iPhoneの折りたたみ市場参入迫る―サムスンは「Galaxy Z Fold8」の薄さ・耐久性を訴求する広告キャンペーン
2026年9月9日 16:10
Samsung Electronicsは9月8日、折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold8」シリーズを訴求する世界規模の屋外広告キャンペーン「Welcome to Foldables」を発表した。ニューヨーク、ロンドン、東京、ソウルの大型デジタルスクリーンを使い、8世代にわたる製品開発の蓄積を前面に出している。
キャンペーンの発表は、Appleが9月9日に開催する「Surprise and Shine」イベントの直前となった。Appleは同イベントで、同社初の折りたたみiPhoneを発表すると広く予想されている。製品名や仕様、価格などは正式発表前の段階では確定していない。
■世界4都市のランドマークで広告展開
広告の掲出先は、ニューヨークのタイムズスクエア、ロンドンのピカデリー・サーカスとOuternet London、東京の渋谷駅、ソウルのCOEX K-POP LIVEと光化門のKT Squareの計6カ所である。
いずれも人通りが多く、広告映像が撮影されてSNSなどで広がりやすい場所だ。消費者への直接的な訴求に加え、Appleの新製品発表を前に世界的な注目が折りたたみスマートフォンへ集まるタイミングで、Samsungの開発実績を印象付ける狙いがあるとみられる。
広告では「Ultra Thin」「The World’s Lightest Fold」「Built to Outlast」という3つのメッセージを掲げている。薄さ、軽さ、耐久性という、折りたたみスマートフォンを選ぶ際の主要な評価軸に焦点を当てた内容だ。
Appleの折りたたみ端末については、折り目を目立ちにくくするヒンジやディスプレイ技術を採用するとの報道があるものの、正式な製品名や詳しい仕様は公表されていない。Samsungのキャンペーンは、競合製品の具体的な仕様に反論するというより、自社が積み重ねてきた製品開発の経験を先行して示すものと位置付けられる。
■軽量設計とFlex Titaniumを訴求
Galaxy Z Fold8は、開いた状態で厚さ4.5mm、重量201gとなっている。Samsungは同製品を「世界最軽量のFold」として訴求しており、日本の公式サイトでも同様の表現を使用している。メインディスプレイは7.6インチで、開いた状態では4対3の画面比率となる。
上位モデルのGalaxy Z Fold8 Ultraは、開いた状態で厚さ4.1mm、重量215gである。日本ではGalaxy Z Fold8、Galaxy Z Fold8 Ultra、Galaxy Z Flip8が8月7日に発売された。
Fold8シリーズのディスプレイには、Samsungが「Flex Titanium」と呼ぶ新たな構造が採用されている。OLEDパネルの下にチタン合金フィルムを配置し、さらにその下からチタンプレートでディスプレイモジュールを支える仕組みだ。
Samsungによると、チタン合金フィルムは従来のポリマーフィルムと比べて20倍の機械的強度を持ちながら、厚さを人の毛髪の約3分の1に抑えたという。チタンプレートの折り曲げ部分には微細な穴を設け、構造を支える強度と繰り返し開閉できる柔軟性の両立を図っている。
こうした設計は、折り目を目立ちにくくするとともに、薄型化と耐久性を両立させることを目的としている。20倍という数値は材料の機械的強度に関するSamsungの公表値であり、端末全体の寿命が従来製品の20倍になることを意味するものではない。
SamsungはFold8シリーズに、7年間のOSアップグレードとセキュリティアップデートを提供するとしている。「Built to Outlast」というメッセージは、ディスプレイ構造の改良と長期的なソフトウェアサポートをまとめて表現したものだ。
■バッテリー性能は容量とサイクル数を分けて評価
Galaxy Z Fold8は4,800mAh、Fold8 Ultraは5,000mAhのバッテリーを搭載する。Samsungの公称値では、Fold8は最大26時間、Fold8 Ultraは最大27時間の動画再生に対応する。
第三者によるバッテリーテストでも、Fold8シリーズは従来モデルから駆動時間を伸ばしている。一方、EUの製品データベースに登録されたFold8シリーズの充電サイクル数は、初期容量の80%に低下するまで1,200回となっている。
