SBI Crypto、7月31日にビットコインマイニングプールを閉鎖へ――ハッシュレート2.2%の移行先が握る分散化の行方

2026年7月5日 16:39

日本の金融大手SBIグループのマイニング子会社であるSBI Cryptoは、2026年7月31日をもってパブリックビットコインマイニングプールを恒久的に閉鎖することを発表した。同プールは現在、ビットコインネットワーク全体の約2.2%に相当するハッシュレートを占めており、世界第11位規模のマイニングプールである。対象となるマイナーは日本時間7月31日午前7時の締め切りまでに、新たな移行先を見つける必要がある。

■突如発表されたプール閉鎖とこれまでの経緯

SBI Cryptoは2026年7月2日、顧客向けの通知において、パブリックビットコインマイニングプールを2026年7月31日に恒久閉鎖すると発表した。日本時間7月31日午前7時(協定世界時:UTC 7月30日22時)をもってマイニングシェアの受け付けを停止し、それ以降に送信されたシェアは最終支払いの対象外となる。同社の森田兵部CEOが署名した通知では、最終支払いを最大化するため、締め切り直前までハッシュレートを同プールに提供し続けるようマイナーに促しているが、閉鎖の具体的な理由は明かされていない。

データ分析プラットフォームLuxorの「Hashrate Index」によると、同プールは現在、毎秒約20.9エクサハッシュ(EH/s)を処理しており、これはビットコインネットワーク全体の総ハッシュレートの約2.2%に相当する。世界で約11番目に大きいアクティブなマイニングプールであり、その撤退はビットコインのセキュリティ自体を脅かすものではないものの、マイニング業界上位の競争環境を大きく塗り替える規模である。

公式通知では閉鎖の理由について一切触れられておらず、最終支払いの手続きや、過去に「ビジネスおよび技術的な協議」を行った3つの代替プール(Braiins、Luxor、NeoPool)の紹介といった実務的な案内に終始している。しかし、これまでの経緯から背景を推測することは可能だ。同社は2026年4月、マイニングプール事業の社内ビジネスレビューを実施し、7月末までにサービスを段階的に縮小する見通しであることを顧客に伝えていた。また3月には、ネットワーク状況を理由にライトコイン(LTC)とドージコイン(DOGE)のマージマイニングサービスを一時停止したほか、過去1年間で支払スケジュールや手数料体系を複数回改定していた。

■2025年のハッキング疑惑と戦略的転換

SBIが公に言及していない重大な背景もある。2025年9月24日、ブロックチェーン調査アナリストのZachXBT氏は、セキュリティ企業Cyversと共同で、SBI Cryptoに関連するウォレットアドレスから約2100万ドル(約33億8100万円、1ドル=161円換算)相当の不審な資金流出を検知したと報告した。盗まれた資産にはビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ドージコイン、ビットコインキャッシュが含まれ、5つの即時交換プラットフォームを経由して暗号資産ミキシングサービス「Tornado Cash」に送金されたという。

ZachXBT氏は、この資金移動の行動パターンが、北朝鮮の国家支援ハッカー集団「Lazarus Group(ラザルスグループ)」の手口と酷似していると指摘した。Lazarusは2017年以降、60億ドル以上の暗号資産を盗み出したとされており、これには2025年2月に発生し、FBIが公式にLazarusの犯行と断定したBybitからの15億ドルの窃盗事件(史上最大の暗号資産窃盗被害)も含まれる。SBIグループはこの件について公にコメントしておらず、今回の閉鎖通知でも一切言及していない。同社はハッキング被害の有無を認めても否定もしていないが、2025年9月の重大なセキュリティインシデント疑惑、その後の業務再編、2026年4月の社内レビュー、そして7月の閉鎖発表というタイムラインは事実として記録されている。

