OpenAI、Samsungとの次世代チップ協力に言及―製造契約やFoundry採用は未公表

2026年9月11日 13:10

米OpenAIが、サムスン電子(Samsung Electronics)との次世代チップ分野における協力について言及した。両社の関係はAI向けメモリの供給検討やサムスン社内でのChatGPT活用を含むが、Samsung Foundryへの製造委託や採用する製造プロセス、量産時期は明らかになっていない。

OpenAI Koreaのゼネラルマネージャー、Harrison Kim氏は9月9日にソウルで開かれた記者会見で、サムスンとの間で進展している分野の一つとして、開発中の次世代チップを巡る「共同生産と研究」を挙げた。一方、OpenAI Koreaは翌日、この発言がサムスンによるChatGPTの導入や、2025年10月に発表した基本合意書を含む既存の関係について述べたものだと説明し、新たに発表する事項はないとしている。

■次世代チップの具体的な製造体制は未公表

Kim氏は記者会見で、「サムスン電子との間で最も進展し、高く評価されている分野の一つが、当社が開発している次世代チップに関する共同生産と研究だ」と述べたが、対象となるチップの種類や技術仕様、製造プロセス、量産計画には触れなかった。

サムスンも、顧客に関する情報は確認できないと説明している。このため、今回の発言だけでは、Samsung FoundryがOpenAIのロジックチップを製造することや、TSMCに代わる第2の製造委託先に選ばれたことまでは確認できない。

OpenAIは2026年6月、Broadcomと共同開発した初のカスタム推論アクセラレータ「Jalapeño」を発表した。推論とは、学習済みのAIモデルが入力を処理して回答などを生成する工程を指す。JalapeñoはOpenAIが設計し、Broadcomがチップの実装やネットワーク技術などを担当した複数世代のプラットフォームの第1弾で、製造はTSMCが担う。

OpenAIとBroadcomは、OpenAIが設計するカスタムAIアクセラレータを10GW規模で展開する計画も進めている。ラックの展開は2026年後半に始まり、2029年末までの完了を目指す。将来世代のチップについても両社が協力する方針だが、Samsungがその製造に加わるとの正式発表はない。

■ブロードコムとサムスンは半導体分野で協力

ブロードコム(Broadcom)とサムスンは2026年7月、AI向け半導体を巡る協力を拡大する覚書を締結した。両社によると、2030年までの5年間に想定される協業規模は2000億ドル超で、メモリ、ファウンドリ、先端パッケージングを対象とする。

メモリ分野では、Broadcomの次世代AIアクセラレータに向けた高帯域幅メモリの供給を検討する。ファウンドリ分野では、Broadcom製品へのサムスンの2nm以下の製造技術の活用を目指し、2.3Dや2.5Dと呼ばれる先端パッケージング技術でも協力する。

ただし、この覚書はBroadcomとサムスンの協業枠組みであり、OpenAI向けチップのサムスン製造を定めたものとは公表されていない。BroadcomがOpenAIのチップ開発に参加していることから将来的な接点となる可能性はあるものの、実際の製造委託先は個別の契約や設計、性能、コストなどを踏まえて決まる。

サムスンのテキサス州テイラー工場では、2027年の量産開始に向けた準備が進められている。韓国メディアは、同社の2nmプロセスの歩留まりが約80%まで向上したと報じているが、サムスンはこの数値を公式には公表していない。OpenAI向けチップを同工場で生産する計画も確認されていない。

■サムスンはHBM4Eのサンプル出荷を開始

サムスンは2026年5月、12層構成の次世代高帯域幅メモリ「HBM4E」のサンプルを主要顧客へ出荷し始めたと発表した。

同社によると、HBM4Eはピン当たり毎秒14Gbで安定動作し、最大毎秒16Gbまで対応する。1スタック当たりの最大メモリ帯域幅は毎秒3.6TBで、12層製品の容量は48GBとなる。サムスンは従来のHBM4と比べて、性能が20%超、容量が30%超向上し、電力効率も16%改善したとしている。

