SoundCloud、閉鎖したNina Protocolのアーカイブを取得 アーティストには移行手段を提供

2026年7月25日 15:39

ブロックチェーンを活用した音楽マーケットプレイス「Nina Protocol」は5年間にわたり、「アーティストは得た収益のすべてを受け取り、楽曲は企業の仲介者が手を出せない分散型基盤に恒久保存される」という、技術的には正しいものの経済的には厳しい構想を追求してきた。プラットフォームのWebサイトが恒久的にオフラインとなった7月22日、SoundCloudは、Ninaのエディトリアル・アーカイブとジャンルマップを取得し、Ninaのアーティストがカタログを移行できる選択肢を提供すると発表した。ブロックチェーン基盤そのものは買収対象に含まれていない。

今回の取引はSoundCloudにとって4年ぶりの買収であり、同社の方向性をよく示すものでもある。SoundCloudが取得するのはNinaの技術ではない。楽曲ファイルはすでに、特定の一社が所有するものではないArweaveの「permaweb」に保存されている。SoundCloudが手に入れるのは、Ninaがコミュニティ内で築いた信頼と5年間にわたる音楽ジャーナリズムの蓄積だ。一方、Ninaのチームや運営基盤は取得せず、Nina自身の事業終了報告が示すように、ブロックチェーンによる配信が当初解決を目指した問題を解消したと主張するものでもない。

■SoundCloudが取得したものとブロックチェーン上に残したもの

Nina Protocolは2021年、独立系ミュージシャンのジャック・キャラハン、マイク・ポーラード、エリック・ファーバーによってニューヨークで設立された。プラットフォームは、相互に補完する2層のブロックチェーン基盤上に構築されていた。マーケットプレイスの取引には、1秒間に数千件の処理が可能で、1件当たり数セント未満の手数料で利用できる高スループットのブロックチェーン「Solana」を採用した。これにより、1回の販売で数ドルに達することもあるEthereumの高額で予測しにくいガス代を回避した。

ストレージにはArweaveを利用した。Arweaveは「blockweave」と呼ばれる構造と一度限りの料金モデルを採用し、その料金を原資とする基金によって約200年間のデータ保存を支えるよう設計されている。いわゆる「permaweb」により、運営会社が消滅しても、アップロードされた音楽へ無期限にアクセスできることを目指した仕組みだ。

技術的な構造には一貫性があった。しかし、経済性は伴っていなかった。

音楽業界ニュースレターのComponentsが2026年7月に公表した独立分析によると、Ninaの全運営期間を通じた総売上は約5万ドル(約820万円、1ドル=164円換算)だった。約3万7,000件の出品のうち、およそ77%は一度も購入されなかった。プラットフォーム上の売上実績で上位3%に相当する97パーセンタイルに入るために必要な購入数も、わずか5件だった。

Ninaは2025年10月、1ドル(約164円)の「Community Revenue Share」手数料を導入し、そのうち50セントをプラットフォーム運営に充てる仕組みとした。これは、事業終了発表の8カ月未満前のことだった。

Ninaは2026年5月の事業終了発表で、「私たちの活動は意義あるつながりを生み、リスナーが新しい音楽を愛するきっかけづくりに貢献したが、現在の規模のNinaを持続可能なものにする収益戦略を見つけることができなかった」と説明した。同プラットフォームはGreenfield Capitalと5社の共同投資家からベンチャーキャピタル資金を得て運営され、最初の3年余りはプラットフォーム収益がなかった。

今回の買収によって、NinaのSolanaマーケットプレイスやArweaveとの連携機能がSoundCloudへ移管されるわけではない。SoundCloudが取得するのは、音楽ジャーナリズム、アーティスト特集、文化的論評などからなるエディトリアル・アーカイブ、新たな音楽シーンを見つけやすくするための「ジャンルマップ」、そしてNinaのアーティストコミュニティが任意で利用できる簡素化された移行手段である。

移行を選択したアーティストには、収益化機能やオーディエンス拡大ツールを含む「SoundCloud Artist」サブスクリプションが2026年末まで無料で提供される。NinaのアーティストがArweaveへアップロードした音楽は技術的には現在も保存されている。ただし、ユーザーインターフェースなしでアクセスするには、ブロックチェーンのクエリツール、NinaのAnchor IDL、さらに有料のノードエンドポイントに関する開発者レベルの知識が必要だ。公開エンドポイントでは「getProgramAccounts」の呼び出しが制限または無効化されているためである。

