月9日に発表したシリーズCでは20億ドル(約3160億円)を調達し、評価額は146億ドルだった。

9月25日には、Third Pointが主導する33億6000万ドル(約5310億円)の上場前転換融資を発表した。内訳は初回分23億6000万ドル(約3730億円)と、11月中旬の資金拠出を予定するNVIDIAの10億ドル(約1580億円)のコミットメントで、IPO完了時に株式へ転換する仕組みだ。

IPO提出書類で示した稼働中・契約済みの総契約価値は1034億ドル(約16兆3000億円)に上る。Microsoftとの契約は2033年までで最大438億ドル(約6兆9200億円)、Anthropicとの2026年8月25日付の契約は最大446億ドル(約7兆500億円)で、両社が全体の約85%を占める。支払いには、設備の引き渡しやサービス提供条件の達成が伴う。

Anthropic向けのGPU基盤は、米ウェストバージニア州のMonarch Compute Campusに整備する。CNBCの報道では契約期間は6年だ。Nscaleは9月の提出書類で、この契約の履行に必要な資金調達について、拘束力のあるコミットメントをまだ得ていないと開示した。

2026年上期の売上高は1億4060万ドル(約222億円)で、前年同期の1040万ドル(約16億4000万円)から1252%増えた。2025年通年は3300万ドル(約52億1000万円)で、2026年上期には最大顧客1社が売上高の52%を占めた。The Energy Magによると、同上期の純損失は10億2000万ドル(約1610億円)で、これには主にワラント関連の負債評価額の上昇を反映した4億5710万ドル(約722億円)の公正価値損失が含まれる。

■海外施設の進捗とAIインフラの資金調達環境

Nscaleの施設整備は英国以外でも進む。Bloombergの取材を伝えたInfront TDN Direktの10月16日の報道によると、ノルウェーのグロムフィヨルド拠点は約6カ月遅れ、計画容量30MWのうち稼働しているのは6.4MWだった。建設の進捗は、契約した能力を収益につなげるうえで重要な要素になる。

ノルウェーには別に230MWのナルビク計画もある。Nscaleは2026年4月、Microsoftとの契約拡大を発表し、2027年に3万基超のNVIDIA Rubin GPUを追加導入する計画を示した。7月にはNordkraftと、同拠点の運営を担う合弁会社の設立を発表している。

GPUを使った計算能力を提供するネオクラウド企業では、設備投資と資金調達の持続性にも関心が集まる。MoneyCheckの10月14日の報道では、CoreWeaveの株価は同月に約20%下落し、6月末の債務とリース債務は約520億ドルだった。MT Newswiresは10月14日、TRACEの取引情報に基づき、同社の2032年満期無担保シニア債の市場利回りが15.5%を超えたと報じた。

Reutersによると、オーストラリアのデータセンター事業者Firmusは10月9日、投資家の需要が低調だった50億ドル(約7900億円)規模のIPOを見送り、非公開市場での資金調達へ切り替える方針を示した。AIインフラへの需要に加え、施設を完成させ、サービスを提供し続ける能力が資本市場でも問われている。

■電力網への投資と接続制度の見直し

National Gridは、2029年までの5年間でイングランドとウェールズの電力網に300億ポンド超を投資する計画を示している。大規模な送電網整備を進める「Great Grid Upgrade」とともに、需要の増加や電源構成の変化に対応する。

Ofgemは、データセンターが接続枠を維持するためのコミットメント料金と、案件の進捗を確認する専用のマイルストーンを提案した。意見募集は2026年9月16日に締め切られた。実現性のある案件を優先し、投機的な申請による容量の囲い込みを減らす狙いがある。

英国政府は、許認可の支援と電力へのアクセス改善を図る「AI Growth Zones」も推進している。最初の拠点として、オックスフォードシャー州カルハムの英国原子力公社の敷地を指定した。AIの計算基盤を拡大するには、顧客との契約、資金調達、施設建設、系統接続の工程を整合させる必要があり、ロートンでの対応はその課題を具体的に示している。

元記事: Microsoft Exits Nscale’s UK Flagship as Grid Can’t Supply Power Until 2030s: IPO at Risk

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