ハンドルなしのテスラ「サイバーキャブ」、米当局が適合認証を調査―運行は継続
2026年9月6日 17:16
米テスラ(Tesla)が9月3日、米テキサス州オースティンで専用ロボタクシー「Cybercab」の商用運行を始めた。同日、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、Teslaが同車を連邦自動車安全基準に適合すると自己認証した根拠を調べる監査照会を開始した。
監査照会は情報収集を目的とする調査段階であり、NHTSAは違反を認定していない。Cybercabの運行停止やサービスの中止も命じられていないが、調査の結論は、運転操作装置を持たない車両をTeslaが現在の設計のまま大規模展開できるかを左右する可能性がある。
■Cybercabの自己認証を問う監査照会
NHTSAの監査照会「AQ26002」は、推定1000台を調査対象台数として記載している。これは実際にオースティンへ一斉投入された台数を示すものではない。NHTSAの文書によると、Teslaはまず少数のCybercabで商用展開を開始し、今後、車両数と運行地域を段階的に増やす計画を当局へ通知した。
Cybercabには、車体に固定された従来型のステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル、ミラーがない。NHTSAが調べるのは特定の事故や既知の欠陥ではなく、Teslaが同車について、適用されるすべての連邦自動車安全基準(FMVSS)を満たすと判断した際の手続きと技術資料である。
米国の自動車認証制度では、メーカーが自社の車両についてFMVSSへの適合を自己認証する。政府機関が販売前に個々の車両を承認する制度ではなく、NHTSAは認証後も資料の提出を求め、基準への適合状況を調査できる。
Teslaは、Cybercabが適用されるすべてのFMVSSに適合すると自己認証した。その過程で、従来の運転操作装置を前提に設けられた一部の基準について、該当する装置を持たないCybercabには適用されないと判断したとみられる。
AQ26002では、Teslaの認証が「特定のFMVSSはCybercabに適用されない」との判断に、どの程度依存していたかが検討対象となる。NHTSAは、ブレーキペダルや後方視界、照明、ワイパーなど、自動運転専用車の設計と整合しにくい既存基準の見直しを進めているが、規則改定が完了するまでは現行基準が引き続き適用されるとの立場を示している。
NHTSA長官のJonathan Morrisonは、「NHTSAは自動運転車の安全な開発と展開を全面的に支持している。しかし連邦規制当局として、すべての法律が守られるようにする必要がある」と述べた。
現段階の監査照会は執行措置ではない。NHTSAはCybercabの自己認証が不適切だったとの判断を示しておらず、Teslaのロボタクシーサービスは調査開始後もオースティンで運行を続けている。
■Zooxも自己認証から適用除外へ移行
運転操作装置を持たない専用ロボタクシーの認証を巡っては、Amazon傘下のZooxに類似した経緯がある。
Zooxは2022年7月、双方向に走行でき、従来型の運転操作装置を持たない専用車両について、すべての適用対象FMVSSに適合すると自己認証したと発表した。NHTSAは同年9月に特別命令を出して認証根拠の提出を求め、2023年3月に監査照会「AQ23001」を開始した。
NHTSAは調査中、Zooxが提出した資料を評価するとともに、車両2台を現地で検査した。2024年12月にまとめた検査報告では、複数のFMVSSに適合していない可能性が指摘された。
Zooxはその後、当初の自己認証を維持するのではなく、適用除外を利用する方針へ移行した。2025年6月には、公道での実証を目的とする適用除外を申請し、NHTSAは同年8月4日に条件付きで認めた。これに伴い、AQ23001は閉じられた。
さらにNHTSAは2026年7月30日、Zooxに商用展開のための一時的な適用除外を認めた。対象は年間最大2500台で、期間は2年間とされ、運行状況に応じて変更可能な監督条件が付けられている。
この経緯は、監査照会そのものが直ちに運行停止や適用除外申請につながるわけではない一方、メーカーの適用判断が認められなければ、設計変更や別の規制手続きが必要になる可能性を示している。Teslaは現時点でPart 555に基づく適用除外を申請しておらず、申請する方針も公表していない。
■年間2500台の上限が量産計画の焦点に
