【分析】SKハイニックス、過去最高益でも株価急落——AI半導体市場を揺るがす「3つの懸念」

2026年7月30日 01:25

韓国の半導体大手SKハイニックス(SK Hynix)は2026年第2四半期決算で過去最高の営業利益を記録したものの、市場予想に届かず、株価は急落した。さらに、NvidiaによるOpenAIへの資金支援、中国のCXMTによるIPO、中国製DUV露光装置の量産開始に関する報道という3つの要因が重なり、AI半導体市場の先行きに対する投資家の懸念に拍車をかけている。AIインフラ投資の継続性については、今週予定されている大手ハイパースケーラーの決算発表が次の試金石となる見通しだ。

■記録的な決算と市場予想の未達

SK Hynixが発表した2026年第2四半期の営業利益は60兆5400億ウォン(約416億ドル、約6兆8224億円、1ドル=164円換算)で、前年同期比557%増となり、同社史上最高を記録した。しかし、米国上場の同社株は、ナスダック上場以来の最安値に沈んだ。その理由は単純で、現在の利益よりも「次に何が起こるか」が重視されているためだ。今週明らかになった3つの動向により、投資家には「次」が「今」ほど収益性の高いものにならないと疑う十分な理由が生じた。

この対照は鮮明だった。SK Hynixの米国預託証券(ADR)は火曜日に130.49ドルで取引を終え、8.76%下落して、今月初めのナスダック上場以来の最安値を更新した。韓国市場に上場する同社株もソウルで14.7%下落した。市場全体の急落により、主要株価指数のKOSPIは10.8%下落し、2026年3月以来最大の下げ幅を記録した。Samsung Electronicsも13.4%下落し、約20年ぶりの大幅安となった。

業績の数字は、過去のいかなる基準に照らしても驚異的だった。SK Hynixが報告した2026年第2四半期の営業利益は60兆5400億ウォン(約416億ドル、約6兆8224億円)、純利益は93兆9200億ウォン(約641億ドル、約10兆5124億円)、売上高は79兆3200億ウォン(約541億ドル、約8兆8724億円)だった。営業利益は前年同期比557%増、売上高は同257%増となった。上半期の累計売上高は、同社史上初めて100兆ウォンを突破した。また同社は、最新世代の広帯域メモリ(HBM)である「HBM4」の量産品の出荷を第2四半期に開始し、下半期には生産を拡大する予定であることを確認した。

しかし、市場の当初の反応は、アナリストが数週間前から警告していた「ハードルは過去最高というだけでは越えられないほど高くなっている」という状況を反映していた。直近の予測実績が優れたアナリストに比重を置くLSEG SmartEstimateのコンセンサス予想では、営業利益は64兆ウォン(約437億ドル、約7兆1668億円)と見込まれていたが、実績は60兆5400億ウォンにとどまった。売上高も、コンセンサス予想の84兆ウォンを下回った。通常の決算環境であれば、前年同期比500%以上の増益は歓迎されるだろう。しかし、現在のAI半導体株を巡る取引では、ほぼ完璧な業績が織り込まれており、完璧に近いだけでは十分ではなかった。

Tiger Brokersの市場ストラテジスト、James Ooi氏は、「SK Hynixの決算は、AIハードウェアに対する世界的な市場心理を測る試金石にもなり得る」と述べた。「期待はほぼ完璧な水準まで織り込まれているため、わずかな未達でも急激な反応を引き起こす可能性がある」

■同じ週に重なった3つの悪材料

今回の決算未達は、AIメモリ関連への投資家の信頼をすでに揺るがしていた3つの出来事と重なった。

1つ目は、NvidiaによるOpenAIへの2500億ドル(約41兆円)の資金保証に関する報道だ。日曜日に公開されたWall Street Journalの報道によると、Nvidiaは、OpenAIがオハイオ州南部の10ギガワット規模のデータセンターキャンパスを賃借できるよう、2500億ドルの資金保証を提供する方向で交渉しているという。この施設はSoftBankのエネルギー子会社が開発しており、総費用は5000億ドル(約82兆円)を超える可能性がある。OpenAIは投資適格級の信用格付けを持たないため、事実上、Nvidiaのバランスシートが信用力を補完することになる。

