米マイクロソフト、データセンター容量を2032年までに38GW超へ拡大か AI需要でAzureの逼迫続く
2026年9月12日 09:44
Microsoftが、世界のデータセンター容量を現在の約12GWから、2032年までに38GW超へ拡大する計画を検討していることが分かった。Bloombergが9月10日、事情に詳しい関係者の話として報じたもので、実現すれば同社の設備規模は現在の3倍を超える。
背景には、生成AIサービスの普及によってAzureの計算資源に対する需要が急増し、利用可能な容量が顧客需要に追い付いていない状況がある。一方、38GWはMicrosoftが公表した正式な目標ではなく、長期的な開発計画や規制、電力確保の状況によって変わる可能性がある。
■Azureで続く容量不足
Microsoftでは、クラウドとAIサービスの需要が利用可能な容量を上回る状態が続いている。Bloombergの報道によると、同社は十分な計算資源を提供できず、一部のクラウド・AI関連事業を受注できなかった。電子商取引大手Temuも、Microsoftが必要な地域で十分な容量を用意できなかったため、競合するクラウド事業者と契約したという。
Microsoft傘下のGitHubでも、AIを利用したソフトウェア開発の急増がインフラに負荷をかけている。GitHubは複数のクラウドを利用する方針を採っており、2026年6月には、追加の計算能力をAmazon Web Servicesから調達する計画が報じられた。Microsoftの広報担当者は、2025年末から始まったエージェント型開発の急増がインフラの限界を試していると説明している。
Xbox Cloud Gamingでも、Microsoftは2026年11月からXbox Game Pass加入者に月間利用時間を設定する。Ultimateは15時間、Premiumは10時間、Essentialは5時間となり、上限を超えた場合は追加時間を購入できるようにする予定だ。同社は、利用者とプレイ時間が増えるほどクラウドゲーミングの提供コストが上昇するため、月間利用時間を設けるとしている。ただし、Microsoftはこの変更をAzureの容量不足だけに起因するものとは説明していない。
データセンター拡張では、GPUなどの半導体を確保するだけでなく、それらを設置し、電力や冷却設備を備えた施設を稼働させる必要がある。Satya Nadella CEOは、チップの供給そのものではなく、チップを設置できる稼働可能な建屋が不足していることが制約になっていると説明してきた。
■2032年までにAI向け設備を大幅拡充
報道によると、Microsoftが現在運用する約12GWのデータセンター容量のうち、AI専用チップを中心とする設備は約2GWである。2032年に38GW超へ拡大した場合、AI向け設備は全体のおよそ3分の1を占める見通しだ。
単純計算では約12.7GWとなり、AI向け容量は現在の6倍を超える。計画にはMicrosoftが所有する施設と長期リースの施設が含まれる一方、CoreWeaveなど外部の事業者から借りる計算能力は含まれないという。
Microsoftはすでにデータセンター建設を加速している。2026年度には世界で88カ所のデータセンターを稼働させ、このうち第4四半期には5大陸で31カ所を追加した。同四半期だけで約1GWの容量を増やしており、同社は全体の容量を約2年間で倍増させる計画を維持している。
■年間1450億ドルを超えた設備投資
Microsoftの2026年度の設備投資額は約1453億ドルに達した。2026年度第4四半期だけでも410億ドルを投じており、2027年度第1四半期には約500億ドルを見込む。暦年2026年の設備投資額は、ファイナンスリースを含む基準で約1750億ドルとなる見通しだ。
同社の2026年度年次報告書では、2026年6月30日時点で、まだ開始していない追加のリース契約が3291億ドルに達していた。大部分はデータセンターに関するもので、2027年度から2033年度にかけて開始する予定である。一部の契約は所定の条件が満たされることを前提としている。
この3291億ドルは、すでに稼働しているデータセンターの価値や、現時点で貸借対照表に計上されているリース負債を示すものではない。Microsoftが将来利用する予定の施設に関する契約規模を表しており、今後のインフラ拡張の大きさを把握するための指標となる。
Microsoftは2027年度から、データセンターとオフィスビルの見積耐用年数を15年から25年へ延長する。これに伴い、今後契約するデータセンターリースのうち、ファイナンスリースではなくオペレーティングリースに分類されるものが増える。この変更によって、基礎となる投資計画を変えずに、設備投資として報告される金額は従来想定の約1900億ドルから約1750億ドルへ減少する。
■電力網への接続と地域規制が課題
データセンターの増設では、施設の建設速度だけでなく、十分な電力を確保できるかが大きな課題となる。特に大規模なAIデータセンターでは、送電設備の増強や系統接続、変圧器などの調達に長い時間を要する場合がある。
テキサス州では2026年8月、Greg Abbott知事が州公益事業委員会と電力信頼度評議会に対し、系統接続手続きを進めているデータセンターを包括的に監査するよう指示した。監査が完了するまで対象プロジェクトを先に進めない方針で、電力と水の使用量、発電設備、税制上の支援、騒音などの地域への影響が調査対象となる。
同州の電力網には約474GWの新規接続要請があり、その約90%をデータセンターが占めるとされる。これは実際に建設される設備容量ではなく、接続を申請・検討している案件の合計であるが、将来の電力需要を審査する必要性を高めている。
ニューヨーク州も2026年7月、一定規模以上の新規データセンターについて、州の環境関連許可を最長1年間停止した。州政府はこの期間に、電力網や水資源、電気料金、地域社会への影響を評価する共通の枠組みを整備する。
これらの措置はデータセンター建設そのものを無期限に禁止するものではないが、大規模施設の審査と稼働開始までの時間を長期化させる可能性がある。複数地域で同時に容量を増やそうとするMicrosoftにとって、電力網への接続時期と地域ごとの許認可は、38GW計画の進捗を左右する要素となる。
■原子力発電所から長期的に電力を調達
Microsoftは電力確保に向け、Constellation Energyと20年間の電力購入契約を締結している。この契約は、ペンシルベニア州にあるスリーマイル島原子力発電所1号機を、Crane Clean Energy Centerとして再稼働させる計画を支えるものだ。
同施設の発電能力は835MWで、Constellation Energyは2027年の稼働開始を見込んでいる。再稼働には米原子力規制委員会による許認可などが必要となる。Microsoftは同施設で発電される電力を購入し、地域の電力網を介して同社のデータセンターで使用する電力に対応させる。
835MWは大規模な電源契約だが、報道された38GWというMicrosoftのデータセンター容量全体と比べれば一部にとどまる。同社が計画を実現するには、原子力を含む安定電源に加え、再生可能エネルギーや送電設備などを地域ごとに組み合わせていく必要がある。
■38GWは正式な公約ではない
Microsoftは2026年度第4四半期にAzureの容量を約1GW追加したが、追加した容量は短期間で顧客に利用されたとしている。これは、施設を増やしてもその分が速やかに需要で埋まり得ることを示している。
2032年までに38GW超とする計画は、Microsoftが正式に公表した数値目標ではなく、関係者の話に基づく内部計画として報じられたものだ。大規模データセンターは計画から稼働までに長期間を要するため、建設費、電力調達、系統接続、許認可、地域との調整によって規模や時期が変わる可能性がある。
元記事: Microsoft Data Center Expansion to 38 GW Triggered by Lost Clients and Capacity Crisis