HBMは、演算用チップの近くに配置し、大量のデータを高速に転送する積層メモリである。大規模言語モデルの推論では、モデルの重みや処理途中のデータを頻繁に読み書きするため、メモリ容量と帯域幅がシステム性能や電力効率を左右する重要な要素になる。

JalapeñoにはHBM4が採用されており、OpenAIが2026年8月に公表した仕様では、1チップ当たり6スタック、合計216GiB、毎秒15.4TBのメモリ帯域幅を備える。後継チップでどの世代、どのメーカーのHBMを採用するかは発表されていない。

■Stargate向けメモリ供給でも協力

OpenAIは2025年10月、AIインフラ計画「Stargate」の一環として、サムスンおよびSKハイニックス戦略的提携を発表した。両社は、先端メモリの生産能力を拡大し、合計で月間最大90万枚のDRAMウエハーを供給できる体制を目指す。

この月間90万枚という数字はサムスン単独の供給量ではなく、サムスンとSKハイニックスを合わせた供給目標である。また、発表時点では供給に向けた基本合意の段階であり、個別製品の種類や実際の購入量、供給時期は明らかにされていない。

OpenAIはこのほか、Samsung SDS、Samsung C&T、Samsung Heavy Industriesと、韓国におけるAIデータセンターの追加能力を検討するための協力についても合意している。サムスンとSKは自社業務へのChatGPT EnterpriseやAPIの導入も検討対象としていた。

■サムスン社内でも生成AIの利用を拡大

サムスンは、OpenAIにとって世界最大規模のChatGPT導入企業の一つでもある。Kim氏によると、韓国および海外の従業員が研究開発、マーケティング、営業などの業務でChatGPTを利用している。

サムスンは2026年6月、スマートフォン、テレビ、家電などを担当するDevice eXperience部門の従業員について、社内業務でChatGPT、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeを利用できるようにした。

サムスンでは2023年、従業員が社外の生成AIサービスに社内情報を入力したことを受け、利用を制限した経緯がある。現在の企業向け導入では、アクセス管理やデータ保護など、業務利用を前提とした管理機能が重要になる。

OpenAIによると、韓国の企業や機関におけるChatGPT Enterpriseの利用者数は、2026年8月末までの1年間で約28倍に増加した。ただし、利用者数の絶対値は公表されていない。また、韓国は2025年末時点で、米国を除く有料ChatGPT利用者数が最も多い国だったという。

■Jalapeñoは電力効率を重視

OpenAIは2026年8月、Jalapeñoを公開ベンチマーク「InferenceX」で測定した結果を公表した。GPT-OSS 120B、DeepSeek R1、Kimi K2.5という3つのオープンウェイトモデルを使った同社の測定では、比較対象となったAIシステムに対し、ピーク時のワット当たり処理量が1.5~1.9倍、エンドツーエンドの遅延が1.7~3.6分の1になったとしている。

これらはOpenAIが自社環境で実施した測定結果であり、あらゆるAIモデルや運用条件で同じ優位性が得られることを示すものではない。それでも、推論処理で消費電力と応答速度を重視するOpenAIのチップ設計方針を示す材料となる。

Jalapeñoは複数世代にわたるカスタムチップ計画の第1弾に位置付けられている。OpenAIが今後、製造委託先を複数に広げるかどうかは、AIインフラの供給力やコスト、地理的な分散を考えるうえで重要になる。

現時点で確認できるのは、OpenAIとサムスンの協力がメモリ供給の検討、データセンター関連の取り組み、企業向けAIの導入に及び、次世代チップについても研究や生産を巡る協力が話し合われていることだ。Samsung FoundryによるOpenAI向けロジックチップの製造や、TSMCに代わる供給経路の確立については、今後の正式発表を待つ必要がある。

元記事: OpenAI Adds Samsung Foundry to Its Silicon Program, Closing TSMC-Only Risk

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