米アンソロピック、11月中旬にもIPOへ 最大1000億ドル調達、評価額2兆ドル規模
2026年10月3日 10:15
生成AI「Claude」を手掛ける米アンソロピック(Anthropic)が、11月中旬にも新規株式公開(IPO)を実施する方向で準備を加速している。Bloombergが関係者の話として報じた。11月9日の週にも正式なIPOマーケティングを始め、11月26日の感謝祭前に取引を開始する可能性がある。
Anthropicは最大1000億ドル(約15兆8000億円)の調達を目指しており、ReutersによるとIPO時の企業価値は2兆ドル(約316兆円)規模となる可能性がある。実現すれば、調達額ベースで過去最大だったSpaceXの750億ドル(約11兆8000億円)を上回り、史上最大のIPOとなる可能性がある。
Bloombergによると、Anthropicは10月14日に投資家との会合を予定している。IPOに向け、急速な売上高の伸びとともに、AI開発に伴う巨額の資金需要などについて説明するとみられる。
■2025年売上高は12倍、純損失は約420億ドル
Reutersが閲覧したAnthropicのIPO目論見書によると、2025年の売上高は前年の12倍となる約46億ドル(約7260億円)だった。一方、営業損失は80億6000万ドル(約1兆2700億円)に拡大した。
純損失は約420億ドル(約11兆8000億円)に達した。ただ、このうち約340億ドル(約6兆6300億円)は、過去の資金調達に関連し、将来Anthropic株に転換される可能性のある金融商品などの評価額上昇に伴う会計上の費用だった。事業運営による現金支出とは性質が異なる。
AnthropicはAIモデルの開発・運用に必要な計算資源へ巨額の資金を投じている。目論見書によると、クラウド、コンピューティング、インフラ関連で今後少なくとも5180億ドル(約81兆8000億円)の支払い義務を抱える。Reutersによると、期間は約10年間にわたり、6社との契約が含まれる。
2025年だけでもコンピューティングとインフラに73億3000万ドル(約1兆1600億円)を支出し、営業費用126億5000万ドル(約2兆円)の半分を超えた。
■アマゾンやグーグルなど大手IT企業への依存
Anthropicは事業面でも大手テクノロジー企業との関係が深い。
Reutersによると、アマゾン・ドット・コムとグーグルはAnthropicの主要投資家であると同時に、Claudeの学習や提供に必要なクラウドインフラを供給している。
目論見書では、2025年の売上高の約24%を2社の顧客が占めたことも明らかになった。主要顧客の多くとは長期契約を結んでおらず、支出が削減または停止される可能性をリスクとして挙げている。
■ブロードコムが最大420億ドルを融資
半導体大手ブロードコムとの関係も拡大している。
Reutersによると、ブロードコムはAnthropicのインフラ投資を支えるため、最大420億ドル(約6兆6300億円)を融資することで合意した。この融資は、Anthropicが契約した5年間で1252億ドル(約19兆8000億円)のTPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)計算能力のリース義務の約3分の1を賄う可能性がある。
融資に使われる債務証券はAnthropic株に転換できる仕組みとなっている。Anthropicは目論見書で、IPO完了前に債券が売却されることは想定していないとしている。
Anthropicは2027年にブロードコムのチップ設計事業で最大の顧客になる見通しである。ブロードコムはハードウエア供給と資金提供の双方を担うため、Anthropicは目論見書で「潜在的な利益相反」が生じる可能性もリスクとして挙げた。
■OpenAIの年換算経常収益は700億ドルに接近
生成AI市場では、OpenAIとの競争も激しさを増している。
Reutersが関係者の話として報じたところによると、OpenAIの年換算経常収益は700億ドル(約11兆円)に近づいている。7月以降に法人向け売上高が2倍超に増えたことなどが成長を押し上げた。
一方、年換算の収益指標は直近の月次売上高などを12倍して算出する場合があり、通年の実績売上高とは異なる。急成長するスタートアップの事業規模を示す指標として広く利用されている。
■国防総省の指定を巡り係争
Anthropicは米国政府との対立も抱える。
米国防総省は3月、Anthropicを国家安全保障上のサプライチェーンリスクに指定した。Anthropicが、自社技術を自律型兵器や大規模な国内監視に利用することへの制限を撤廃しなかったことが背景にある。
ワシントンの連邦控訴裁判所は9月25日、2対1の判断で国防総省による指定を支持した。裁判所の多数意見は、Anthropicの安全対策が軍事作戦を妨げる可能性があるとの国防総省の懸念には合理性があると判断した。
Anthropicは判決に同意しないとの声明を出し、控訴裁判所の大法廷による再審理を求めることなどを検討している。
Anthropicは、国防総省による指定で数十億ドル規模の事業機会を失い、企業の評判にも悪影響が出たと主張している。
急拡大する売上高の一方で、巨額の損失やAIインフラへの長期的な資金負担、大手テクノロジー企業への依存を抱える。2兆ドル(約316兆円)規模の評価額を視野に入れるAnthropicのIPOは、公開市場が生成AI企業の成長性と巨額投資をどのように評価するかを示す大型案件となる。