XanaduとGF、光量子コンピュータ部品の300mmウエハー製造で提携

2026年10月9日 20:16

Xanadu Quantum Technologiesは2026年10月6日、GlobalFoundries(GF)との複数年の戦略的製造提携を発表した。GFの米ニューヨーク州マルタにある300mmウエハーの商用ラインを使い、光量子コンピュータ向け部品の製造技術を移管・拡大する計画だ。対象は窒化シリコン光回路と超伝導ナノワイヤ単一光子検出器の2種類である。

■光子を導き、数えるための部品

Xanaduの方式は、光子に量子情報を載せ、光回路と光ファイバーを通して処理する。IBMやGoogleが採用する超伝導回路方式、IonQやQuantinuumが採用するイオンを使う方式とは、情報を担う媒体が異なる。光回路では、導波路での吸収や散乱、検出時の取りこぼしによる光子損失を抑えることが重要になる。

窒化シリコン(SiN)の導波路は、チップ上で光を所定の経路へ導く。光の量子状態を生成し、経路を切り替え、干渉させる処理を支える部品だ。Xanaduは、光の揺らぎを制御した「スクイーズド光」を利用し、誤り訂正に用いるGKP量子ビットの生成を進めている。

超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)は、冷却した細い超伝導線に光子が吸収された際の電気信号を読み取る。Xanaduが計画する方式では、1回の光パルスに含まれる光子の数を識別する検出が必要だ。同社はSNSPDの採用によって、計算速度の向上と、実用規模のシステムに必要なチップ数の削減を見込む。

光を導く回路やサーバーラックは室温で動作する。一方、光子数を識別する超伝導検出器には極低温での冷却が必要で、Auroraシステムでは検出器をラックとは別室に置く構成が報じられている。光回路と検出器で必要な温度が異なる点は、設備構成を考えるうえでも重要だ。

■研究用の実証から商用ラインへの移管

Xanaduが2025年1月に学術誌「Nature」で発表したAuroraは、4つのサーバーラックを約13kmの光ファイバーで結び、35個の光チップを用いて各クロック周期に12の物理量子ビットに相当するモードを扱う試作システムだった。チップ間を接続して動作させた成果は、同社が製造規模の拡大を目指す背景にある。

同社は2025年6月にも「Nature」で、300mmウエハー基盤で製造した窒化シリコン集積チップを使い、GKP量子ビット状態を生成した成果を発表した。実験ではチップ上で光の状態を生成・操作し、光ファイバーで接続した光子数分解検出器を利用した。3つの検出器の測定効率はそれぞれ99.89%、98.40%、96.45%で、実験装置全体に共通する単一の効率値ではない。

Xanaduのハードウェア担当CTO、Zachary Vernonは当時、GKP状態について、室温での光学操作を使った論理ゲートや誤り訂正につながる点を評価した。今回の提携では、研究で使った製造技術をGFの商用ラインへ移す。両社は窒化シリコン回路とSNSPDを当初の対象とし、将来の高性能量子モジュールに向けた追加の協業も検討する。

300mmウエハーの面積は200mmウエハーの2.25倍で、1枚から取れる部品数を増やす余地がある。量産時の部品単価や供給量は、面積に加えて歩留まりや工程の安定性にも左右される。Xanaduの部品を商用ラインで再現性よく製造できるかが、提携の具体的な課題となる。

■GFの製造拠点と各社の方式

GFはマルタ工場で、別の光量子コンピュータ企業PsiQuantum向けのシリコンフォトニクス部品も製造している。両社は2021年に、同工場で光量子コンピュータ用チップを製造していると発表した。PsiQuantumは単一光子を使うデュアルレール方式、Xanaduはスクイーズド光を用いる連続変数方式を軸とし、必要な光回路や検出技術も異なる。

GFは2026年5月に量子技術事業「Quantum Technology Solutions」を立ち上げた。同年9月には、米商務省との間で研究開発向けに最大3億7500万ドル(約592億5000万円、1ドル=158円換算)を受ける契約を確定したと発表している。資金は、所定の節目の達成に応じて5年間にわたり支給される仕組みだ。

GFはこれとは別に、次世代シリコンフォトニクスの研究開発について、米商務省と3億ドル(約474億円、同レート換算)の支援に関する意向書を交わしている。こちらは契約が確定した助成金とは段階が異なる。GFのマルタ拠点では、量子部品と光通信部品の双方に関わる製造技術の開発が進む。

GFのNicholas Sergeantは今回の提携について、誤り耐性を備えたシステムに必要な部品を工業生産へ移す道筋になると述べた。Xanaduの創業者兼CEO、Christian Weedbrookも、量子計算技術を大規模に提供するには大量生産ラインへの移管が重要だと説明している。

■ロードマップが掲げる損失低減

Xanaduが2026年8月に示したロードマップでは、光子損失が同社の方式における主な誤り源とされる。損失に関する技術指標を2026年の24.1倍から2030年に1.0倍へ下げ、2028~2029年に誤り耐性を備えた動作を達成する目標だ。改善策には材料や製造工程だけでなく、実装、システム構成、誤り訂正方式の改良も含まれる。

同社はGKP符号と量子低密度パリティ検査(qLDPC)符号を組み合わせる計画を示す。ロードマップ上の論理誤り率の目標は、2028年の約10⁻³~10⁻⁸から2030年に10⁻¹⁶へ改善するというものだ。論理量子ビット数については、2029年に最大200、2030年に最大500、2031年に1000超を掲げ、2029~2030年には量子データセンターを計画する。

Xanaduは並行して、トロントの約15万8000平方フィートの施設「Inception」の整備を進める。用途は部品の試験、異なる部品の集積、チップのパッケージング、ラック用モジュールの組み立てなどだ。カナダ連邦政府とは1億9500万カナダドルの支援契約を結んでおり、連邦政府とオンタリオ州政府による支援総額は最大3億9000万カナダドルが検討されている。

Xanaduが示した2026年6月30日時点の利用可能な資金総額は約6億8600万米ドル(約1084億円、1ドル=158円換算)で、現金のほか、株式による資金調達枠やカナダ政府の支援額を含む。提携発表日の10月6日、米市場でXanadu株は前日終値比約11.95%、GF株は約0.14%上昇した。今後はGFのラインへの技術移管と部品の性能、歩留まりが、Xanaduの計画を測る材料となる。

元記事: Photonic Quantum Chips Enter Commercial Production: Xanadu Signs GlobalFoundries Deal

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