Part 555は、一定の条件を満たしたメーカーに対し、一部のFMVSSに適合しない車両の製造や販売を一時的に認める制度である。自動運転専用車の商用化にも利用できるが、原則として1年間に認められる台数は2500台に限られる。
Teslaが将来的にCybercabを年間数万台以上の規模で生産、展開する場合、この上限は事業計画上の制約になり得る。そのため、特定のFMVSSがCybercabには適用されないとの自己認証が認められるかどうかは、個々の車両の認証だけでなく、量産規模にも関わる。
NHTSAがTeslaの判断を妥当と認めれば、AQ26002は執行措置なしで終了する可能性がある。この場合、運転操作装置を備えない専用自動運転車に対し、どの基準が適用されるかを判断する上で重要な事例となる。
一方、適用対象となるFMVSSへの適合が必要だったとNHTSAが判断すれば、Teslaには追加資料の提出に加え、設計変更、車両の是正、リコール、適用除外申請などが求められる可能性がある。具体的な措置は調査結果によって決まり、現時点では確定していない。
■自動運転専用車に合わせた規則改定も進行
NHTSAは、自動運転システムだけで走行する車両に従来型の操作装置を一律に求めることが、車両設計と合わなくなっているとして、複数のFMVSSの改定作業を進めている。
2026年6月25日には、自動運転システムだけで走行するよう設計された車両について、手動のブレーキペダルを求める規定を削除する規則制定手続きを開始した。停止距離などブレーキ性能に関する要件は維持し、手動操作装置を備える車両には従来の要件を引き続き適用する方針である。
NHTSAはCybercabの調査開始に際し、ブレーキペダル、ワイパー、照明、後方視界などに関する基準の見直しを進めていると説明した。ただし、新たな規則が成立するまでは既存の基準が有効であり、規則改定の予定だけで現在の認証上の問題が解消されるわけではない。
規則改定の内容や発効時期によっては、AQ26002で検討される論点の一部に影響する可能性がある。NHTSAは、Cybercabの監査照会を終える時期を公表していない。
■FSDでは視界低下時の警告機能も調査
TeslaはCybercabの認証とは別に、消費者向け車両の運転支援システム「Full Self-Driving(Supervised)」を巡るNHTSAの調査も受けている。
NHTSAは2026年3月18日、従来の予備評価「PE24031」を、より詳細な技術分析を行うEngineering Analysis「EA26002」へ移行した。対象はFSDを搭載するModel S、Model X、Model 3、Model Y、Cybertruckの推定320万3754台である。
調査の中心は、まぶしさ、霧、空中の粉じんなどで道路の視認性が低下した際、FSDが性能の低下を検知し、運転者へ十分な時間をもって警告できるかという点にある。NHTSAの開始文書には関連する9件の衝突が記載され、そのうち2件が負傷事故とされている。
EA26002が対象とするFSDは、運転者が常に監視し、必要に応じて操作を引き継ぐことを前提とした先進運転支援システムである。Cybercabの認証を扱うAQ26002とは、対象となる車両、法的論点、調査目的が異なるため、両調査の結論はそれぞれ個別に判断される。
■Wayveはロンドンで監督付き運行を開始
Teslaが運転操作装置のないCybercabを展開する一方、英国ではWayveとUberが2026年9月3日、ロンドンで監督付きの自動運転配車サービスを始めた。
Wayveの車両には、自動運転システム「Wayve AI Driver」とカメラ、レーダーが搭載される。乗客はUberの通常の配車サービスを通じて車両とマッチングされるが、すべての運行に、ロンドン交通局の免許を持つ訓練済みのハイヤー運転者が同乗する。
WayveとUberは少数のFord Mustang Mach-Eでサービスを開始し、需要、技術的な準備、規制環境に応じて段階的に増やすとしている。開始時点で14万人を超えるロンドン市民が、自動運転車とマッチングされる可能性を高めるための設定を選択していた。
CybercabとWayveの車両は、いずれも自動運転システムが走行を担うが、運転操作装置や車内の監督者の有無、利用する認証制度は異なる。各社が異なる制度と運行形態を採用する中、TeslaのAQ26002は、米国で運転操作装置を持たない専用自動運転車を大規模展開する際の認証経路を占う事例となる。
Teslaは調査に関する報道機関からのコメント要請に回答していない。
元記事: Tesla Cybercab Launched; NHTSA Opened Probe It Once Sent Zoox Down for Four Years