さらに、NvidiaはOpenAIによるチップ購入に向け、最大3500億ドル(約57兆4000億円)の資金調達について別途協議しているとも報じられている。合計6000億ドル(約98兆4000億円)に上る可能性のある支援は、Nvidiaから支援を受けた企業がその資金を使ってNvidia製チップを購入する「循環融資」だとして、直ちに批判を浴びた。批判的な立場の人々は、この閉じた資金循環によって、真に外部からの需要が存在するのかが見えにくくなると主張している。NvidiaのCEOであるJensen Huang氏は、こうした見方を「ばかげている」と退けた。しかし懸念は信用市場にも波及し、取引に関する報道を受けて、Nvidiaの債務不履行に備える保証コストが急上昇した。

循環融資への懸念には、別の材料も重なった。SK Groupは今週初め、米国のパートナーとの730兆ウォン(約4980億ドル、約81兆6720億円)規模の戦略的協業計画を発表した。この計画はSK Hynixの長期的な資金調達手段の確保にはプラスである一方、AIサプライチェーンにおける財務面の相互依存について疑問を生じさせた。

2つ目は、CXMT(ChangXin Memory Technologies、長鑫存儲)のIPOだ。月曜日、CXMT株は上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場し、初日の取引で466%急騰した。約579億2000万元(約86億ドル、約1兆4104億円)を調達し、中国本土の半導体企業として過去最大のIPOとなった。CXMTの時価総額は一時約3兆3000億元(約4870億ドル、約79兆8680億円)に達し、中国のA株市場で時価総額が最大の上場企業となった。この上場をきっかけに、中国最大のDRAMメーカーが世界のメモリ市場への供給を増やし、SK Hynixの記録的な利益率を支えてきた価格決定力を脅かすのではないかという投資家の懸念が再燃した。

CXMTは、標準型DRAMの分野ですでに現実的な競争相手となっている。同社のIPO目論見書によると、2025年末時点の世界DRAM市場におけるシェアは約7.67%で、以前の3.97%から大きく拡大した。野村は、このシェアが2028年末までに約18%へ達する可能性があると予測している。

3つ目は、中国におけるDUV露光装置の進展だ。日曜日に公開されたThe Informationの報道によると、上海の政府支援企業が液浸深紫外線(DUV)露光装置の量産を開始したという。これは、オランダのASMLが長年にわたり優位を保ってきた重要な半導体製造装置で、今年中にSMIC、Hua Hong、CXMTへ初めて納入される見通しとされる。

生産量は2026年に約5台、2027年に約20台と小規模だが、心理的な影響は直ちに表れた。中国が自国で半導体製造装置を生産できるようになれば、同国の半導体産業の発展を制約してきた輸出規制の有効性が一部低下する可能性があるためだ。

このニュースを受けてASML株は下落した。米国に上場する半導体製造装置企業のApplied MaterialsとLam Researchも下落した。世界のメモリ関連株にも売りが広がり、日本のキオクシアホールディングスは18.3%、台湾のMediaTekは10%下落した。米国ではMicron TechnologyとSanDiskがそれぞれ8%以上急落した。

■CXMTがSK Hynixを脅かす領域とそうでない領域

表面的な下落率だけでは捉えにくい点がある。投資家が月曜日の株価に織り込んだ競争上の脅威は現実のものだが、その範囲は市場が想定したほど広くない。

CXMTがシェアを伸ばしてきたのは、スマートフォン、ノートパソコン、汎用サーバーで使われる標準的なメモリチップであるコモディティDRAMの分野だ。同社の主力製品にはDDR5やLPDDR5のモジュールがあり、同一カテゴリーのSamsungやSK Hynixの製品より約5〜10%安く価格設定されている。製造プロセスは業界大手より約2〜3世代遅れており、CXMTが16ナノメートル級のDRAMプロセスを使用する一方、SamsungとSK Hynixは、より高い集積度と効率を実現する10ナノメートル級のプロセスで生産している。

SK Hynixが実際に利益の大部分を得ている市場は、これとは大きく異なる。広帯域メモリ(HBM)は、単に高速なDRAMというだけではない。複数のDRAMダイを垂直に積層し、シリコン貫通電極(TSV)と呼ばれる微細な垂直配線で接続したうえで、シリコンインターポーザ上のプロセッサのすぐ隣に配置する、根本的に異なるアーキテクチャだ。

この構造により、標準的なDDR5の64ビットに対して最大1,024ビットのバス幅を実現し、AIの学習と推論に必要な毎秒テラバイト級のデータ転送能力を可能にする。SK Hynixが2026年第2四半期に出荷を開始したHBM4は、ピン当たり毎秒9.6ギガビットのデータ転送速度を実現する。さらに、NvidiaのAIプラットフォーム「Vera Rubin」では、ピン当たり毎秒10ギガビットを超える速度での認定が求められている。