■NinaのアーティストがSoundCloudのロイヤリティモデルに注目すべき理由

今回の移行提案は慈善事業ではない。SpotifyやApple Musicの収益構造を避けるためにNinaを選んだアーティストにとって、現在の主流ストリーミング市場で利用できる移行先の中では、構造的に最も合理的な選択肢となり得る。

多くのストリーミングサービスは、プロラタ方式と呼ばれるロイヤリティ分配モデルを採用している。すべてのサブスクリプション収入と広告収入を一つにまとめ、プラットフォーム全体の再生数に占める割合に応じて権利者へ分配する方式だ。このモデルでは、あるアーティストのファンが視聴時間のすべてをそのアーティストの楽曲に費やしても、その利用料の一部はテイラー・スウィフトのような世界的スターのロイヤリティを支えることになる。総再生数に占めるそのアーティストの割合が、巨大な再生数を持つスターと比べて極めて小さいためだ。Billboardも、このプロラタ方式が抱える構造的な問題を取り上げている。

SoundCloudが2021年4月に開始した「Fan-Powered Royalties(ファン主導型ロイヤリティ、FPR)」は異なる仕組みを採用する。リスナー1人当たりの月額利用料または広告収入が、そのリスナーが実際に聴いたアーティストだけに分配される。例えば、有料会員がある月に2組のアーティストだけを聴いた場合、その会員から生じた価値は、SoundCloudの取り分を差し引いたうえで2組の間に分配される。

MIDiA ResearchがSoundCloudのFPRを利用する11万8,000組のアーティストを分析したところ、56%超がプロラタ方式の場合よりも多くの収益を得ていた。特に年間収益が100~1,000ドル(約1万6,400~16万4,000円)および1,000~1万ドル(約16万4,000~164万円)の層で顕著な増加がみられた。これはまさに、Ninaのコミュニティを構成していた中間層の独立系アーティストに該当する。

SoundCloudは2025年11月、外部サービスへの音楽配信に伴う手数料も撤廃した。Spotify、Apple Music、TikTok、YouTube Musicをはじめとする60以上のプラットフォームで得たロイヤリティについて、従来の20%から0%へ引き下げた。アーティストは、取引ごとの少額の処理手数料を除き、提携プラットフォームから支払われた金額の100%を受け取る。

こうした仕組みはNinaにはなかった。Ninaの手数料ゼロモデルが対象としていたのは、4年間で約5万ドルの売上しか生み出せなかった自社マーケットプレイス内での販売に限られていた。SoundCloudの配信手数料ゼロモデルは、主要ストリーミングサービスを含む配信エコシステム全体に及ぶ。その原資は、将来の収益化を期待するVC投資家の資金ではなく、SoundCloudがすでに持つサブスクリプション収入と広告収入の基盤である。

■SoundCloudはアーティスト優先だが、独立性は保たれているのか

買収発表で示された「価値観の一致」という説明は、慎重に読む必要がある。Ninaの共同創業者兼CEOであるマイク・ポーラードは、「Ninaは常に、独立系アーティストを支援し、音楽を前進させるコミュニティを記録することを目的としてきた。SoundCloudがその土台を築いた。SoundCloudがなければNinaも存在しなかった」と述べた。

似たような表現は、Bandcampが2022年にEpic Gamesへ売却され、2023年にSongtradrへ再売却された際にも使われた。その後、SongtradrはBandcampの従業員のおよそ半数を削減した。この経緯は、SoundCloudが同じことを繰り返す証拠ではない。ただし、SoundCloudの大株主が米国のプライベート・エクイティ会社Raine Groupと、シンガポールの政府系投資会社Temasekであることは認識しておくべきだ。

配信手数料0%とFPRは実在する公表済みの取り組みであり、有意な結果を示すデータが得られる程度の期間にわたって運用されている。だが、継続的な財務圧力の下でも維持されるかどうかは別の問題である。Nina Protocolのコミュニティは、新たなプラットフォームへの移行を決める前に、この点を確認する必要がある。

