【視点】世界で「高金利時代」鮮明に、政府・企業・家計を圧迫

2026年9月5日 19:20

 低金利を前提とした時代が終わり、借入コストが今後数年にわたり高止まりする可能性が強まっている。政府、企業、家計はいずれも、どこまで債務負担に耐えられるのかを見直す局面に入った。

 世界的な債券売りにより、主要国の国債利回りは数年から数十年ぶりの高水準に上昇した。財政赤字の穴埋めや企業の事業拡大から、住宅ローン、自動車ローンまで、経済の幅広い領域で資金調達コストが高まっている。

 ドイツの10年物国債利回りは一時3.378%と2011年以来の高水準を付けた。日本の10年物国債利回りは3%を上回り、米10年物国債利回りは一時4.814%と2023年11月以来の高水準に達した。英国の10年物国債利回りも一時5.25%と2008年以来の水準まで上昇した。

 背景には、各国政府による大規模な国債発行、原油価格の急騰に伴うインフレ懸念の再燃、中央銀行が従来の想定より長く金融引き締めを続けるとの見方が同時にある。

 アナリストはCNBCに対し、今回の利回り上昇は、一時的な市場の混乱にとどまらない可能性があると指摘した。

■政府、借り換えで利払い負担増
 最も大きな影響を受ける可能性があるのが政府である。多くの国は資金調達コストが極めて低かった時期に債務を大幅に積み上げた。既発債が償還期を迎えると、現在のより高い金利で借り換える必要があり、利払い費は徐々に増加する。予算のうち、ほかの政策に充てられる資金も圧迫される。

 ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの債券シニアストラテジスト、Masahiko Loo氏は、財政赤字、債務負担、政治的不透明感が重なるフランスが先進国の中で特に目立つと指摘した。国外からの資金調達への依存度が高い新興国は、さらに大きな圧力を受ける可能性がある。

 日本は問題の大きさを示す代表例である。IMFの2026年4月時点の推計では、日本の一般政府総債務は2026年に国内総生産(GDP)の204.4%に達する。

 日本の財務省によると、2026年度一般会計予算の国債費は31兆2758億円で、歳出総額122兆3092億円の25.6%を占める。国債費には13兆672億円の利払い費などに加え、18兆2086億円の債務償還費が含まれる。

■企業の投資計画にも影響
 企業も債務負担を見直さざるを得ない。既存債務を借り換える企業や、事業拡大に向けて新たに資金を調達する企業は、従来より高いコストに直面する。債務比率が高い企業や変動金利の融資への依存度が高い企業ほど影響を受けやすい。

 Loo氏が特に脆弱な分野として挙げたのは、商業用不動産、プライベートエクイティの出資を受けた企業、ダイレクトレンディングの融資資産、信用力の低いソフトウエア企業である。これらの分野では、資金を安価に調達できる状態が続くとの想定に基づき、多くの投資案件が組成されてきた。

 人工知能(AI)ブームは、資金獲得競争を一段と激しくする可能性がある。テクノロジー企業は、データセンターなどのAIインフラを整備するため巨額の資金を借り入れている。次世代のコンピューティング基盤を構築する企業は、債券を購入する投資家の資金を巡り、政府やほかの企業と競うことになる。

 資金調達コストがさらに上昇すれば、一部のデータセンターや工場、企業買収、事業拡大計画は、経済的な採算性を確保しにくくなる可能性がある。

■家計への影響には格差
 消費者への影響は均一ではない。長期国債利回りは住宅ローンや自動車ローンなど、家計向け融資の金利にも影響する。

 低所得世帯では、所得に占める債務返済や生活必需品への支出の割合が一般に高く、金利上昇の影響を受けやすい。

 多くの借り手が固定金利型の融資を利用しているため、影響が表面化するまでには時間がかかる可能性がある。債務の返済期限が到来し、より高い金利で借り換える段階になると負担が増す。

■株式の相対的な魅力が低下
 株式投資家も無関係ではない。国債利回りが上昇すると、株式に代わる投資先として国債の魅力が高まる。同時に、企業が将来得る利益の現在価値が低下するため、株式のバリュエーションには下押し圧力がかかる。

 株式市場はこれまで、企業業績やAIへの期待を支えに底堅さを保ってきた。ただ、CIFCアセット・マネジメントのマネージングディレクター、ナタリア・ロジェフスキーは、利回り上昇がいずれ株式市場にとって痛手になると警告した。

 一方、現在の高い利回りで債券を購入する投資家は恩恵を受ける。利息収入が大きくなることで、その後に債券価格が下落した場合の損失を吸収しやすくなる。

 ドイツ銀行は、今後1年間に米10年物国債利回りが約5.5%まで上昇しても、受け取る利息収入が債券価格下落による損失を補えると試算している。利回りがそれ以上に上昇すると、価格下落による損失が利息収入を上回る可能性がある。

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