OpenAI、「GPT-Live-1」をAPI提供 聞きながら話す全二重音声をアプリに実装可能に

2026年9月13日 16:32

OpenAIは2026年9月10日、音声モデル「GPT-Live-1」のAPI提供を開始した。入力音声を受け取りながら音声を生成できる全二重方式を採用し、割り込みや沈黙を含む会話を処理する。音声セッションは1分当たり0.05ドル(約8円、1ドル=154円換算)で秒単位に課金され、バックエンドのモデルやツールの利用料は別途発生する。

■全二重方式で音声対話を連続的に処理

従来のカスケード型音声システムでは、音声認識、言語モデル、音声合成を順番につなぐ構成が広く用いられてきた。それぞれの処理を受け渡すため、遅延が積み重なるほか、音声に含まれるタイミングや会話のリズムなどの情報を十分に引き継げない場合がある。

音声の理解と生成を単一モデルで扱う従来のリアルタイム音声モデルも、利用者の発話が終わったと判定してから応答するターン制が中心だった。発話終了の判定を沈黙に頼る構成では、利用者が考えながら置いた間や周囲の音をきっかけに、意図しないタイミングで応答を始めることがある。

GPT-Live-1は、入力を継続的に処理しながら出力を生成する。モデルは会話中に、話す、聞き続ける、間を置く、割り込みに応じる、ツールを呼び出すといった判断を繰り返す。相手の発話が完全に終わるまで待つ方式とは異なり、短い相づちや途中での質問にも対応できる設計である。

API版では、システムプロンプトを使って音声エージェントの口調、話す速さ、会話スタイルを調整できる。沈黙や背景ノイズの処理、長時間の会話における文脈保持も改善したとしている。

■会話と高度な推論を別のモデルに分担

GPT-Live-1のもう一つの特徴は、リアルタイムの音声対話と、時間を要する推論やツール実行を分担できる点にある。

GPT-Live-1は、利用者の話を聞く、発話する、相づちを打つ、バックエンドへ処理を委任するタイミングを決めるといった会話の進行を担当する。一方、検索、高度な推論、外部ツールの利用、業務処理などは、別のバックエンドモデルやエージェントに任せられる。

バックエンドが処理している間も、GPT-Live-1は必要に応じて会話を続けられる。結果が得られると、その内容を進行中の会話へ戻す。開発者は、OpenAIの対応モデルを使うマネージド型の委任と、自社のモデル、エージェント、サービスを接続する方式を選択できる。

バックエンドモデルは音声モデルとは独立して選べる。複雑な問い合わせには高度な推論モデルを使い、予約や注文状況の確認といった定型的な処理には軽量なモデルを使うなど、タスクに応じて性能、速度、コストを調整できる。

OpenAIが公開したコード例では、GPT-Live-1とCodex SDKを接続し、会話の文脈をCodexへ渡してリポジトリ内を調べ、得られた回答を進行中の音声セッションへ戻す構成が示されている。

GPT-Live-1は、音声認識による文字起こしと応答テキストも出力する。特定の単語を認識しやすくするキーワードバイアスや、明示的な発話区切りを利用するターン検出にも対応しており、ターン制を前提とした既存システムへ組み込む選択肢も用意されている。

■OpenAIの評価では対話性能が向上

OpenAIの社内評価では、GPT-Live-1は、沈黙の処理、話者交代、割り込み、相づちなどを評価するFull Duplex Benchで、GPT-Realtime-2.1を30ポイント上回った。同社は、特に発話の受け渡しにかかる時間と対話的な挙動が改善したとしている。

航空、小売、通信分野の音声カスタマーサービスを評価するTau3では、バックエンドにGPT-6 Astraを中程度の推論設定で使用した構成が、初回試行で83.6%のタスクを完了した。GPT-Realtime-2.1は45.7%だった。知識検索と口座管理ツールを使う銀行業務向けのTauBankingでは、同じ構成が38.1%を記録した。

これらはOpenAIが実施、公表した評価であり、実際の性能は会話内容、バックエンドモデル、通信環境、背景ノイズ、話し方などによって変わる。導入時には、自社の利用場面に即した音声データと業務シナリオによる評価が必要になる。

