サムスン、ヒューマノイド開発のハードとAIをCTO傘下に統合―CES 2027で試作機披露目指すと報道
2026年9月9日 16:16
サムスン電子は、ヒューマノイドロボット開発でハードウェアとAIソフトウェアの両チームを、ソフトウェア出身の尹長賢氏の統括下に置いた。ソウル経済新聞が業界関係者の話として報じたもので、同社はCES 2027で汎用ヒューマノイドの試作機を披露することを目指しているという。ただし、この計画は現時点でサムスンが正式に発表したものではない。
■ソフトウェア責任者にハードとAIの両開発を集約
サムスン電子はヒューマノイドロボット事業の指揮系統を整備し、ハードウェア開発チームとAIソフトウェア開発チームの双方を統括する体制を構築した。
DX(Device eXperience)部門の社長兼最高技術責任者(CTO)である尹長賢氏は、盧泰文DX部門長兼CEO直属のRX(Robotics eXperience)事業推進室において、ハードウェア開発チームとAIソフトウェア開発チームの責任者を兼任する。ソウル経済新聞によると、この人事によって2026年7月に発足したRX部門の指揮体制が完成した。サムスンは報道内容へのコメントを控えている。
同紙は、サムスンが2027年1月にラスベガスで開催されるCES 2027で、汎用ヒューマノイドの試作機を披露することを目標としていると報じている。ただし、同社による公式な計画発表は確認されていない。
■AIとロボット本体を同時に設計
尹氏はこれまでIoTやTizen、ソフトウェアプラットフォーム分野を中心にキャリアを築いてきた。Samsung Venture InvestmentではAIやロボティクス関連投資も担当し、2025年11月にはDX部門の社長兼CTOに就任した。
ロボティクス業界ではハードウェア開発組織とソフトウェア開発組織を分離するケースが一般的とされる。その中で、ソフトウェア出身の幹部がハードウェア部門まで統括する体制は異例とみられている。
背景には、AIの進化速度に合わせてロボットを開発する狙いがある。従来は機械構造を設計した後に、その上で動作するソフトウェアを開発する手法が主流だった。しかし近年はAIの技術進歩が速く、後からAIを組み込む前提の設計では性能を十分に引き出せない可能性がある。
そこでサムスンは、ロボットの身体構造とAIアーキテクチャを初期段階から並行して設計する「ハードウェア・ソフトウェア協調設計」を進めようとしている。AIの処理能力や推論要件を踏まえながらアクチュエーターやセンサー構成を決めることで、システム全体の最適化を目指す構想だ。
組織面では、盧泰文氏の下で尹氏がハードウェア開発チームとAIソフトウェア開発チームを統括する。戦略チームは現代自動車グループ出身の李東根副社長が率い、ロボットハンド研究で知られる亜洲大学の金義謙教授がマニピュレーション開発チームを担当する。
■Shallow-πとVLAモデル
サムスンのロボティクスAI開発は、新組織の発足以前から進められていた。
Samsung Researchは、Vision-Language-Action(VLA)モデルに属する「Shallow-π」を発表している。VLAモデルは、視覚情報の認識、言語理解、動作生成を単一のシステムで処理するロボット向けAIアーキテクチャである。
Shallow-πは、従来のVLAモデルに比べて処理効率を高める設計を採用し、毎秒17回前後の意思決定を実現したとされる。サムスンの研究発表では、サブミリメートル精度が求められるホース挿入作業で95%の成功率を示し、22自由度の双腕ロボットを高速に協調制御したという。
こうしたAI性能を十分に活用するには、アクチュエーターやセンサー、搭載計算機側も同等の応答性能を備える必要がある。そのため、ロボット本体とAIを並行して設計するアプローチは、情報処理と機械制御を一体として最適化する考え方に基づいている。
サムスンは関連する知的財産も積み重ねている。二足歩行の安定性に関わる股関節設計技術や、カメラ認識を活用して対象物の形状に応じた把持を行うロボットハンド技術などの特許を取得・出願している。
■汎用ヒューマノイドと産業ロボットを並行推進
サムスンのヒューマノイド戦略は二本立てで進められている。
2025年に経営権を取得したRainbow Roboticsは産業用途を重視し、双腕ロボットの可搬能力や作業範囲の拡大に取り組んでいる。業界関係者によれば、改良型RB-Y2が2026年11月のRobot Worldで公開される可能性もあるという。
一方、サムスン電子のRXプログラムは、多様な環境や非定型作業に対応できる汎用ヒューマノイド市場をターゲットとしている。CES 2027での試作機披露が実現すれば、同社が独自開発するヒューマノイド戦略を公に示す場となる。
Rainbow RoboticsのRB-Y1は、韓国のEC大手Coupangの物流拠点で試験導入されている。またSamsung SDSは、ヒューマノイドや協働ロボット、移動ロボットを統合管理する「ロボットオーケストレーションプラットフォーム」の構築計画を発表している。
■中国勢が支配する市場への挑戦
市場調査会社Smart Analytics Global(SAG)によると、2026年上半期の世界ヒューマノイドロボット出荷台数は約1万9100台に達し、中国メーカーが97%以上を占めたという。
AgiBotは約8400台で世界シェア44%を獲得し、Unitree Roboticsを上回ったとされる。SAGは2026年通年の出荷台数が約6万台、市場規模が約16億ドルに達すると予測している。
UnitreeのG1は約1万6000ドルで販売されており、中国の大規模サプライチェーンによるコスト競争力が大きな強みとなっている。
一方で、米連邦通信委員会(FCC)は2026年7月、外国製の高度ロボット機器を対象とする措置を発表した。対象となる新規機種は米国市場参入に必要な認証に制約を受ける可能性があり、中国メーカー各社への影響が注目されている。
韓国メーカーはこうした環境変化の中で、代替サプライヤーとしての機会獲得を目指している。
■CES 2027へ向けた準備
CES 2027までは約4カ月しか残されていないが、サムスンは基盤技術や開発体制をすでに整えつつある。
韓国メディアは、同社が以前から非公開のヒューマノイド開発プロジェクトを進めており、家電向けモーター技術を応用した独自アクチュエーター開発にも取り組んできたと報じている。
また、「Samsung Bot」の商標登録やロボット関連特許の蓄積からも、ロボティクス分野への継続的な投資がうかがえる。
グループ全体でも大規模な投資計画が進む。サムスン電子とSamsung SDSは、慶尚北道亀尾地区におけるヒューマノイド量産やAIデータセンター関連インフラ向けとして19兆ウォン規模の投資を計画している。Samsung SDIは蔚山工場で16兆ウォン規模の全固体電池投資を進め、Samsung Heavy Industriesも自動化造船所構想に10兆ウォン規模を投じる方針だ。ロボティクスやフィジカルAI関連のグループ投資総額は約60兆ウォンと報じられている。
韓国国内では現代自動車グループやLGグループもヒューマノイド開発を推進しており、非中国圏のヒューマノイド供給網を主導する企業を巡る競争が激しくなっている。
元記事: Samsung Unifies Humanoid Robot Hardware and AI Under Software Chief for CES Reveal