前世代のFold7シリーズには2,000回との表示があったが、世代間で評価基準が異なるため、数値だけから電池寿命が単純に短くなったとは判断できない。1,200回は毎日1回の完全な充放電を行うと約3年3カ月に相当するが、実際の劣化速度は充電方法、温度、使用頻度などで変わる。
したがって、Fold8シリーズのバッテリーは、端末の薄さを抑えながら容量と実使用時間を伸ばした点と、公開されている充電サイクル数を分けて評価する必要がある。
■8世代の開発経験を競争力に
Samsungは2019年に初代Galaxy Foldを発売して以来、折りたたみスマートフォンの開発を継続してきた。2026年のFold8シリーズは、同社の折りたたみ端末として8世代目に当たる。
Samsungは今回のキャンペーンで、折りたたみ端末を先行して市場へ投入したことだけでなく、画面比率、重量、厚さ、折り目、耐久性、ソフトウェアなどを世代ごとに改良してきた経験を競争力として示している。
同社はキャンペーンについて、「Welcome to Foldablesは次の章を歓迎すると同時に、このカテゴリーを現在の姿へ導く一助となった、何世代にもわたる経験を思い起こさせるものでもある」と説明している。
歓迎を打ち出す表現は、過去にSamsungが展開したAppleへの比較広告よりも抑制的だ。2011年にはiPhone 4Sを待つ行列を題材にGalaxy S IIの機能を訴えるテレビ広告を展開し、2012年には「It doesn’t take a genius」のコピーを使ってGalaxy S IIIとiPhone 5を比較した。
今回は競合製品を直接批判するのではなく、Samsung自身の製品開発の歴史を中心に据えている。Appleの参入によって折りたたみスマートフォンへの関心が高まる状況を、自社の経験とブランドを訴求する機会として利用した形だ。
■Apple参入で市場拡大と競争激化
折りたたみスマートフォンは成長が続く一方、スマートフォン市場全体に占める割合は依然として約2%にとどまる。Counterpoint Researchは、世界の折りたたみスマートフォンの累計出荷台数が2026年末までに1億台を超えると予測している。
同社の2026年8月時点の予測では、2026年の世界市場における出荷台数シェアはSamsungが38%、Appleが25%、Huaweiが22%となる見通しだ。Appleの折りたたみiPhoneは、初年度に最大600万台が出荷され、Samsungに次ぐ2位に入ると予想されている。
ただし、これらはApple製品の正式発表前にまとめられた市場予測である。実際の出荷台数やシェアは、価格、発売地域、供給量、消費者の反応によって変わる可能性がある。
IDCも、Appleの参入が折りたたみスマートフォン市場の成長を促すと予測している。同社が2025年12月に公表した予測では、Appleは初年度に台数ベースで22%超、金額ベースで34%のシェアを占めるとされた。金額シェアが高いのは、Apple製品の平均販売価格を約2,400ドルと想定しているためである。
Appleの参入はSamsungにとって市場全体を拡大する要因であると同時に、プレミアム価格帯でシェアを争う新たな競争要因となる。Samsungが世界の主要広告拠点で8世代の経験を強調した背景には、この二つの側面がある。
■Appleイベントは日本時間9月10日午前2時
Appleの「Surprise and Shine」イベントは、米国太平洋時間9月9日午前10時、日本時間では9月10日午前2時に始まる。開催場所はカリフォルニア州クパチーノのApple Parkである。
イベントは、9月1日にTim Cookの後任としてCEOに就任したJohn Ternusの下で初めて開催される大型製品発表となる。Ternusは2001年にAppleへ入社し、2021年からハードウェアエンジニアリング担当Senior Vice Presidentを務めていた。
折りたたみiPhoneのほか、iPhone 18 Proシリーズや新しいApple Watchなどの発表が予想されているが、正式な製品構成、仕様、価格、発売地域はイベントで明らかになる見通しだ。
Samsungの広告キャンペーンが購入判断に与える影響は現時点では分からない。それでも、Apple初の折りたたみ端末に注目が集まる直前に、Samsungが薄さ、軽さ、耐久性、8世代の開発経験を世界規模で訴求したことは、折りたたみスマートフォン市場の競争が新たな段階に入ったことを示している。
元記事: Welcome to Foldables: Samsung Hits Times Square, Shibuya, Piccadilly Before Apple’s Event Tomorrow