SemiAnalysisのデータによると、CXMTの現在のHBM生産能力は、ウエハー投入枚数で月約5,000枚とされる。一方、SK Hynixの全製品ラインを合わせたDRAM全体のウエハー投入枚数は、月約59万5,000枚と推定されている。両者は対象範囲が異なるため単純比較はできないものの、生産規模には大きな差がある。

コモディティDRAMからHBM級の製品へ移行するには、製造プロセスの微細化だけでなく、TSVやシリコンインターポーザを用いる高度な3Dパッケージング技術を習得する必要がある。CXMTはこうした能力を開発しているが、まだ大規模生産には展開していない。

DUV露光装置の進展は、CXMTを含む中国企業による製造装置の自給力を高めるが、HBMにおけるこの格差を直接解消するものではない。露光は半導体製造を構成する工程の1つにすぎない。HBMの積層に必要なパッケージング工程は別のものであり、異なる装置と専門知識を必要とする。TechTimesが同日報じたように、中国の新しいDUV装置が意味するのはASMLへの供給面での依存低下であり、中国製メモリをAIインフラの最先端へ一足飛びに押し上げるような技術力の飛躍ではない。

■半導体市場全体への波及

火曜日の下落の広がりは、AI半導体を巡る投資がいかに強く連動しているかを示した。投資家が業界全体のポジションを解消したため、PHLX半導体株指数(SOX)は3%以上下落した。米国上場銘柄では、Micron Technologyが8%以上、SanDiskが13%、AMDが7%以上下落した。半導体製造装置企業ではASML、Applied Materials、Lam Researchが下落した。Nvidiaは取引序盤の下落から持ち直し、最終的には前日比プラスで取引を終えた。

SK Hynixによる時価総額減少への寄与は、同社の規模に比べても大きかった。月曜日に主要メモリ半導体企業6社から失われた5410億ドル(約88兆7240億円)超の時価総額のうち、SK Hynixは約950億ドル(約15兆5800億円)を占めた。火曜日の決算発表を受けて下落がさらに拡大する前の段階で、すでに6社のうち最大の減少要因となっていた。

過去6週間という期間で見ると、状況はさらに厳しい。SK Hynix株は6月の史上最高値から約47%下落し、時価総額は6000億ドル(約98兆4000億円)近く減少した。この減少額は、世界有数の大企業の時価総額に匹敵する規模だ。

■強気シナリオが依然として存在する理由

AIメモリ需要を支える構造的な論拠は崩れていない。SK Hynixは2026年第2四半期を迎えた時点で、過去一世代の中でも特に競争力を守りやすい市場ポジションを確立していた。

Goldman Sachsは、2026年のDRAMの需給ギャップを4.9%と推定し、過去15年間で最も深刻な供給不足だと説明している。DRAMのスポット価格は2026年1月以降約52%上昇しており、供給が逼迫した状況は2027年まで続くと予想されている。

この供給不足の中で、SK Hynixの戦略的地位を強めているのがNvidiaとの関係だ。業界アナリストは、NvidiaのAIプラットフォーム「Vera Rubin」向けHBM4の割当量について、SK Hynixが約60〜70%、Samsungが約25〜30%を占め、残りをMicronが供給すると推定している。

原文では、この割り当てについてNvidiaのCEOであるJensen Huang氏が6月のソウル訪問時に公に確認したとしている。これは、SamsungやMicronがまだ同等の規模では実現していない、長年にわたる製品認定の実績と歩留まりを反映したものとされる。

また、同社は2026年上半期の累計売上高が史上初めて100兆ウォン(約683億ドル、約11兆2012億円)を突破したと報告した。この節目は、メモリ需要の構造的な変化を反映しており、1四半期だけの一時的な現象ではない。

■投資家が次に注目すべきポイント

AIメモリ関連銘柄にとって次の試金石は、Microsoft、Amazon、Metaが決算を発表する今週に訪れる。これらのハイパースケーラーが、AIインフラへの支出がわずかでも減速していることを示せば、データセンター向け製品を供給する企業への圧力は再び強まるだろう。反対に、投資の加速が続いていると確認されれば、6月の高値まで半導体株を押し上げた投資シナリオへの信頼が部分的に回復する可能性がある。

米連邦準備制度理事会(FRB)の政策方針も株価への圧力となっている。Kevin Warsh議長の下、FRBは、以前より多くの政策担当者が年内の利上げを支持していることを示唆した。これは従来の見通しからの転換となる。金利が上昇すると、半導体株のように株価評価倍率の高いグロース株は、他の投資対象と比べた相対的な魅力が低下しやすい。

