TSMCもHigh-NA EUVを2030年から量産導入へ、ASMLは増産に向け新拠点を着工

2026年9月16日 19:46

ASMLのHigh-NA(高開口数)EUV露光装置が、研究開発や工程認定に加えて一部の量産工程でも使われ始めた。世界では10台が4社の顧客先で稼働し、さらに3台が出荷または設置中となっている。TSMCは2030年から先端ノードの量産に導入する計画を表明し、Samsungは2028年までのDRAM量産への適用を目指す。

ASMLは装置の供給能力を拡大するため、オランダ・アイントホーフェンで新たな工業キャンパス「Brainport Industries Campus North(BIC North)」の建設にも着手した。High-NA EUVの量産展開では、露光性能だけでなく、装置の可用性、生産能力、フォトマスクを含む製造基盤の整備が焦点となっている。

■High-NA EUVは10台が4社で稼働

ASMLがSEMICON Taiwan 2026で示した情報によると、2026年7月中旬時点で10台のHigh-NA EUVシステムが4社の顧客先で稼働し、さらに3台が出荷または設置段階にある。世界のEXEシリーズによる累計露光枚数は135万枚を超えた。

この累計には、顧客による装置認定、研究開発、プロセス開発、量産に向けた学習などが含まれる。量産品として出荷された半導体の枚数を表す数字ではない。

ASMLのHigh-NA EUV製品管理担当シニアバイスプレジデントであるGreet Stormsによると、装置群の可用性は2026年7月時点で84%となり、同社は第4四半期に90%へ引き上げることを目指している。可用性は、保守や故障による停止時間を除き、装置を生産に使用できる時間の割合を示す。

量産向けのTWINSCAN EXE:5200Bは、2枚のマスクを使うABモードの受け入れ試験で毎時135枚の処理能力を達成した。ASMLは後継モデルについて、EXE:5200Cで毎時160枚、EXE:5200Dで毎時175枚、2020年代末に投入するEXE:5400Eで毎時180枚を目標としている。毎時250枚超を目指すHigh Productivity版のEXE:5600も計画しているが、投入時期は公表していない。

■アイントホーフェンで新キャンパスを着工

ASMLは2026年9月8日、オランダ・アイントホーフェンのBIC Northで新キャンパスの建設を開始した。ASMLにとって、オランダのブレインポート地域における2カ所目の主要工業キャンパスとなる。

開発は複数段階に分けて進められ、最終的には約35万平方メートルの規模となる計画だ。将来の需要に応じて、最大2万人分の職場を収容できる可能性がある。

2029年の完成を予定する第1期には、少なくとも3000人が勤務し、生産、物流、関連するオフィス機能を一つのキャンパスに集約する。これらの職場は、主としてASMLの既存拠点から移転するチームを想定している。

第1期の中核となるのが、ASMLが「フローファクトリー」と呼ぶ次世代のTWINSCAN生産モデルである。材料や作業を工程に沿って効率的に移動させる自動車・航空宇宙産業の生産方式を参考にし、品質を維持しながらモジュールの生産と設置を迅速化する。

この新拠点はHigh-NA EUVだけを製造する専用工場として発表されたものではない。ASMLは、半導体業界からの需要拡大に備えてTWINSCANシリーズ全体の製造能力と柔軟性を高める拠点と位置付けている。

■TSMCは2030年、Samsungは2028年を目標

TSMCは、2030年から先端ノードの量産にASMLのHigh-NA技術を使う意向を明らかにした。技術ノードの微細化に伴い、High-NA EUVを必要とするレイヤーは増えると見込んでおり、主な要因としてAI用途で求められるトランジスタ構造の複雑化を挙げている。

TSMCとASMLは、High-NA EUV向けフォトマスクを現在の6インチから大型化する業界横断の取り組みも開始した。2031年までに12インチマスクのパイロットラインを構築し、2033年までに先端ノードの量産に対応する露光システムと関連基盤を整えることを目標としている。

Samsungもこの大型フォトマスクの取り組みに参加する。同社はASMLとの戦略的協業を拡大し、2028年までにHigh-NA EUVを将来世代のDRAM量産へ導入する計画を示した。SamsungとASMLによれば、実現すればDRAMの量産工程にHigh-NA EUVを導入する業界初の事例となる。

SK hynixは2025年に韓国・利川市のM16工場へHigh-NA EUV装置を導入し、次世代DRAM向けの量産適用を準備している。韓国メディアは2028年の量産適用を目標としていると報じているが、同社の公式発表では具体的な量産開始時期は明示されていない。