■初期導入先が割り込みや実装量の改善を報告

語学学習サービスのSpeakは、初期評価でGPT-Live-1を使用したところ、従来のターン制システムと比べ、学習者が考えている途中で発話を遮られる回数が約80%減少したと報告した。語学学習では、利用者が言葉を選ぶために置く間を、発話の終了と誤認しないことが重要になる。

Yelpは、レストラン予約などに対応する「Yelp Host」にGPT-Live-1を導入した。従来の音声アーキテクチャと比べて話者交代と応答精度が改善し、電話処理率にも向上が見られたとしている。また、利用者がより完全で自然な文章で話す傾向も確認したという。

OpenAIの発表に登場したヘルスケア分野の開発チームは、従来のカスケード型構成からGPT-Live-1へ移行したことで、コードベースを80%簡素化し、約2万3000行のコードを削減したと説明している。音声認識、推論、音声合成の間を調整する処理を減らし、利用者向けの体験改善に開発資源を振り向けられるようになったという。

Intercomのサポートエージェント「Fin」や、Cognitionのコーディングエージェント「Devin」も初期導入例として紹介された。音声でアイデアを検討したり、作業を依頼したりする用途では、割り込みや話題の変更に対応しながらバックエンドの処理を進められる点が生かされる。

■Web、サーバー、電話システムから接続

開発者は、ブラウザー向けのWebRTC、サーバー側の音声処理に適したWebSocket、電話向けのSIPなどを通じてGPT-Live-1へ接続できる。LiveKit、Twilio、Telnyx、DailyおよびPipecatとの統合に関する案内も用意されている。

電話システムでは、レストラン予約やカスタマーサポートなど、着信・発信を扱う音声エージェントへの導入を想定する。会話中に利用者が質問を追加したり、回答を遮って条件を変更したりした場合にも、その時点の発話を踏まえて対話を進められる。

音声セッションの料金は1分当たり0.05ドル(約8円、1ドル=154円換算)で、利用秒数に応じて課金される。検索、推論、ツール実行などを担当するバックエンドモデルの料金は含まれないため、実際の総費用は選択するモデルや処理内容によって異なる。

■12種類の音声とカスタム音声を用意

API版では、Quartz、Ripple、Vesper、Willow、Stone、Gleam、Meridian、Bossa、Tempo、Beacon、Delta、Cinderの12種類のリアルタイム音声が用意された。OpenAIによると、異なるアクセント、方言、言語をカバーする選択肢を拡充したものだ。カスタム音声の利用については、同社の営業窓口への問い合わせが必要になる。

GPT-Liveを通じて生成される対応音声には、2026年7月31日からSynthIDによる電子透かしが組み込まれている。OpenAIは、対応する音声ファイルから生成元を示すシグナルを検出する公開検証ツールと、組織が検証機能をシステムへ組み込むためのAPIを提供している。

企業向けには、GPT-Live-1を利用する音声エージェント基盤「OpenAI Presence」も用意されている。社内システムを利用した質問への回答、問題の解決、承認済み操作の実行、人間の担当者への引き継ぎなどを含む音声業務の構築を支援する。

■既存の音声基盤と使い分ける段階へ

GPT-Live-1のAPI提供により、開発者は全二重の音声対話を自社のアプリや業務システムへ組み込めるようになった。一方、カスケード型には、音声認識、言語モデル、音声合成を個別に選択、交換できる利点がある。明示的な発話区切りを重視する用途では、従来型やターン制の構成が適する場合もある。

オープンウェイトの選択肢としては、NVIDIAの「NVIDIA NemotronLabs VoiceChat 11B」もある。音声理解と音声生成を一つの構成で処理する全二重モデルで、NVIDIAの公表値では話者交代の遅延は約450ミリ秒とされている。利用にはモデルを動作させるための計算環境や運用基盤が必要になるため、API型とは導入条件が異なる。

GPT-Live-1では、音声対話を担うモデルと、推論や業務処理を担うバックエンドを分けて設計できる。開発チームにとっては、会話の自然さだけでなく、既存システムとの統合、処理精度、応答時間、運用コストを含めて音声AI基盤を選ぶことが重要になる。

元記事: Full-Duplex Voice AI Hits Developer APIs: GPT-Live-1 Kills Cascaded Pipeline

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