SoundCloudのCEOであるエライア・シートンは、今回の取引を継続性という観点から説明した。Music Weekに対し、「数百万人のアーティストが活動を始めるプラットフォームとして、音楽の次なるムーブメントは、メインストリームに届くよりずっと前にコミュニティから生まれると、私たちは常に信じてきた」と語っている。

この考えは、今回の買収より前に導入された具体的な方針にも表れている。FPR、配信手数料0%、ファンがアーティストを直接支援できるチップ機能「Fan Support」である。一方で、この種の発言が、過去に独立系プラットフォームの統合に先立って語られてきたことも事実だ。

SoundCloudが過去に独立系音楽コミュニティを取得した企業と構造的に異なるのは、買収前からこれらの方針を採用していた点にある。SoundCloudはNinaを取得するためにアーティスト優先の姿勢を取り入れたのではない。2021年にその姿勢を打ち出し、2025年に大きく拡張したうえで、すでに導入済みの方針と価値観を共有するコミュニティを取得した。この順序は重要だ。Ninaの買収は既存戦略の延長であり、買収自体が戦略の出発点ではない。

■Ninaの音楽が実際に保存されている場所

今回の買収には、SoundCloudの発表以上に明確な説明が必要な点がある。Nina Protocolにアップロードされた音楽はSoundCloudのサーバーへ移されるのではなく、Arweaveのpermaweb上に残る。

Arweaveのblockweaveは、分散型のマイナーネットワークにデータを保存する。マイナーには、一度限りのアップロード料金を原資とする基金を通じ、データを保存し続ける経済的なインセンティブが与えられる。Ninaのマイク・ポーラードはRolling Stoneに、「私たちが明日事業を停止しても、音楽はそこに残る」と語っていた。保存の永続性についてはその通りだったが、アクセスのしやすさについてはそうではなかった。

機能するユーザーインターフェースがない状態でArweave上に取り残された音楽へアクセスするには、プログラムIDを把握し、適切なアカウント構造で絞り込んだ「getProgramAccounts」クエリを実行し、Ninaの技術仕様であるAnchor IDLを使ってデータをデシリアライズする必要がある。さらに、公開エンドポイントではgetProgramAccountsの呼び出しが制限または無効化されているため、有料のRPCエンドポイントも必要になる。

データが恒久的に保存されるという点は事実だが、実用的とは言いにくい。Ninaが2025年に新たなオンチェーンプロトコルへ移行した際には、初期に公開された約6,500作品がWebカタログから完全に除外された。これらは現在もSolana上に残っているものの、アクセス可能なインターフェースは提供されていない。

SoundCloudは、エディトリアル・アーカイブをどのような形で保存するのが最善か「検討している」と説明している。また、外部寄稿者による記事をホストまたは再掲載する場合は、事前に本人へ通知するとしている。音楽ファイルそのものはSoundCloudの管理下にはない。

■SoundCloudが得るものとNinaのアーティストが決めるべきこと

SoundCloudが今回の買収で得るものは3つある。第1は、新興アーティストや新たな音楽シーンをSoundCloudのより大規模な発見基盤へ届けるためのエディトリアル・アーカイブだ。Ninaのジャンルマップは、SoundCloudのアルゴリズム中心の発見機能が歴史的に十分に捉えられてこなかったアンダーグラウンドや実験音楽のコミュニティを、深く追跡していた。

第2は、非主流の配信モデルを試す意思をすでに示しているアーティストのコミュニティである。第3は、市場での位置付けという観点ではおそらく最も重要なもので、主流プラットフォームを信頼する価値があるかをWeb3や独立系音楽のコミュニティが検討している時期に、その双方における信頼を獲得できることだ。

Nina Protocolのアーティストが決めなければならないのは、より現実的な問題である。配信手数料ゼロ、ユーザー中心型ロイヤリティ、ファンによる直接支援といった公表済みのアーティスト優先方針を持つプラットフォームへの任意移行が、Ninaが約束しながら最終的に維持できなかった独立性と引き換えにする価値を持つかどうかだ。

構造的に考えると、Ninaの独立性は、将来の規模拡大と収益化を必要とするVC投資を創業時に受けた段階ですでに制約されていた。ブロックチェーンは、個々の音楽ファイルが残り続けることを保証した。しかし、コミュニティ、エディトリアル基盤、発見ツール、ソーシャルグラフの存続までは保証しなかった。これらを維持するには継続的な人の作業、エンジニアリング、資本が必要であり、ブロックチェーンがその費用を賄うことはできなかった。そして、それらこそがSoundCloudが現在、維持しようとしているものだ。

■よくある質問

●SoundCloudがNina Protocolから実際に取得するのは、音楽ファイルですか、それとも別のものですか?