■Intelは一部の量産工程で先行

IntelはHigh-NA EUVの導入で先行している。同社は2024年に業界で初めて商用のHigh-NA EUV装置を導入し、装置認定、研究開発、プロセス開発、一部の量産工程を合わせて100万枚を超える300mmウエハーを処理した。

量産への適用には、Intel 18Aプロセスで製造するCore Ultraシリーズ3、開発コード名「Panther Lake」の一部製品と一部レイヤーが含まれる。100万枚という数字はPanther Lakeの量産枚数ではなく、IntelにおけるHigh-NA EUVの累計処理枚数である。

世界のEXEシステム全体による累計露光枚数は135万枚超であり、そのすべてをIntelが処理したわけではない。Intelが公表しているのは100万枚超で、残りにはほかの顧客による研究開発や工程認定などが含まれる。

■開口数0.55で解像度を向上

従来のEUV露光装置であるTWINSCAN NXEシリーズは、開口数0.33の光学系を使う。光源では、二酸化炭素レーザーを溶融スズの微小な液滴へ毎秒約5万回照射し、発生するプラズマから波長13.5ナノメートルのEUV光を取り出す。

EUV光は空気を含むほとんどの物質に吸収されるため、光学系は高真空環境で動作し、レンズではなくモリブデンとシリコンの多層膜を使った反射鏡で光を導く。光はフォトマスクの回路パターンを経て、フォトレジストを塗布したウエハー上へ投影される。

High-NA EUVのTWINSCAN EXEシリーズは、開口数を0.33から0.55へ高めた。ASMLによると、従来EUVの約13ナノメートルに対し、8ナノメートルの解像度と約40%高い像コントラストを実現する。装置の光学的な能力として、1回の露光で約1.7倍微細なパターンを形成し、理論上は約2.9倍のトランジスタ密度につなげられるとしている。

これはHigh-NA EUVを採用した個々の製品で、トランジスタ密度が自動的に約3倍になることを意味しない。実際の密度や性能は、回路設計、適用するレイヤー、製造プロセス、歩留まりなどにも左右される。

■大型チップではスティッチングが課題

High-NA EUVは、縦横で異なる縮小率を使うアナモルフィック光学系を採用している。従来のEUVはマスクのパターンを縦横とも4分の1に縮小するが、High-NA EUVでは一方向を4分の1、もう一方向を8分の1に縮小する。

このため、ウエハー上で1回に露光できる領域は、従来の26mm×33mmから26mm×16.5mmへ半減する。この範囲に収まる小型のダイでは大きな問題にならないが、露光フィールドを超える大型チップでは、複数の露光領域を高精度につなぎ合わせるスティッチングが必要になる。

スティッチングでは複数回の露光が必要となるため、装置の実効的な処理能力やチップ設計に影響する可能性がある。High-NA EUVを使ったスティッチングについては、ASMLとimecなどが、境界部分の線幅や位置合わせ、露光条件を制御する研究を進めている。

TSMCとASMLが主導する12インチフォトマスクへの移行は、露光装置の生産性を高め、チップ製造コストを下げるとともに、現在の6インチマスクで生じるスティッチングの制約を減らすことを狙う。当初のHigh-NA EUV量産では既存の6インチマスクを使い、その後に関連装置や供給網を含めて大型マスクへ移行する計画だ。

■供給能力と安定稼働が今後の焦点

High-NA EUV装置は1台当たり約4億ドルとされ、1ドル=155円で換算すると約620億円となる。導入判断には解像度だけでなく、装置の処理能力、可用性、工程数の削減効果、マスクや検査装置を含む運用コストが関わる。

ASMLは、AI向け先端ロジックや高性能メモリーの需要を背景に、2027年にEUV露光装置と液浸DUV露光装置の生産能力を拡大する方針を示している。既存世代のEUV装置についても、2027年まで供給余力が限られた状態が続いている。

BIC Northのフローファクトリーが担うのは、TWINSCANシリーズのモジュール生産を効率化し、こうした需要に対応できる製造基盤を整えることだ。High-NA EUVでは、顧客先で稼働する装置数を増やすだけでなく、可用性を量産水準へ引き上げ、安定した処理能力を維持することが導入拡大の条件となる。

TSMC、Samsung、SK hynix、Intelでは、導入時期や対象製品が異なる。先行するIntelでの量産経験、SamsungのDRAM導入計画、TSMCが進める2030年以降の先端ノードと大型フォトマスクへの移行が、High-NA EUVの本格普及を測る指標となりそうだ。

元記事: TSMC Joins All Four Chipmakers on ASML High-NA EUV; Eindhoven Campus Breaks Ground

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