SBIグループにとって、今回のプール閉鎖はデジタルアセット分野における資本と野心の再配分という側面も持つ。閉鎖発表の1週間前である2026年6月25日、SBIホールディングスは、日本の大手暗号資産取引所であるビットバンク(bitbank)を467億円で買収し、完全子会社化することで合意したと発表した。この取引はSBIの投資子会社SBICAHを通じて行われ、公正取引委員会による私的独占禁止法上のクリアランスを経て、2026年10月頃に完了する予定である。

これにより、SBIグループ傘下の「SBI VCトレード」と「ビットバンク」が統合され、預かり資産ベースで約1.1兆円、顧客口座数290万口座を超える日本最大の暗号資産取引グループが誕生することになる。投資銀行のArchitect Partnersは、この買収を「収益ではなく、規制された規模を買い取ったもの」と評し、規制強化に伴い単独運営コストが上昇する日本市場において、SBIが圧倒的な地位を築くための布石であると分析している。マイニング事業は資本集約的かつ運営が複雑で、価格や難易度調整による収益の変動が激しく、セキュリティリスクにも晒されやすい。一方で、取引所やカストディ事業は手数料モデルで予測可能性が高く、規制対応による業界再編の恩恵を直接受けられる。SBIグループは、暗号資産バリューチェーンのどこに注力すべきか、明確な経営判断を下したとみられる。

■ハッシュレートの集中と「Stratum V2」による分散化への期待

SBI Cryptoの閉鎖に伴い、同プールに所属していた20.9 EH/sのハッシュレートが消滅するわけではない。ビットコインの難易度調整メカニズム(約2週間ごと、2,016ブロックごとに自動調整)が短期的な変動を吸収し、マイナーのハードウェアは稼働し続け、接続先のアドレスが変わるだけである。しかし、このハッシュレートが今後どこに移動するかは、ビットコインマイニング業界の集中化懸念に直結する。

データサイトmempool.spaceによると、2026年7月2日時点で、Foundry USAが世界のハッシュレートの約24.3%を支配し、AntPoolが約19.4%、F2Poolが約14%を占めている。さらにSpiderPool(約10%)とViaBTC(約8.8%)を合わせると、上位5つのプールだけで全ビットコインブロック生成の4分の3以上を支配している。中堅プールが閉鎖されると、そのハッシュレートはより競争力のある手数料やインフラを提供する大手プールに流れる傾向があり、集中化がさらに進む可能性が高い。

2026年3月23日には、Foundry USAが7ブロック連続(ブロック高941,879から941,885)でマイニングに成功し、AntPoolやViaBTCが生成した有効なブロックが孤立(オーファン)する「チェーン再編成(リオーグ)」が発生した。これは攻撃ではなくネットワークは正常に解決したが、特定のプールが過剰なハッシュレートを持つことで、取引の承認順序や選択に対して不当な影響力を行使できるようになるリスクを浮き彫りにした。

現在のマイニングプロトコル「Stratum V1」では、プール運営者がブロックのテンプレート(どの取引をブロックに含めるか)を作成し、個々のマイナーは内容に関与せず計算(ハッシュ処理)のみを行う。そのため、規制当局から特定の取引アドレスを排除するよう圧力を受けたプール運営者が、マイナーに知らせずに検閲を行うことが技術的に可能となっている。

この構造的課題を解決するために設計されたのが、次世代プロトコル「Stratum V2」である。同プロトコルの「Job Declaration Protocol(ジョブ宣言プロトコル)」を利用すれば、個々のマイナーが自身のフルノードを実行してローカルでブロックテンプレートを作成し、プールに提案できるようになる。これにより、ブロック構築の権限が少数のプール運営者から、数千の個別マイナーへと分散される。

2026年5月には、Foundry USA、AntPool、F2Poolを含む大手7プール(世界シェアの約75%に相当)がStratum V2ワーキンググループへの参加と支持を表明した。しかし、分散化の恩恵を受けるには、個々のマイナーが実際に自身のノードを立ち上げ、ファームウェアを設定して「Job Declaration」を有効にする必要がある。2026年中頃の現時点では、マイナー側の導入は限定的であり、プール側の支持とマイナー側の実導入のギャップが、分散化実現に向けた技術的なボトルネックとなっている。