SK Hynixについて焦点となるのは、7月の売り局面で一体のものとして織り込まれたように見える2つの異なる競争リスクを、投資家が切り分けて考えられるかどうかだ。CXMTのコモディティDRAMにおける前進は現実であり、その動きは加速している。

一方、SK Hynixの現在の利益率の優位性を主に支えるHBM4級の製品をCXMTが量産するまでには、全く異なる一連の技術的障壁が存在する。DUV露光装置の自給という節目を達成しただけで、これらの障壁が自動的に解消されるわけではない。

投資家がその違いを認識するかどうか、またTessara Researchが主張するように、今回の市場予想未達が構造的な需要問題ではなく、HBM契約の売上計上時期による一時的なずれだったと明らかになるかどうかが、火曜日の取引が底値となるのか、それとも新たな局面への転換点となるのかを左右するだろう。

※本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を構成するものではありません。

■注目ポイントQ&A

●SK Hynixの決算は記録的だったのに、なぜ株価は下落したのですか?

SK Hynixは2026年第2四半期に、前年同期比557%増となる60兆5400億ウォン(約416億ドル、約6兆8224億円)の営業利益を報告しました。しかし、この数字はアナリストのコンセンサス予想である64兆ウォン(約437億ドル、約7兆1668億円)を下回りました。AI半導体株がほぼ完璧な業績を前提に評価されていたため、この市場予想未達に、中国CXMTのIPO、NvidiaとOpenAIを巡る循環融資への懸念、中国製DUV露光装置の量産開始に関する報道が重なり、利益水準から見れば大幅な株価下落につながりました。

●HBMとは何ですか?中国のCXMTは実際にSK Hynixの地位を脅かしているのですか?

広帯域メモリ(HBM)は、複数のDRAMダイをシリコン貫通電極(TSV)と呼ばれる微細な配線で垂直に接続し、シリコンインターポーザ上でGPUなどのプロセッサの隣に配置する3D積層型のメモリアーキテクチャです。最大1,024ビットのバス幅と、ピン当たり毎秒9ギガビットを超えるデータ転送速度を実現し、標準的なDDR5を大きく上回ります。

CXMTの現在のHBM生産能力は、ウエハー投入枚数で月約5,000枚と推定されています。HBMを製造するには、CXMTがシェアを伸ばしてきたDRAM製造プロセスの改善とは別に、TSV形成やシリコンインターポーザの組み立てといった高度なパッケージング技術が必要です。市場は、コモディティDRAMにおける現実の競争上の脅威と、CXMTがまだ大規模な実行能力を示していないHBM分野の脅威を混同している可能性があります。

●循環融資とは何ですか?なぜNvidiaとOpenAIの取引が投資家の懸念を呼んでいるのですか?

循環融資とは、Nvidiaが顧客に保証や投資を提供し、その顧客が得た資金を使ってNvidia製チップを購入するような資金循環の構造を指します。今回のケースでは、OpenAIによるオハイオ州のデータセンター賃借に対し、Nvidiaが2500億ドルの資金保証を検討していると報じられています。

批判的な立場の人々は、この仕組みによって、Nvidiaから独立した実需が本当に存在するのかが見えにくくなると主張しています。Nvidiaによる債務保証があるからこそ顧客が製品を購入できているのであれば、需要の減速がNvidiaの売上高と信用リスクの双方に同時に波及する可能性があります。OpenAIが投資適格級の信用格付けを持たないことも、懸念を強めています。なお、Nvidiaは循環融資との見方を否定しています。

●中国の新しい国産DUV露光装置により、中国が製造できるチップは変わりますか?

短期的には変わりません。変わるのは、中国が半導体製造装置をどこから調達するかであり、その装置で製造できるチップの水準ではありません。液浸DUV露光では、1回の露光で28ナノメートル級の微細加工が可能です。マルチパターニングと呼ばれる技術を使えば7ナノメートル級の製造にも対応できますが、歩留まりが低くなり、パターンの重ね合わせも大幅に複雑になります。

SMICを含む中国の主要ファウンドリーは、すでにASMLのDUV装置を使い、同じ手法で7ナノメートル級のチップを製造していました。新しい国産装置は、DUV級の製造における中国のASMLへの依存を減らしますが、DUVより高い歩留まりで最先端チップを製造できる極端紫外線(EUV)露光との格差を埋めるものではありません。

元記事: Record Earnings, Record Low: SK Hynix Stock Falls After Missing Q2 Estimates

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