Microsoft、リアルタイム文字起こしと音声生成の新モデル3種を公開

2026年10月4日 13:49

Microsoftは2026年10月1日、音声を聞き取りながら文字にする「MAI-Transcribe-2-Streaming」と、音声生成モデル「MAI-Voice-2.1」「MAI-Voice-2.1-Flash」を公開した。3モデルを組み合わせることで、聞き取りから応答音声の生成までをMAIモデルで構成できる。いずれもパブリックプレビューで、サービス水準合意(SLA)はなく、Microsoftは本番環境での利用を推奨していない。

■発話中から文字起こしを返す

MAI-Transcribe-2-Streamingは、日本語を含む60言語の音声に対応し、言語を自動検出する。アプリケーションはWebSocket接続を通じて音声を送り、発話中に更新される部分的な文字起こしと、確定した文字起こしを受け取れる。ライブ字幕や音声アシスタントでは、録音全体の終了を待たずに内容を表示・処理できる。

Microsoftが9月3日に公開した「MAI-Transcribe-2」は、録音済み音声を処理するモデルだ。同社の製品資料によると、1時間の音声に対するモデルの推論時間は約10秒で、話者の識別や単語単位の時刻情報にも対応する。ストリーミング版は、発話中に結果を返す用途を担い、Microsoftの製品資料では話者識別と単語単位の時刻情報は非対応とされている。

Microsoftによると、ストリーミング版が最初の部分的な結果を返すまでの時間は約120ミリ秒、発話終了から最終結果までの時間は約128ミリ秒だ。部分的な結果は後続の音声によって更新されるため、アプリケーション側では表示中のテキストと確定結果を区別して扱うことになる。

■精度は利用場面に合わせて評価

Microsoftは、MAI-Transcribe-2-StreamingがArtificial Analysisのストリーミング音声認識評価で、部分結果と最終結果の両方について精度首位になったと発表している。単語誤り率(WER)2.5%という数値も報じられている。WERは、正解の文字起こしに対する単語の置換・脱落・挿入の割合を示す指標だ。

Artificial Analysisの評価には、会話、議会での発言、企業の決算説明など、異なる種類の音声が含まれる。一方、単一のWERでは、名前や数字の聞き違いと、意味への影響が小さい語の違いを同じ単語誤りとして数える。AssemblyAIも、音声認識の評価では重要な固有名詞の認識率など、用途に応じた指標を併用するよう提案している。

2020年に発表された音声認識の研究でも、商用システムを実際の会話音声で評価した際、一般的なベンチマークで報告される値よりWERが高くなった。コンタクトセンターや会議で導入を検討する場合は、対象言語に加え、雑音、話者の重なり、業務用語を含む音声で、文字起こしと応答までの時間を測ることが重要になる。

■料金はバッチ処理の5.4倍

MAI-Transcribe-2-Streamingの導入価格は、2026年12月31日まで音声1時間当たり0.54ドル(約85円、1ドル=158円換算)だ。同年10月時点のバッチ処理版「MAI-Transcribe-2」は同0.10ドル(約16円)で、ストリーミング版は5.4倍となる。Microsoftは導入価格の終了後の料金を示していない。

例えば、各通話で1時間の音声を処理する1000件の通話では、表示料金を単純に掛けるとストリーミング版が540ドル(約8万5320円)、バッチ処理版が100ドル(約1万5800円)となる。通話中の支援やライブ字幕にはストリーミング版が適し、通話後の分析や録音の保存用文字起こしにはバッチ処理版を選べる。

競合するリアルタイム文字起こしの料金もモデルごとに異なる。2026年10月時点で、Deepgramの「Flux English」とElevenLabsの「Scribe Realtime」の公開料金は、いずれも音声1000分当たり6.50ドル(約1027円)相当だ。Microsoftの導入価格は同9.00ドル(約1422円)相当で、比較には対応言語や機能も含める必要がある。

■多言語の声を保つ2つの生成モデル

MAI-Voice-2.1は、23言語・26ロケールに対応する音声生成モデルで、料金は100万文字当たり22ドル(約3476円)だ。Microsoftによると、言語を切り替えても話者として認識できる声の特徴を保ちながら、それぞれの言語に合わせて発音を変えられる。多言語の案内や教材に加え、長いナレーションも想定している。

MAI-Voice-2.1-Flashは同じ言語に対応し、応答速度と大量処理を重視する。Microsoftは、最大45秒の音声を生成でき、標準モデルより推論が55%速く、出力開始までの遅延が約150ミリ秒だとしている。料金は100万文字当たり15ドル(約2370円)で、標準モデルとの差は7ドル(約1106円)だ。

両モデルは、短い参照音声を使って声の特徴を反映する機能も備える。Microsoftの資料では推奨する参照音声の長さは5~60秒で、利用には申請・審査を伴う制限付きアクセスが必要だ。同社は、利用を許可された声に限定する仕組みを設けているとしている。

■開発手段とプレビューの条件

開発者は、MAI-Transcribe-2-Streamingで得た文字起こしを言語モデルに渡し、MAI-Voice-2.1-Flashなどで応答を音声にできる。Microsoftは、この構成を使ったデモ「Chatter」をMAI Playgroundで公開した。既存のAzureには別のリアルタイム音声認識モデルもあり、新モデルはMAI製品群で構成する際の選択肢を増やす。

3モデルはMicrosoft FoundryとAzure Speechで提供され、VercelのAI Gatewayでも利用できる。Microsoftは、音声生成モデルをOpenRouterでも提供し、LiveKitへの対応を予定している。ストリーミング文字起こしには、OpenAI Realtime互換のWebSocket APIとAzure Speech SDKを使える。

Azure Speech SDKは接続管理、再試行、音声の送信を支援する。3モデルはパブリックプレビューのため、MicrosoftはSLAを設けず、本番ワークロードでの利用を推奨していない。開発チームは、対象地域での提供状況と実際の音声を使った性能評価を確認したうえで、利用方法を決めることになる。

元記事: Microsoft Ships First Streaming Transcription Model, Completing Voice Agent Pipeline on Foundry

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