■影響を受けるマイナーが取るべき対応

SBI Cryptoは移行先として、Braiins Pool(旧Slush Pool、2010年11月設立の世界最古のプール)、Luxor Pool、NeoPoolの3つを挙げている。同社はこれらを推奨しているわけではなく、あくまで過去に協議を行った実績のあるプールとして紹介しており、マイナー自身で個別に評価することを求めている。

選定のポイントとして、Braiins PoolはStratum V2をネイティブサポートしており、手数料モデルもFPPS(2%)やPPLNS(0%)を提供しているため、分散化に貢献したいマイナーにとって有力な選択肢となる。Luxor Poolはデータインフラ「Hashrate Index」を擁し、高度なサービス展開が強みである。NeoPoolは比較的小規模な運営を行っている。

規模の大きいマイナーは、ハッシュレートを複数のプールに分散させることも検討に値する。一部を安定した支払いのために大手プールに送り、残りをStratum V2対応の小規模プールに割り当てることで、自身の支払いリスクを軽減しつつ、ビットコインの分散化に貢献することができる。

協定世界時(UTC)の7月30日22時(日本時間7月31日午前7時)の締め切りは厳格であり、それ以降のシェアはカウントされない。SBI Cryptoは、獲得したシェアを確実に受け取るため、締め切り直前までハッシュレートを提供し続けるよう推奨している。早期に停止すると、未請求のシェアを失うリスクがある。閉鎖後の最終支払スケジュールやAPIアクセス、ウェブポータルの利用期限などの詳細は、今後別途案内される予定である。

■注目ポイントQ&A

●SBI Cryptoのプール閉鎖はビットコインのセキュリティを脅かしますか?

いいえ、脅かしません。SBI Cryptoのマイナーが提供している約20.9 EH/sのハッシュレートは、閉鎖後に他のプールへ再配分されるため、ネットワークから消失するわけではありません。ビットコインの難易度調整メカニズムが自動的に変動を吸収します。懸念されているのはセキュリティの低下ではなく、ハッシュレートが少数の大手プールにさらに集中するという構造的な問題です。

●Stratum V2とは何ですか?なぜ重要なのですか?

Stratum V2は、ブロックに含める取引を決定する権限(ブロックテンプレートの作成権限)を、プールの運営者から個々のマイナーへと戻すために設計された次世代のマイニングプロトコルです。現行のV1ではプール運営者が取引を決定するため、検閲などのリスクが生じます。V2の「Job Declaration Protocol」を利用すれば、マイナー自身がフルノードを運営してブロックを構築できるようになり、分散化が促進されます。2026年5月に大手プールが支持を表明しましたが、マイナー側での実導入はまだ限定的です。

●SBI Cryptoはハッキングされたのですか?それが閉鎖の理由ですか?

2025年9月24日、ブロックチェーン調査アナリストのZachXBT氏らが、SBI Cryptoに関連するアドレスから約2100万ドル相当の不審な資金流出を検知し、北朝鮮のLazarus Groupの手口と酷似していると指摘しました。SBIグループはこの件について公式な確認や否定を行っておらず、閉鎖通知でも言及していません。そのため、ハッキングが閉鎖の直接的な原因であると断定はできませんが、一連のタイムラインにおける重要な背景となっています。

●影響を受けるマイナーはどこにハードウェアを移行すべきですか?

SBI Cryptoは参考としてBraiins Pool、Luxor Pool、NeoPoolの3つを挙げています。ビットコインの分散化を支持したい場合は、Stratum V2をネイティブサポートしているBraiins Poolが有力な選択肢となります。また、大規模なマイナーはハッシュレートを複数のプールに分散させることで、カウンターパーティリスクを軽減し、特定のプールへの権限集中を防ぐことができます。移行の締め切りは日本時間7月31日午前7時(UTC 7月30日22時)です。

元記事: SBI Crypto Mining Pool Closes July 31: 2.2% of Bitcoin Hashrate Must Move Now

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