SoundCloudが取得するのは、音楽ジャーナリズム、アーティスト特集、文化的論評などからなるNinaのエディトリアル・アーカイブ、「ジャンルマップ」と呼ばれる発見ツール、そしてNinaのアーティストへSoundCloudへの移行手段を提供する権利です。Ninaの音楽ファイルは、すでにArweaveの分散型permaweb上に恒久保存されています。SoundCloudのサーバーへ移されるものではなく、取引の対象にも含まれていません。SoundCloudが得るのは、コミュニティ内での信頼とキュレーション基盤であり、ブロックチェーン技術ではありません。

●Yung Lean、ML Buch、Surgeonなどのアーティストが参加していたにもかかわらず、Nina Protocolが失敗したのはなぜですか?

Ninaの失敗は文化的なものではなく、経済的なものでした。批評家からの評価や熱心なアーティストコミュニティだけでは、構造的な収益問題を解決できませんでした。NinaはVC資金で運営しながら、最初の4年余りにわたって手数料を徴収せず、約3万7,000件の出品から得た全期間の総売上は約5万ドル(約820万円)にとどまりました。1ドルの手数料を追加したのは、事業終了発表の8カ月未満前に当たる2025年10月です。SolanaとArweaveのブロックチェーン基盤により、手数料ゼロモデルを運用すること自体は可能でしたが、経済的に持続可能なものにはできませんでした。

●SoundCloudのFan-Powered RoyaltiesはSpotifyの支払い方式とどう違い、その違いはNinaのアーティストにとって重要ですか?

Spotifyをはじめとする多くの主要プラットフォームはプロラタ方式を採用しています。すべてのストリーミング収入を一つにまとめ、プラットフォーム全体の再生数に占める各アーティストの割合に応じて分配する仕組みです。この方式では、独立系アーティストだけを聴く熱心なファンの利用料も、再生数で大きな割合を占める大手レーベルのスターを間接的に支えることになります。

SoundCloudが2021年に開始したFan-Powered Royaltiesでは、各リスナーのサブスクリプション収入または広告収入を、そのリスナーが実際に再生したアーティストへ分配します。ある月に2組の独立系アーティストだけを聴いた会員の場合、その会員から生じた価値は、SoundCloudの取り分を差し引いたうえで、その2組に分配されます。MIDiA Researchの分析では、FPRを利用するアーティストの56%超が、プロラタ方式の場合よりも多くの収益を得ていました。Ninaの中間層の独立系アーティストにとって、この構造上の違いは重要です。

●プライベート・エクイティなどが大株主であるSoundCloudの「アーティスト優先」の方針は信頼できますか?

SoundCloudの大株主である米国のプライベート・エクイティ会社Raine Groupと、シンガポールの政府系投資会社Temasekの存在は、アーティストに配慮した方針が永続することを保証するものではありません。

一方、SoundCloudの配信手数料0%とFan-Powered Royaltiesは、実在する公表済みの制度です。FPRは2021年から、配信手数料0%は2025年11月から運用されており、今回の買収より前に導入されています。単に買収に合わせて掲げられた言葉ではありません。

BandcampがEpic Gamesへ売却され、さらにSongtradrへ再売却された経緯に代表されるように、独立系プラットフォームの統合後に方針が変化した事例はあり、検討材料にすべきです。アーティストが具体的に確認できるのは、SoundCloudの現在の方針が自身のニーズに合っているか、また、カタログの移行前にその条件が書面で確認できるかどうかです。

元記事: SoundCloud Acquires Nina Protocol’s Artists and Archive After Blockchain Failure

関連記事

最新記事